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第59話 ようこそ、イース北ダンジョンへ

村が襲われたと急報を受けた後、俺たちは全速力で駆けつけた。

しかし、既に村は半壊していた。


到着してすぐ、襲われている村人を発見したので、とっさに助けたが、探索者らしき青年がこちらを見ている。


ん?こいつ、リオンか。

うちのダンジョンの常連で、一番奥まで来てるのがこいつらだ。


俺はチュウタの報告を聞きながら、村の様子をうかがった。


『生存者、50人くらい。死者、多分40人以上。まだ数えてる』


アウル村の人口は多くない。40人死んだなら、かなりの割合だ。


生き残った村人は、広場に集まっていた。

座り込んでいる者、泣いている者、呆然としている者。


ラセツとオトは目撃されているだろうが、俺は村人たちには見られていないはずだ。


ラセツが戻ってきた。

金棒を肩に乗せて、息一つ乱していない。


「片付いた。全部やった」

「死体は」

「一応片付けた」


ゴブリンの死体が残っていれば、うちのダンジョンに結びつけられる。


それでも、村が襲われた事実は消えない。

ゴブリンが現れ、家は壊れ、人は死んだ。

生存者の証言はギルドに届き、教会に届く。

痕跡は十分に残っている。


俺の目的は一つだ。

これ以上の被害を防ぎ、痕跡を最小限にする。


『マスター』


チュウタの声が割り込む。


『襲撃の時に村から逃げた人間いる。村の外に出て、街の方に走った』


逃げた者がいるか。

街に向かっているなら、明日か明後日にはイースに着くだろう。

そこでギルドに駆け込めば、今夜の襲撃は街中に広まる。


助けはした。

全滅は防いだ。

だが全員は救えなかったし、情報の流出も止められなかった。


間に合わなかった。


俺は広場に戻り、空を見上げた。

リングの光源は光量を落としていて、その向こうに弧を描く大地が霞んでいる。


この空の下のどこかに、村を焼いたダンジョンマスターがいる。


助けた。

でも、始末はついていない、憂鬱だが、やらなきゃいけないこともある。


「さて、リオン」


気絶した母を庇うように、こちらを警戒しているリオンに話しかける。

当のリオンは、名前を呼ばれたことで警戒から驚愕へ表情が変わる。


「お前は俺を見た、すまんが解放する訳にはいかない」


厄介なことになった。

とっさとはいえ、姿を見せたのは失敗だったな。


リオンはしっかりとこちらを睨み付け、答える。


「……殺すのか」

「……最悪そうなる。まぁ安心しろ、母親は助けてやる。見てないからな」


少しだけ安心した顔をした。


「お前は誰だ。なぜ俺を知っている」

「後で説明してやる。とりあえず、お前は連れて帰る」


その時、茂みからガサガサと人影が現れる。

オトだ、その手には男が二人引きずられている。


「……茂みから見てた」


その姿にリオンがいち早く反応する。


「二人とも……!」


見てみると、リオンのパーティ、エルノとカークだった。

リオンを追ってきて、隠れて様子をうかがっていたのだろう。

抵抗できないように痛めつけたみたいだが、殺してはいない。


「ちょうどいい、全員連れていく」


冷たい判断だ。

だがこれが現実だった。


口を塞ぐため。

殺すにしてもダンジョン内の方がいい、DPになるからな。


「ラセツ、縛ってくれ」


その辺にあったロープを使い、逃げられないように縛る。

リオンは素直に聞き分け、抵抗しなかった。


ここからダンジョンまで、普通に歩いたら半日。

だが行きは走りで30分ほどでついた。

身体強化の賜物だな。


そうして俺たちはリオン達を抱え、走り出した。


つくづく、厄介なことになった。


「主、俺は多分そこそこ見られてるぞ。オトは見られてないかもしれねぇけど」

「うん、まあそれはいい。隠さなけりゃいけないのは、マスターである俺の存在だけだ」


そう、ラセツたちはバレてもいい。

いや、むしろラセツたちはうちのダンジョン、イース北ダンジョンのモンスターだと宣伝するべきかもしれない。


「野良のゴブリンをイース北ダンジョンのモンスターが退治した。そして村には手を出さずに去った。このストーリーがいい」


俺達の会話を、リオンが黙って聞いている。

まあ、聞かせてるんだが。


ダンジョンが見えてきて、間もなく入り口から入る。

一階層、二階層と駆け抜け、十階層、シルヴァさんの森についた。


こいつらの到達階層は今、五階層だったか。

リオンを見ると、複雑そうな顔をしている。


ここからが正念場だ。

こいつらをどう扱うか、どう着地させるか、レイゼルじゃないが、腕の見せどころだ。


「さて、リオン」


リオンを見つめて言う。


「ようこそ、イース北ダンジョンへ」

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