第46話 三方向同時攻略
ダンジョンを三カ所同時に落とすと決めた。
戦力も整った。
後はどこを攻めるか、だ。
チュウタの偵察報告を聞く。
「今回はチュウタ様々だな」
『僕は前から役に立ってる』
「掲示板の流れが安定しましたからね。以前は接触しただけで相手のレベルアップ条件を満たす可能性がありましたが、今はほぼ全員が戦争UIを解放済みと判断できます」
「つまり、潜り込んでもこっちの存在がバレない」
「はい。チュウタさんならネズミに偽装してますから普通は気付きません」
チュウタに探らせて、三つの攻略対象には既に目星をつけてあった。
それぞれの内部に潜り、構造を持ち帰っている。
「では順番にいきますね。一つ目、南方面。防衛型」
ぽんこがUIに構成を映した。
「ゴーレムがメインのダンジョン。奥に行くほどゴーレムの数と質が上がって、防衛陣形が厚くなる構造です。最下層には門番の巨大ゴーレムが鎮座します」
「ゴーレムか。生物じゃないのか」
「ゴーレムはコストは高いですけど、とにかく固くて、食事も命令もいらないんです。だから管理が楽なんですよ。このマスター、たぶん精密に運用するタイプじゃなくて、硬い壁をどんどん積んでいくタイプですね」
正面から押し返す設計だ。
「二つ目、西方面。ギミック型」
画面が切り替わる。
「罠と誘導の多層構造です。正面から突っ込むと迷わされる設計になってます。直接殺すんじゃなくて、侵入者を消耗させてから仕留めるタイプです」
「厄介だな」
「厄介ですね。力押しが一番通じないタイプです」
「三つ目、東方面。物量型」
「通路が広くて、迎撃モンスターの数が多いです。一体一体は弱いんですけど、奥まで延々と削られ続けます。数と厚みの消耗戦仕様ですね」
「三つとも性格が違うな」
「どこも特徴がありますからね、逆にありがたいですよ。構成が割れてるなら——」
「メタを張れるってわけだ」
適材適所。
構成が分かっているからこそ、最適な隊を最適な場所にぶつけられる。
「防衛型にはラセツ隊。硬い迎撃を力でねじ伏せる。巨大ゴーレムでもラセツの例のヤツなら持たないだろ」
「ラセツさん向きですね。というかラセツさん以外だと厳しいです。ゴーレム相手に消耗戦やると、さすがに被害が大きすぎます」
「ギミック型にはオト隊。ナイトストーカーなら罠が反応しない。戦わずに通れる。イモもオト隊に随行させる」
「イモちゃんですか。経路判断ですか?」
「ああ。あいつなら罠の仕組みも分かるかもしれない。なんならダンジョン構造ごと理解できるんじゃないかな、と。遠征の時もそうだった。」
「……なるほど。ギミック型との相性は最高に良いですね」
「物量型にはアニ隊。数で来るなら数で返す。指揮強化バフで通常ゴブリンが底上げされてるからな、物量対物量なら質で勝てる」
「100対500で圧勝した部隊ですもんね。数の勝負なら負けません」
三部隊、三方向。
「同時にやる理由は一つだ。一つずつ落としていたら、移動だけで何日も取られる。その間に敵が動く」
「各ダンジョンまでの所要日数ですけど、どこもだいたい十日です。往復で二十日。一つずつやったら二カ月以上かかりますね」
「だから三方向同時に出す。十日で全部終わる」
各隊に編成を伝える。
アニは頷くだけだった。
ラセツは「任せろ」の一言。
オトは頷くだけ。
イモは「はーい」と軽い返事をして、すぐに何か考え始めている。
出発の準備は半日で整った。
三部隊がダンジョンを出ていく。
アニ隊が最も人数が多く、列が長い。
ラセツ隊は少数精鋭で足が速い。
オト隊は——出発した気配すらほとんどなかった。
十日間。
チュウタからの中継で、各部隊の位置を追う。
点が三方向に散り、それぞれの目標に向かって地図上の距離が縮まっていく。
部隊ごとに進行速度が違う。
ラセツ隊は少人数で速い。
アニ隊は大所帯で遅い。
オト隊はイモ隊を連れているので中間くらいだ。
九日目の夜、ラセツ隊から報告が入った。
『着いた、一休みしてからカチ込む。だって』
続いてオト隊。
『……到着。だって』
そして十日目の朝、アニ隊。
「全部隊到着です。偶然ですが、三部隊とも目標前で待機に入りました」
「タイミングが揃ったな」
「ラセツさんがのんびりしてたおかげですね。チュウタさんの報告だと一眠りしたら寝過ごしたそうです」
全部隊が目標のダンジョン前で待機している。
せっかくだから突入タイミングも合わせるか。
あとは俺の号令一つで、三方面同時に突入することになった。
攻撃命令を出そうとした、その瞬間。
UIに見慣れない通知が光り、電子音が鳴り響いた。
【DMコール】
ピピピ……ピピピ……
【着信:レイゼル】




