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第28話 コア位置表示

画面が、一斉に光った。


【DP獲得:+200,000】


ぽんこが息を呑む。


「……二十万」


続けて、別の通知。

【管理権限レベルアップ:4】

【戦争支援パック1:開放】

【次回管理権限解放条件:敵コア破壊×2】


俺は、しばらく言葉を失っていた。

胸の中に何かが広がり、緊張が抜けていく。


「……勝ったな」


ぽんこが、ゆっくり頷いた。


「はい。初勝利です」


勝てる確信はなかった。

こちらが有利だろうという想像だけで踏み込んだ。

賭けだった。

――それでも、勝った。


遅れてチュウタから報告が入る。

世界が、少しだけ広がる予感がした。


しばらく俺は椅子から動けなかった。


勝った。

数字として、通知として、はっきりと。


それでも、胸の奥に残るのは達成感よりも、安堵だった。


「……マスター?」


ぽんこの声で、ようやく現実に戻る。


「戦争支援パック1、解放されました。内容、ざっくり説明しますね」

「ああ、頼む」


ぽんこが、いつもの軽い調子でウィンドウを開く。


「まず取得可能なスキルと、生成可能なモンスターの種類が増えました。これは今後も管理権限レベルが上がる度に増えていくはずです」

「よし、後で確認する」


俺は短く息を吐いた。

戦争が一段階、先へ進んだ証拠だ。


「で――」


ぽんこが、少しだけ声色を変えた。


「次が、本命です」


ぽんこが地図UIを切り替えた。


「地図拡張機能【コア位置表示】。地図上に、大陸中のダンジョンコアの位置が点で表示されます」


画面が切り替わる。

そして、息を呑んだ。


地図の上に、いくつもの小さな光点が灯る。

山の奥。

森の向こう。

谷の底。


ダンジョンの形は分からない。

入口も、大きさも、構造も不明。


それでも、コアだけはそこにあると分かる。


「……多いな」

「はい。これが大陸に存在するダンジョンの数です」


今まで、俺たちは闇の中で手探りで進んでいた。


村の噂。

探索者の雑談。

チュウタの足。


それが、一気に可視化された。


横長の長方形の大陸、その上に百あまりの点が、ほぼ等間隔でちりばめられている。


俺は、指で画面をなぞる。

ひとつ。

またひとつ。

自分のダンジョンから、近い点。

遠い点。


その配置を眺めているうちに、感覚がつかめてくる。


「……なるほど」


声が、自然と漏れた。


「コア同士の距離が、だいたい読める」

「はい」

「この辺が、徒歩で三日。こっちは一週間」


今まで、距離は曖昧だった。

遠い、近い、くらいの雑な把握。

だが、点が並んだことで、相対関係が見える。


「一番近いあたりは……」


方向は違うが、同じくらいの距離にいくつかダンジョンがある。

今回の遠征とほぼ同じ距離。


「往復十日ってところか」


ぽんこが頷く。


「このダンジョンたちが、当面の狙いになるかと」


遠すぎない。

近すぎない。


攻めるにも守るにも、ちょうどいい距離。


「……ん?」


俺は、地図の一角に目を留めた。


おかしい。

少し離れた点の一つ、北側の点に揺れがある。

光点が、数十メートルか、数百メートルか、数秒ごとに位置がぶれている。


「ぽんこ、これ」

「……あ、はい。確認します」


一瞬の沈黙。


「誤差ですね。位置情報にノイズが入ってます」

「誤差、ね」


俺は、目を細めた。

似たようなケースを最近見た。


「……シャドウの時と同じだ」


あの時。

存在反応を偽装し、最後に逃げたあいつ。

ぽんこが、納得した顔で頷く。


「はい。系統としては同じものですね」

「ってことは……」


「シャドウのマスターのダンジョン、ですかね」


奴の位置がわかった。

ぶれるとはいえ、誤差の範囲だ。

攻めようと思えば、攻められる。


「……放置だな」


今は、まだ早い。

あいつは警戒している。

しかも、こちらの存在を認識している。

今踏み込めば、確実に被害が出る。


「今の段階なら、まだ気づいてないダンジョンマスターがいるはずだ」


勝ちやすい相手から、取る。

冷たい判断だが、戦争だ。

俺は視線を戻す。


「チュウタ」

『なに?』

「この中で、一番近いコア。入口、探れるか」


一瞬の間。


『……もう、だいたい分かってる』

「は?」


ぽんこが目を見開く。


「だいたい、ですか?」

『コアの位置と噂を合わせる。人の動きもある。入口、だいたいわかった』


俺は、ゆっくり息を吐いた。


「……お前、本当に便利だな」

『えへん』


地図の上で、次の点が、静かに光っている。

入口はチュウタが早々に見つけるだろう。


「ならばやることは一つだ」

「戦争準備!ですね!」


ぽんこがお団子を回しながら嬉しそうに言う。


「ああ、だがその前に……」

「はっ!宴ですか!?」

「んなわけないだろうが、被害確認、新しいメニューの確認、戦争状況の確認、やることは腐るほどあるぞ」

「えー、ゴブリンさんたち頑張ったんだから宴やりましょうよー」


わかりやすく力の抜けたぽんこを無視して、確認を進める。


「被害状況。アニ達三兄妹は大丈夫として、ゴブリンが1800体死亡、残り200。よく持ってくれたな」

『僕の分体も50くらいやられた』


「次にスキルとモンスターは……」


UIを開く。

まずは取得可能スキル。


魔法に、攻撃系に、身体強化。

見たことのないスキルが増えている。


便利系のスキルは、ダンジョン内転移。

便利そうだが、この規模ならまだいらないだろう。

他には……


「お、感覚共有。80万DP。モンスターと感覚を共有するスキルか。これがあればチュウタに共有してもらって街に行けるな」

「マスターはちょっとは自分で動いた方がいいですよ」


ぽんこの機嫌はまだ治らない。

宴の恨みは深い。


「ま、80万DPだからな、まだまだ先の話だ」


さて、モンスターは、と。


「んーゴブリンも上位種が解放されてるな、繁殖ゴブリンも減ったし、生成しちゃってもいいかもな」


ホブゴブリンに、ゴブリンメイジ。


「あとは森のモンスターが多いな、この辺も少しずつ入れてくか」

「モンスターはマスターの能力や、ダンジョンの環境で生成可能モンスターが変わりますからね。うちは森とゴブリン特化ですから、そっち方面が増えやすいです。」


なるほど、と納得しかけたところでぽんこが付け加える。


「あ、あと弱者キラー特性もついてますね。弱いものいじめが得意なモンスターが増えます」

「それはいらん」


「あとあと、特化型で扱いが難しいモンスターさんも適性ついてます。シルヴァさんのおかげですね。」

「ふむ、確かにそれは好きだな」


言いながら今度は戦争UIを開く。


【同期管理者数:512】

【残存管理者数:478】

【あなたの大陸:第三大陸】

【第三大陸残存管理者数:97】


残存管理者数478。

つまり、34人が死んだ。


死者は二日前にはじめて出た、その後は続々と増えている。

この数字はさっきまで33人だった。

これを1増やしたのは、俺だ。


誇らしいような恐ろしいような、なんとも言えない気持ちになる。


「早い者勝ち。みんな考えることは同じだったようだな」

「今は先駆者34人の中に入っていることを喜びましょう」

ランキングを見る。


【総合ランキング】

【1位:キャステル 総支配指数3512 第1大陸】

・・・

【42位:ユート 総支配指数621 第3大陸】


とうとうランキングに名前が載った。

そういえば俺はこの世界では山田悠斗ではなく、ユートらしい。


「しかし。先をいかれたらもう追いつけない、と思っていたが、追われる側になると、全然安心できないな」

「その通りです!なんせ管理権限レベルが下の相手にランキングで負けてますからね!」


初期DPが20万DP、俺は全てぽんこにつぎ込んだ。

これをダンジョンに使っていれば相当先に行っていただろう。


他のダンジョンとは初期からそれだけの差があったことになる。

ダンジョンが出来てから半年以上、その差はまだ埋められない。

しかし……


「ま、今回20万DPゲットしたからな、これで一気に強化してやる」

「マスター、立派になって……はじめて会った時は10DPしか持ってなかったのに」


ヨヨヨとぽんこが泣き真似をする。


「ただその前に、準備だな」

「はい!次は何でしょう!罠ですか?ご自身の強化ですか?」


「宴の準備。やるんだろ」

「……!やりましょうっ!ゴブリンさんたち喜びますよー!」


そして、ゴブリンたちが帰ってくるまで、五日間。

俺たちは宴の準備に明け暮れた。

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