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第128話 支配域

蟻の巣から北東へ、地下百メートルの深さで線を伸ばしていく。

深さに意味はない、深ければ見つかりづらいだろう、という程度のものだ。


10キロで3300DP。

やはり安い。


地図の上を、青い線が音もなく延びていく。

もう10キロ、もう10キロと支配域化していって、四回目で表示が変わった。


【指定範囲は既に支配域として登録されています】


「……ん?」

「競合ですね!どなたかの支配域とぶつかりました!」

「誰のだ」

「分かりません!他人の支配域は見えませんから、ぶつかったことしか分かりません!」


そういう仕様らしい。

自分の支配域は見えるが、他人のものは地図にも出ない。

伸ばして、ぶつかって、初めてそこに何かがあるとわかる。


北へ50メートルずらして、もう一度実行する。

通った。


「通りましたね!」

「通ったな」


そのまま10キロ伸びて、地図の上で青い線が一本、北東に向かって伸びている。

俺はしばらくその線を眺めていた。


「……なあ、ぽんこ」

「はい!」

「ここ、どこだ」

「蟻の巣ダンジョンから北東へ四十キロです!」

「東のオルレアスは」

「もっとずっと東です!ここは大陸の真ん中より、まだ西寄りですね!」


だろうな。

東の入口ですらないし、地図を見ても周りにコアもない。

そんな場所の、地下百メートルに、誰かの支配域がある。


「コアがないのに支配域があるってことは、これも道か?」


ぽんこのお団子が、一度止まった。


「しかし、道だとすると適当に指定した俺の道が、丁度ぶつかる確率ってどれくらいだ」


「……低いです」

「低いよな」

「低いです!というか、普通は当たりません!」


当たらない。

深さも自由、方角も自由、その広い地下空間で、細い道と細い道がぶつかる。


一回で当たった。

しかもこっちは、たかだか四十キロ進んだだけだ。


「……確かめるか」

「どうやってです?」

「ぶつけてみる」


さっき当たった場所へ戻って、そこから南北に並べて打っていくことにした。

百メートル間隔で、十本。

打って、結果を記録する。

一本目、通った。

二本目、通った。

三本目、当たった。

四本目、通った。

五本目、通った。

六本目、通った。

七本目、当たった。


「……ぽんこ、当たったのは三本目と七本目だ」

「はい、記録しました!」

「間は通ってる」

「通ってますね!」


ダンジョンではない。

広範囲に支配していたら、十本打って十本とも当たる。

そうならないということは、向こうの支配域も、俺と同じように細い。

今度は縦だ。

三本目が当たった同じ座標で、深さを変えて打っていく。

地下五十メートル、通った。

地下百メートル、当たる。

地下百五十メートル、通った。

地下二百メートル、通った。


箱型に取っているなら、上も下も塞がっているはずだ。

だがぶつかるのは、この高さだけ。


「線だ。それも、うちのとほとんど同じ深さで、同じような細さの線が、こんな何もない場所を走ってる」


言いながら、地図上の記録を見た。

当たりが二つ、その間に空白が三つ、また当たり。

規則があるようにも、ないようにも見える。

だが一つだけ確かなのは、こんなものが偶然そこにあるわけがないということだ。


「ぽんこ。他人の支配域は見えないでいいな」

「見えません!」


ということは、支配域の形を確かめるには……


「周りを埋め尽くすしかないか」

「支配域でですか?」

「そうだ。ぶつかったところを起点に、敵の支配域に沿ってこちらの支配域を展開する」


そうして、検証作業に入る。

ぶつかったところから、細かく上下左右を支配域化していくと、やはりそれは道だった。


幅9メートル、高さ12メートル。

通路状の支配域が分岐や合流を繰り返し、南北方向に走っている。


俺が最近気付いた「道」の活用を、既に進めている奴がいる。


「東か」

「分かりません!ここは西寄りですから、東から伸ばしてきたとしても、随分と遠いです!」


俺は地図の表示を切り替えた。

コア位置表示。

大陸中のダンジョンコアが、点として浮かび上がる。

この一帯には、何もない。


だからこれだけでは、誰のものかは分からない。

ただ、一つだけはっきりしていることがある。

支配域は、必ず誰かのものだ。

コアのない支配域というものは存在しない。


つまりこの道の先には、どこかに必ずコアがあり、死んでなければ、マスターもいる。


地図を縮小すると、大陸全体が表示された。


大陸の東に重なった点。

これがオルレアスの勢力。


俺のダンジョンに重なった点。

これがうちの勢力。


残りが、一。


「……こいつか」


掲示板で言われていた。

東でも北西でもない最後の一人。


三十五まで減って、東と俺で三十四を占めて、残った一人が何もせずに生きているなら、よほど上手く隠れているんだろうと思っていた。


「……隠れてたんじゃないな」

「はい?」

「こっちが見えてなかっただけだ」


地図を開いて、コアを見て、誰がどこにいるか把握した気になっていた。

しかし、コアの近くにダンジョンを構える必要は特にない。

道を伸ばして、道の先にダンジョンを作ったっていいはずだ。


「ぽんこ、支配域は破壊できるか」

「できません!」

「乗っ取ることは?」

「できません!」


「やれることはないってことだな」

「はい!ただし相手のコアを破壊すれば支配域は解放されます」

「なるほど」


確かにそうだ。


「とりあえず、これだけ近くに敵の支配域が通っているのは看過できないな。調査が必要だ」

「調査ですか?」

「ああ。直接侵入して、様子を探る。アニを呼べ」

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