第120話 【それでは皆様、よい統合戦争を】
【第三リージョンにて単一個体による占有率50%を到達した管理者が確定】
【迷宮管理者:リシウス】
【管理権限レベル7へ到達】
【第三リージョンはフェーズ2へ移行します】
【それでは皆様、よい統合戦争を】
やられた。
そう思った直後、最後の一文が目に入った。
皆様、よい統合戦争を。
なんだこれ。
だが、今はそれどころじゃない。
リシウス。
いや、オルレアス。
「ぽんこ、残り人数は?」
「はい。第三リージョン、すなわち第三大陸の残存管理者数は三十五。半分だと、十五といちにいさん、十八です!」
十八。
俺の従属が十五、自分を合わせて十六。
三十五引く十八で、十七?
「……詰みだ」
お互いの占有コアを除けば、残りは一つ。
しかしそれをこちらが取っても、十七。
半分には届かない。
「オルレアスの占有コアを破壊、もしくは奪取すれば到達可能だよ。理論的にはね」
「現実的か?」
「私には手段は見えないね。君みたいに発想豊かじゃない。君には何かないのかい?」
そんな、都合よく思いつくか。
大体、レベル7で解放される機能もわからないんだ。
「……ぽんこ。レベル7の恩恵って知ってるか?」
「……知ってますよ」
「教えてくれたり……」
「……できないです」
だよな。
今回ばかりは、ぽんこもつらそうだ。
ぽんこはシステム上の制限で、俺が知らないことは答えられない。
「ぽんこ。主観でいい。データも情報もいらない」
「はい?」
「俺は勝てると思うか?」
「勝てます!マスターはレベル7のリシウスを下し、この大陸の覇者になります!ぽんこ主観です!」
来た。
来た来た来た来た。
「マジか……!」
「はい!」
「……何を言ってるんだい?」
レイゼルが心配そうに尋ねる。
おかしくなったと思っているんだろう。
「レイゼル。落ち着いて聞け」
「落ち着いて欲しいのはこっちさ」
「ぽんこはレベル7の恩恵を知っている。その上で俺が勝つと言っている。さすがのぽんこだって0%かどうかくらいわかる……はずだ」
「失礼な!マスターが勝つ確率はひいき目込みで5%くらいです!」
思ったより低い。
まぁしかし大切なのは0%じゃないことだ。
「つまり勝つ可能性自体はある。即詰むような能力じゃないか、何か別ルートがあるってことだ」
興奮する俺とは裏腹に、冷めた目をしたレイゼル。
「数%だろう?」
「そうだ、数%だ」
「数%あれば、十分だと……?」
レイゼルの目に希望が戻る。
俺のことを信じはじめたのだろう。
その目を見つめ、たっぷり溜めてから俺は言う。
「いや、詰みじゃないならもう少し足掻こうかと。ヤバかったら下る」
俺の言葉に、視界の端に映っていたゲルダの表情が変わる。
期待の表情から、落胆、今は怒りの表情だ。
鉄面皮だと思っていたが、実は感情豊かなタイプだったらしい。
しかし……
「ふはっ、はははははっ。さすが君だ。そうだね、ヤバくなったら下ろう。大丈夫、史実の通りなら彼は史上稀に見る善王で、賢王だ。我々の才能を『正しく』使ってくれるさ」
レイゼルは笑っていた。
なんだこいつ、壊れたか。
「マスターは小物ムーブをさせたら天下一品です!」
「おい」
「いやいや、ぽんこはそんなマスターが好きですよ。……あ、いや、人間的にですからね?勘違いしてぽんこに懸想すると後悔しますよ?ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんです」
「するか」
「私もそんな君が好きだよ、ユート」
やっぱり壊れてやがる。
「まあ、冗談はさておき」
レイゼルの顔が真面目に戻る。
口許のにやつきが隠せていないのは、気にしないことにしよう。
「取り急ぎ必要なのは、情報収集だね」
「そうだな。レベル7で解放された能力がわからない中で、闇雲に動くのは危ない」
そうして、これからの動きを相談しようと話し始めたタイミングで、ウィンドウが表示された。
【第三リージョン第二フェーズにおいて、総合戦力評価値100%以上の差を確認】
【弱者救済プログラムを開始します】
【本プログラムは、戦争継続性維持のため、弱者の願望を実現します】
【第三リージョン第二位残存管理者をスキャンします…………エラー】
【対象管理者の内面解析に失敗しました】
【会話ログより願望を構築します】
【願望:管理権限レベル7解放能力の情報開示】
【願望を実行します】
【管理権限レベル7解放能力:従属コアの完全支配】
【詳細は補助管理AIにお尋ねください】




