第119話 伝説の統一王「オルレアス」
「……オルレアス。伝説の……統一王の名前さ」
「統一王……?有名なのか?」
「統一王を知らないのですか?」
ゲルダが驚いたように言う。
どうやら知っていて当たり前の人物のようだ。
「この辺の生まれじゃないんだよ。で、どういう人物だ?」
「そうだね……君は知らないか。統一王、その名の通り、第一大陸に大国を作り上げ、世界を統一した王さ」
そうして、レイゼルの語りが始まった。
「数百年前だ。当時の第一大陸は、小国が数十に分かれて争っていた。その一つの、小さな国の王子だった。順番でいえば三番目。普通なら王になれない位置だね。しかし、王になった」
レイゼルは机に紙を置いて、椅子に座り直した。
「即位して数年で、周囲の三国を落とした。ここまではよくある話だ。強い王が出て、近隣を飲み込む。そういう時代だからね。問題はその先だ。落とした国の王を、殺さなかった」
「生かしたのか」
「生かして、そのまま治めさせた。税を納めて、兵を出して、決めごとには従う。それ以外は好きにしていい」
俺は口を開きかけて、閉じた。
「……なんか、聞き覚えのある話だな」
「そうだね」
レイゼルは笑わなかった。
「十年で第一大陸を統一した。戦って落としたのは半分くらいで、あとは向こうから下ってきたそうだ。あの王の下に入ったほうが得だ、とね」
「だから統一王か」
終わったと思い、感想を言う。
しかし、話には続きがあった。
「いや、すごいのはここからさ。当時は人間は第一大陸にしか住んでいなかったんだ。更に昔は住んでいたそうだが、モンスターに追いやられてね。第一大陸を統一した統一王は、モンスターから各大陸を奪還していった。各国から軍を募り、切り取った領地を活躍した国に任せる。それを繰り返して、とうとう人類は五大陸全てに国を持つに至った」
レイゼルがそこで一拍置いた。
「全大陸を人類のもとに統一した、それが統一王だ」
「世界統一って、そういう意味か」
「そういう意味だよ」
ゲルダが横から補足した。
「知識階級であれば、偉人として習います。庶民の間ではおとぎ話ですね」
「おとぎ話?」
「統一王伝説です。その地のモンスターを制し、ご先祖様に国を授けてくれた正義の王様。英雄譚ですよ」
なるほど。
そいつはすごい。
しかし、わからないことがある。
「レイゼル。で、なんでそいつの名前が出てきたんだ?」
「リシウスは……オルレアスだ」
「……ん?」
「リシウスってのはオルレアスの幼名なんだよ。王に即位した時に付けた名前がオルレアス、王名だ」
「それは……知りませんでした」
ゲルダが言う。
「まあ必要ないからね。知っているのは貴族教育を受けた者くらいだろう」
「ちょっと待て、リシウスがオルレアスってことは、東方のダンジョンマスターが、その統一王ってことか?」
「そう言っている」
「俺の敵が?伝説の王?」
「そうだと言っている」
「くそっ」
伝説の王。
偉そうでムカつく奴だと思っていたが、そりゃ偉そうなはずだ。
なにせ伝説の王だ、それも一度世界を統一した。
この戦争だって、もう一度同じことをするだけだ。
人間とダンジョンマスター、ルールは違うがやってることは変わらない。
「嫌になるな」
「ああ。正直、東がオルレアスだと知っていたら全力でそちらにすり寄った。勝ち馬に乗れたと喜びすらしただろう」
レイゼルが吐き捨てるように言う。
「……忌憚なき意見を言わせてもらえば、私もです」
ゲルダも同意する。
「どうする?ユート。別に今からでも遅くはないよ。幸いなことに統一王は慈悲深く、臣下の使い方も心得ている。今から『御前に馳せ参じ』れば、きっと大陸の一つくらいもらえるよ」
こいつ、わかってて聞きやがった。
ゲルダの方を見る。
その顔には少しの期待と、大きな諦めが浮かんでいる。
ゲルダもわかっているようだ。
「嫌だ」
「だろうね」
「わかってましたが……なぜですか?」
「気に食わない」
そう言った瞬間。
俺とレイゼルと、ゲルダ、ついでにぽんこの前にそれぞれのウィンドウが飛び出した。
たまにある、システムからの問答無用の通知。
嫌な予感がする。
【第三リージョンにて単一個体による占有率50%を到達した管理者が確定】
【迷宮管理者:リシウス】
【管理権限レベル7へ到達】
【第三リージョンはフェーズ2へ移行します】
【それでは皆様、よい統合戦争を】




