↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/141

第116話 無血開城


グランツは床に押さえつけられたまま、こちらを見ていた。


「ユート様。まだ話し合いの余地は」

「ないな」

「ございます。私はまだ何も失っておりません」

「その状態でよく言えるな」


そうは言ったものの、こいつは危険だ。

今までも拘束を振りほどこうと、抵抗していた。


汎用戦機が総掛かりで抑えつけてはいるが、そろそろ限界だろう。

なにせ突破エディションの突撃用スラスターすら使って、文字通り床へ押さえつけているのだ。


生かす意味はある。

しかし、こいつを生け捕りにするには戦力が足りなすぎる。


「やれ」


汎用戦機の腕が動いた。

音は短かった。




アニが肩を回しながら立ち上がる。

ばつが悪そうな顔で話し始める。


「すまなかった。言い訳のしようもない。俺の失態だ」

「何がだ」

「取り押さえられた」

「油断したな」

「確かに油断だ。指揮官だからといって、俺自身の力が足りなくていい訳がない。以後、気をつける」


相変わらずクソ真面目なヤツだ。

明日からは自身の強化に必死になるだろう。


その後、グランツの配下と契約を結び直す。

今のままだとこいつらが裏切るのは止められないからだ。


「レイゼル。こいつのダンジョンはどこだ」

「南へ三日だね」

「歩くのか」

「歩くよ。DPもないしね」


三日。

三日かけて、南へ移動した。


ここまでは、グランツの配下が案内した。

会議室にいた連中が、そのまま先を歩いている。


「あんたら、全員名前があるのか」

「ある」


答えたのは、会議室で全員を仕切っていた男。


「あんたの名前は?」

「バントー」


「バントーか……ん?番頭?」

「ああ。グランツ様……いやグランツか。グランツはそれぞれの役職を名前とした。合理的な方だったからな」


その言葉に呼応するように、周りから次々と声が上がる。


「私はメード」

「私はカイケー」

「俺はヨージンボー」


「そいつは、ひでぇな……」

「マスター?マスターも大概ですよ?アニ、オト、イモはともかくシュリはやってることほとんど同じですからね?」


ぽんこが何か言っているが、俺の命名には愛があるからいいのだ。

なんだったら、普通の名前より考えるの大変なんだぞ。


「それで、あんたら全員が幹部ってことでいいんだよな」

「ああ。だが、俺たちだけではない」


バントーは前を向いたまま言った。


「ダンジョンには、まだ百いる」


百体。

全部が幹部級。


会議室での攻防を思い出した。

あれで、三分の一。


「……レイゼル」

「うん」

「これ、まともに攻めてたら」

「相当苦労したね」


即答された。


「半年って言ったのは、そういう意味だよ。半年かけて、うちの兵を何千か捨てて、それでようやく」

「言えよ、そういうことは」

「言ったら君、行かなかっただろう」


グランツのダンジョンは、丘の中にあった。


入口は地面に開いた洞窟で、周りに柵があり、柵の横には小屋まで建っていた。

柵の外に人間が何人か立っていた。

探索者だ。


「……営業中か」

「そうだね」

「今日は休みにしとけよ」

「……した方がよければするが」


俺の言葉にバントーが反応する。


「いや、しなくていい。冗談だ」


しばらく待つと、探索者たちは荷を担ぎ直して帰っていった。


「この小屋、どうしたんだ」

「グランツが付けた。このダンジョンはギルドに見せかけて我々が整備している」

「なんでわざわざ」

「探索者を呼び込むためだ」


「ヨーキキ、中の連中に経緯を伝えてこい」


バントーがそういうと、子供がダンジョンの中に入っていく。

しばらくして、戻ってくるとバントーから許可が出た。


洞窟の入口に入る。

バントーの案内で進むと、裏道らしきルートに出た。


内側にいたのは、人間の姿をしたものが十数体と、そうでないものが数え切れないほどだった。

通路の奥まで詰まっている。


一体も、武器を持っていなかった。


「聞いている。通れ」


俺たちは中へ入った。


五十階層あるという話だった。


「五十か」

「そうだ」

「うちよりでかい」

「知っている」


グランツのダンジョンはイース北と同じBランク。

Eから始まり、順調に成長しBまで上がったらしい。


歩いてみて、面白くないダンジョンだと思った。


通路が広い。

分岐が適度にある。

行き止まりは少ない。

モンスターも偏っていない。

獣も虫も人型もアンデッドも、まんべんなく出る。

尖ったところが、一つもなかった。


「特化してねぇんだな」


アニが言う。


「うちが特化しすぎなんだよ」

「そんなことはねぇよ。今まで攻めて来たダンジョンだって特色があった。言い換えたら強みだな」

「強みがない、ってことか」

「ように見えるが、それでも強いんだろうな」


レイゼルが寄ってきて、口を挟む。


「強みがある、ってことは弱みもあるってことだからね。本当はこういう形の方が強いはずだよ」


確かに、俺たちは大抵その弱みをついて勝ってきた。


「しかし、バランス型にしたら全体が弱くなるだろ。攻め特化が来たら押し切られる」

「そこがグランツの手腕だね。リソースの少ない序盤を停戦協定で乗り切った。ここまで来たら特化型でも簡単には押し切れない、自力の差でどうとでもなるさ」


十階層あたりで、通路の脇に箱が置いてあるのを見つけた。


「なんだこれ」

「宝箱だ」


バントーが答えた。


「中身は」

「入っている」

「……何が」

「宝が」


俺は箱を開けた。

大きな魔石が入っている、俺が今まで見た中で一番大きい。

幹部級のモンスターから出る大きさだろう。


「本物か?」

「本物だ。偽物を入れれば二度と来ない」


俺は箱を閉じて、しばらく考えた。


「……ぽんこ」

「はい!」

「ダンジョンに宝箱ってのは、あるものなのか」

「普通はありません!」

「だよな」


また黙ってた案件かと思ったら、普通はないらしい。

そうすると、これはどういうことだ?


「おい、バントー。これ、ギルドとか探索者は大丈夫なのか?」

「説明する。まず、魔石は魔力溜まりに自然発生する、このダンジョンはその魔力溜まりが多いダンジョンだ。そして宝箱は魔力溜まりの位置にギルドが置いたものだ。そうすると宝箱の中に魔石が自然発生し、宝となる」


「……ぽんこ?」

「し、知りません!確かに魔石は高濃度エーテル場では自然発生しますが、ダンジョン内でそんな機能、聞いたことが……!」


ぽんこに疑惑の目を向けるが、ぽんこは本当に知らないようだ。


「と、いうことになっている」


ん?


「我々が流した嘘だ。実際は魔石を買ってきて入れてるだけだ」

「金か」

「金だ、小さな魔石を売って得た金で、大きな魔石を買って宝箱に入れる。探索者は魔石を得るためにダンジョンに潜ってDPになる」


その言葉にレイゼルが反応する。


「いやぁすごいね。宝箱のことは知っていたが、特殊なダンジョン設備を解放したのだとばかり。確かに、買ってくれば済む話だ」

「……うちもやるか」

「自然に出来ればね。やっぱりこれはグランツの手腕だと思うよ」


確かにそうだ。

明日から急に宝箱が生まれては怪しいなんてもんじゃない。

街やギルドに自然に認めさせる情報網があるからこそ、できることだ。


「商人のダンジョン、って感じだな」


よくできたダンジョンだ。

探索者を呼び込む手がいくつもある。

そして、探索者がいると……

「このダンジョン、攻められなくないか?」

「そうだね。探索者が多すぎる」


探索者が多いということは目撃者が多いということだ。

大軍で攻めたら大騒ぎになる。

大騒ぎになったら、勇者が来る。


「ちょっとこれは想定外だ。ここを攻めるのは難儀するよ」


あの場で倒せたのは幸運だったのかもしれない。


コア部屋は、五十階層の奥にあった。


台座の上に、黒い球体が乗っている。

俺は台座からコアを外した。


【他ダンジョンコア:保持】

【従属コア保護管理制限を適用します】

【DP徴収率設定:0〜80%】


「八つ目だね」

「まだある」


従属コアは、隣に七つ並べて置いてあった。

一つずつ触れていく。

触れるたびに、同じ表示が出た。


八つ。


これで、俺の従属コアは十五個になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。