↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/139

第101話 南の噂

グランツの反撃を警戒し始めてから、数日が経った。

動きはまだない。

その代わり、情報だけが増えていく。


「マスター、レイゼルさんから資料が届いています。グランツの調査だそうです」


資料は、南から落ちてきた三人のマスターからの聞き取りを、レイゼルがまとめたものだった。


グランツ。

南の調停者。

生前は商人だったらしい。

それも、かなり大きな。

一代で大商会を作り上げた、成り上がりの大商人。


『最初は、本当に助けてくれたんです。隣とモメた時、みんなで助けてくれて。あの時は、いい人だと思いました』


『手口は商人のそれですよ。直接お願いはしない、情報を流して相手を誘導する。「あそこのダンジョンが怪しい動きをしている」とかね』


『気に入らねえのは、不戦協定とか言っておきながら、破った奴を全員で袋叩きにするところだ。その癖、倒した相手はグランツが持っていきやがる。奴の従属は全員このパターンだ』


俺は資料を置いた。


「まぁ全部奴の仕業なんだろうな」

「マッチポンプというやつですね」

「争いを止める顔役が、争いの供給元でもあると」

「証拠はありませんが、証言の状況からは濃厚です」


トトの借金を思い出す。

防衛のためのDPの融通。

その防衛が必要になる襲撃を、誰が呼び込んだのか。

グランツのやり口が見えてきた。


その晩、レイゼルから報告が入った。


『南の攻略に、天井が見えた』

「天井?」

『数えてみるといい。君の現在の占有が七。グランツの手持ちが四、残りの南のマスターが三。あと一つ取られたら、過半数だ。もう奴に貸しで縛る余裕はない、すぐに従属化するさ』

「……残りの三人は既にグランツの従属か」

『そう。交渉で取れる分は、ほぼ取り切った。ここから先のコアはもうテーブルには乗っていない』


「取るには、グランツを倒すしかない」


『そう。次は君の番だ』


レイゼルの報告を切る。

次は、俺の番。

つまり、戦争だ。


「マスター!敵を知り己を知れば百戦危うからず、です」


ぽんこが掲示板を開く。

まずは住人掲示板。


【大陸南部雑談 part5】


204:名無しの探索者

ダンジョン、最近渋くねぇか


205:名無しの探索者

渋い

先月まで採れた鉱石が採れなくなった


206:名無しの商人

なんか危険度も上がってますよね

うちの取引先の探索者が帰ってこない


207:名無しの探索者

稼げないわ危ないわ

南はもうダメかもな


208:名無しの住人

ダンジョンの機嫌なんて昔からそんなもんだろ


209:名無しの探索者

昔からっつーか、ここ最近一斉になった気がすんだよ


210:名無しの住人

変革期だからな


342:名無しの住人

赤い鬼の話、続きが来たぞ


343:名無しの探索者

西の山の話か


344:名無しの住人

そう

今度は例の『鬼に支配された村』に現れたってさ

赤い鬼、小さな鬼、着物を着た女の鬼だと


344:名無しの住人

増えてね?


346:名無しの探索者

鬼に支配された村って、野良鬼の縄張り争いに巻き込まれたって奴だろ

現れたって、村が潰されたか?


347:名無しの住人

いや、なんか普通に話が通じたらしい

野良鬼に困ってるって話をしたら退治に行ってくれて、二体とも子分にして帰ってきたってさ


348:名無しの住人

村に現れた うん

話が通じた まぁ

退治に行ってくれた ん?

子分にして帰ってきた そうはならんやろ


349:名無しの住人

昔話かな?




俺は画面の前で頭を抱えた。


「……ぽんこ」

「はい」

「女の鬼って何だ」

「わかりません」

「小さな鬼って誰だ」

「わかりません」

「野良鬼を子分にしたってどういうことだ」

「したんでしょうね」


ラセツは一人で出て行った。

ゴブリン一匹が追いかけた。

それが今や五人の鬼の一行になっているらしい。


「……何があったんだ、あいつの旅に」

「気になりますか?」

「気になるに決まってるだろ」

「追跡しますか? チュウタちゃんの分体を向かわせれば」


少し考えて、やめた。


「やめておく。あいつは、うちの外に出て行った。戻るかどうかは、あいつが決める。こっちから覗きに行くのは、違う気がする」

「わかりました!では、噂だけ収集しておきますね」


「ああ。……女の鬼の情報は最優先で頼む」

「気になってるじゃないですか」


DM掲示板に切り替える。

こっちは、温度が違った。


【第三大陸DM板part10】


455:名無しのDM

南の連中、生きてるか?


456:名無しのDM

生きてるが死にそう


457:名無しのDM

何があった


458:名無しのDM

北西が来た

勢い的にグランツ負けそう

マジうざい


459:名無しのDM

グランツって南の調停者だっけ?

>>458はグランツの従属?


460:458

そう

くそ完全に騙された

北西についときゃよかった


461:名無しのDM

そんなこと言って大丈夫かよ

グランツも見てんだろ、ここ


462:458

知るかよ

大体誰が書いたかわかんないんだからどうでもいいだろ

敵側の偽装かもしれないんだし


463:名無しのDM

わい北西陣営

悠々自適の無借金生活

南陣営ざまぁ


464:名無しのDM

>>463

北西陣営きた

ユートと北西陣営のリークはよ


465:463

世話になってるからそういうのは無し


466:名無しのDM

なんだ自分語りのターンか?

俺は北陣営

一人で逃げ回ってて寂しい

誰か友達になって


467:名無しのDM

混沌としてまいりました


483:458

グランツは小物

大義で動いていると言いつつ、損得しか考えてない

と見せかけて実際はプライドの塊


484:名無しのDM

それな


485:名無しのDM

まぁ商人からしたら面子は商売道具だからな

こだわるのもわからないでもない


485:名無しのDM

今は商人じゃなくてダンジョンマスターなんですがそれは




「うちからの書き込みがあるな」

「内容的にはトトさんですかね」

「まあレイゼルが気付いてないはずはないからな。上手くやるだろ」


というかレイゼルの策かもな。


「それよりグランツの評判だが、これ本当かな」

「レイゼルさんの報告にも似たような記述がありますね『本人は合理主義の人間のつもりでいる。実際、判断の九割は損得で説明がつく。ただし、決定的な部分で損得より面子が勝つ』だそうです」

「突くならそこってことだな」


そして、プライドが高いのであればなおさらレイゼルのやったことは許せないであろう。


「反撃への備えが必要だな」

「さてさてどうやって攻めてきますかね」




十日後。

レイゼルから短い通信が入った。


『動いたよ。グランツ傘下のモンスターが、トトのダンジョンに向かっている』

「トトか、想定内だな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。