エレノアの想い
広間の喧騒が嘘のように、月明かりだけが照らす深夜のバルコニー。
昼間の強気な態度はどこへやら、エレノアはプラチナブロンドのロングウェーブを夜風に揺らしながら、あなたに背を向けて佇んでいました。
いつもならピンと立っている純白の兎耳は、今は気恥ずかしさを隠すように、ぺこりと力なく後ろに倒れています。
あなたが声をかけると、エレノアはビクッと肩を震わせ、ゆっくりと振り返りました。氷のような淡い紫色の瞳は、驚くほど潤んでいて、今にも涙が零れ落ちそうです。
「……あら。あなた、ですのね……。こんな夜更けに、私に何の御用かしら? 下賤なあなたが、高貴な私と二人きりになろうなんて、身の程知らずにもほどがありますわ……っ」
いつものお嬢様口調。けれど、その声は微かに震えています。
何より、ドレスの裾の後ろから覗く白いポンポン尻尾が、あなたと目が合った瞬間にぴょんぴょん、ぴょこぴょこと激しく跳ねてしまっているせいで、強がりのすべてが台無しになっていました。
「な、何を見ているのですの!? 失礼ですわよ! これは……ただの、生理現象ですわ! 私の意思とは、い、一切関係ありませんことよっ……!」
エレノアは真っ赤になって怒ろうとしますが、自分の長くて真っ白な兎耳を両手でぴったりと頭に伏せ、顔を隠すようにして視線を泳がせます。
あなたが何も言わず、ただ優しく見つめ続けると、彼女の張り詰めていた意地が、音を立てて崩れていきました。
ドレスの裾を細い指先でぎゅーっと握り締め、上目遣いであなたを睨みつけ――いえ、縋るような瞳で、消え入りそうな声を漏らします。
「……ずるいですわ、あなたって人は……。いつもそうやって、私がどれだけ突き放しても、平気な顔をして隣にいるのですもの……。おかげで、私の頭の中は、朝から晩まであなたの一挙一動でいっぱいですのよ……?」
一歩、また一歩と、エレノアがあなたとの距離を詰めてきます。いつもは気高く上がっている顎が、今は小さく引かれ、等身大の恋する少女の顔になっていました。
「お、他の泥棒猫(狐や狼)たちが、あなたにベタベタ甘えているのを見るたびに……私の胸の奥が、引き裂かれそうに痛むのですわ……。あんな、はしたない真似、私にはできませんけれど……でも、でも……!」
ついに耐えきれなくなったのか、エレノアはあなたのシャツの胸元を両手でぎゅっと掴みました。シルクのような白い耳が、恥ずかしさで先端までほんのりピンク色に染まっています。
「本当は……私だって、あなたに構ってほしいんですの……っ! 毎日、毎日……下郎だなんて言いたくて言ってるわけじゃありませんわ……っ。意地を張らないと、あなたが好きすぎて、どうにかなってしまいそうだから……!」
「もう、離さないでくださいましね……?」
ぽろぽろと、淡い紫色の瞳から綺麗な涙が溢れ、あなたの胸元に染みを作っていきます。
「夜、一人でベッドに入ると……寂しくて、寂しくて……死んでしまいそうなの。……ねぇ、私の手を引いて、エレノアって呼んでくださらない? あなたのような下賤な男に、この私が……私のすべてを捧げると言っているのですわ……受け取らないなんて、許しませんことよ……っ」
すっかりデレ期へと移行した彼女の小さなポンポン尻尾が、今度は愛おしそうに、あなたの腰のあたりにそっとくっついて離れなくなります。
「……もう……絶対に、離さないでくださいましね……? もしも私を置いて別の女のところへ行ったら……私、本当に寂しくて、死んでしまいますわ……っ……」
プライドの高い白兎のお嬢様が、完全にあなたの愛に粘着し、すべてを委ねた瞬間でした。
これほど健気で激しいエレノアの独占欲を前にして、おにーさん。あなたはどうやって彼女を抱きしめ、その可愛い耳を撫でて安心させてあげますか?




