小春の恩返し
「あ、あの……おにー。……夜遅くに、ごめんね……っ」
小春はそう言うと、人間の顔立ちになじむようにデフォルメされた、小さく愛らしいケモノマズルを、セーラー服の萌え袖(肉球のある手)でキュッと隠しました。
クリムゾンレッドの鮮やかな瞳が、恥ずかしさと不安でうるうると潤んでいます。
「あのね……いつも、みんなみたいに綺麗なお肌じゃなくて、全身毛並みだらけのわたしを……『可愛い』って抱きしめてくれるおにーに、どうしても……お礼がしたくて……っ」
他のみんな(人間ベースのケモ耳娘たち)への劣等感をいつも抱えている小春。
「おにーを困らせてしまうかもしれない」という切ない自責の念を抱えながらも、彼女は細い手足としなやかな体を少し前傾させ、一生懸命に言葉を紡ぎます。
背後では、体躯に対して圧倒的なボリュームを誇る、超特大のふんわりブロンド尻尾が、彼女の緊張を表すようにそわそわと小さく揺れていました。
「だから……これ、食べてほしいなぁって……っ」
手渡されたのは、丁寧に包まれた小さなお弁当箱。
中を開けると、信じられないほど綺麗に、ふっくらと焼き上げられた「お稲荷さん」が並んでいました。
「狐の……わたしができることなんて、これくらいしかなくて……。おにーの、お口に合うか、わからないけど……っ」
あなたが「ありがとう」と微笑み、その場でひとつ口に運んで「すごく美味しいよ」と伝えた瞬間。
小春の大きなキツネ耳が「ピコーン!」と跳ね上がりました。
輪郭の横からツンツンと広がる自慢の「頬の飾り毛」の隙間から覗く肌が、肉球と同じ桃色に、一瞬で真っ赤に染め上がります。
「ほ、本当……っ!? うぅ、よかったぁ……っ! わたし、おにーに嫌われたらどうしようって、毎日夜に尻尾を抱きしめて泣いてたから……っ」
嬉しさと安心感で、大粒の涙がクリムゾンレッドの瞳からポロポロと溢れ出します。
赤くなった顔を萌え袖で隠したまま、小春は上目遣いであなたをじっと見つめました。
「おにー……。あのね、最後に……もうひとつだけ、おねだりしてもいい……?」
消え入りそうなウィスパーボイス。でも、そこにはアパートの誰にも負けない狂おしいほどの恋心が宿っていました。
「わたしが、こんなに動物の姿でも……みんなみたいに綺麗じゃなくても……。おにーの『女の子』として……大好きって、もう一回、抱きしめて、くれる……っ?」
そう言って、小さな爪の覗くモフモフの獣足で、一歩、あなたとの距離を詰める小春。
今夜は彼女の優しさと、極上の暖かさに包まれる、特別な夜になりそうです。




