表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/16

ズレているもの

その違和感は、翌日になっても消えなかった。


レオは朝から王都を歩いていた。


いつも通りの街。


いつも通りの人々。


だが、どこかだけが妙に“揃いすぎている”。


笑い声も、足音も、会話も。


全部が正常なのに、逆に不自然だった。


「……気持ち悪いな」


小さく呟く。


そして足を止めた瞬間、気配が途切れた。


さっきまで確かにあった“何か”が、跡形もなく消えている。


レオは周囲を見回した。


誰も気にしていない。


誰も違和感を持っていない。


「……気づいてるのは俺だけか?」



一方その頃、ユウマは宿で地図を見ていた。


昨日の消失地点が、微妙に増えている。


「増えてるな」


「だな」


レオが戻ってきて答える。


「それ、自然増殖してないか?」


「そんなバカな現象あるか?」


ユウマは笑った。


だが笑いながらも、目は真剣だった。


「でも近いな」


「近いのかよ」


レオは椅子に座る。


「昨日のやつ、もう一回整理するぞ」


ユウマは頷いた。


「魔導具が消える」


「痕跡がない」


「記録にも残らない」


「予測魔法にも引っかからない」


レオが指を折る。


「普通の犯罪じゃないな」


「普通じゃない」


ユウマは即答した。


そして少しだけ考え込む。


「でも“意図”はある」


「どうして分かる?」


「バラバラじゃない」


ユウマは地図を指した。


「消失位置が“繋がりそうな形”になってる」


レオはそれを見て、眉をひそめた。


「誰かが線を引いてる?」


「そういう感じだ」



その日の午後。


二人は現場を変えた。


今度は魔導具問屋街の裏手。


消失が多発しているエリアだ。


店の奥に入った瞬間、ユウマは足を止めた。


「……今の見えたか?」


「見えた」


レオは即答する。


空間が一瞬だけ“抜けた”。


消えたというより、そこに“何もなかったことになる”ような感覚。


ユウマは目を細める。


「魔法じゃないな」


「断言できるのか?」


「魔法なら残る」


ユウマは言う。


「これは残らない」


レオは短く笑った。


「面倒なやつだな」



夜、宿。


ユウマは机に向かっていた。


紙には新しい仮説が並んでいる。


レオはその横でパンを食べている。


「で、結論は?」


「分からん」


ユウマは即答した。


レオは笑った。


「潔いな」


「ただ一つだけ言える」


ユウマはペンを置く。


「これは“自然現象”じゃない」


「誰かが作ってる」


レオは少しだけ目を細めた。


「目的は?」


「そこが分からない」


ユウマは軽く笑った。


「でも面白い」


レオはため息をつく。


「お前それ好きだな本当に」



その夜。


王都の外れ。


消失現象が再び起きていた。


だが今回は少し違う。


消えた後に、“何かの痕跡”が一瞬だけ残っていた。


それは魔法陣でもない。


魔力痕でもない。


ただの“違和感”だった。


その中心に立っていた男が、小さく呟く。


「……まだ足りない」


そして、その場から何事もなかったように消えた。



翌朝。


ユウマはその報告を聞きながら、静かに笑った。


「なるほどな」


「何がだ」


レオが聞く。


ユウマは紙を閉じる。


「こっちが観察してるつもりだったが」


「向こうも見てるな」


レオは少し沈黙したあと、肩をすくめた。


「じゃあゲーム開始か」


ユウマは頷く。


「そういうことだ」


そして窓の外を見た。


王都はいつも通り平和だった。


だからこそ。


少しだけ歪んで見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ