表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/8

最初の事件

英雄計画は思ったより地味に始まった。


「財布?」


ユウマは思わず聞き返した。


目の前にいる商人は真剣な顔で頷く。


「財布です」


「盗まれました」


ユウマはレオを見る。


レオもユウマを見る。


沈黙。


「英雄ってもっとこう」


ユウマが言う。


「魔物とかじゃないのか」


「知らん」


レオが肩をすくめた。


結局、最初の依頼は財布探しだった。


王都南区。


市場。


昼間でも人が多い場所だ。


ユウマは現場を歩き回る。


魔力痕跡を探す。


足跡を見る。


聞き込みもする。


最初は面倒だった。


だが途中から少し楽しくなってきた。


「なるほど」


「分かったか?」


レオが聞く。


「たぶん子供だ」


数時間後。


財布は見つかった。


犯人も見つかった。


腹を空かせた孤児だった。


盗んだ金もほとんど使われていない。


「どうする」


レオが聞く。


ユウマは少し考えた。


そして商人と孤児を引き合わせた。


商人は怒鳴った。


孤児は震えた。


その後。


商人は大きくため息を吐いた。


「働くか?」


孤児が固まる。


「え?」


「盗むよりマシだろ」


結果として。


孤児は市場で働くことになった。


帰り道。


レオが言う。


「なんか思ってた英雄と違うな」


「俺もそう思う」


ユウマは苦笑した。


ドラゴン討伐。


魔王討伐。


伝説の剣。


そんなものではなかった。


財布探しだ。


だが。


「悪くなかった」


ユウマは空を見上げた。


事件は小さい。


だが確かに誰かは助かった。


そして一つ分かったことがある。


英雄になる道は。


案外こういうところから始まるのかもしれない。


その日の夜。


レオは別の報告を持ってきた。


「面白い話がある」


「なんだ?」


「市場で最近、魔導具が少しずつ消えてる」


ユウマが顔を上げる。


「盗難か?」


「たぶんな」


レオは笑った。


「しかも複数の場所で同時にな」


ユウマも笑った。


これは財布探しとは違う。


少しだけ大きい。


少しだけ面白い。


そして。


少しだけ英雄らしい。


「調べるか」


「ああ」


こうして。


ユウマが初めて追うことになる“組織絡みの事件”が始まった。


もちろん。


その組織はまだ存在していない。


存在していないはずだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ