表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/33

見えない原因

「未来映像をもう一度。」


予測局、分析部。


セシリアは映像を見返していた。


市場。


露店。


人混み。


次の瞬間、一人の男性が倒れる。


続いて、また一人。


周囲は騒然となり、人々は市場から逃げ始める。


映像はそこで途切れた。


「感染症でしょうか。」


主任分析官が腕を組む。


「可能性は高い。」


「医療局には?」


「すでに連絡済みです。」


机には市場周辺の地図が広げられていた。


「現地調査は協力魔導士へ。」


セシリアは静かに頷いた。



翌朝。


「市場で体調不良者?」


ユウマは依頼書へ目を通す。


「現時点では発生していません。」


セシリアが説明する。


「未来映像だけです。」


「だから今のうちに原因を探す。」


ユウマは依頼書を閉じた。


「行きましょう。」



王都中央市場。


朝から多くの人で賑わっている。


「今のところ異常なし。」


ユウマは市場全体を見回した。


医療局の職員達も既に巡回している。


井戸水を採取。


飲食店を確認。


市場全体を調べ始めた。


「井戸は問題ありません。」


医療局。


「食材も異常なし。」


「感染症らしい兆候もありません。」


セシリアは少しずつ表情を曇らせる。


「分析を間違えた……?」



昼過ぎ。


市場を歩いていると、


「あれ。」


レオが手を振った。


「お前達も来てたのか。」


「商会から。」


レオは荷馬車を親指で示す。


「最近、この市場だけ返品が増えてる。」


「原因を探れって。」


ユウマは笑った。


「結局、また一緒だ。」


「そういうこともある。」



三人は市場を歩き回る。


「返品って何の商品?」


セシリアが尋ねる。


「保存肉。」


「肉?」


「腐ってる訳じゃない。」


「でも味がおかしいって。」


レオは一軒の店を指差した。


「全部ここから仕入れてる。」


ユウマは店主へ声を掛けた。


「保管庫を見せてもらえますか。」



地下倉庫。


冷気を保つための保存魔法陣が刻まれていた。


ユウマはしゃがみ込む。


「……これか。」


魔法陣の一部が薄く欠けている。


「魔力切れ。」


「完全には止まってない。」


「だから少しずつ温度が上がってた。」


セシリアは息を呑んだ。


「感染症じゃない。」


「食中毒。」


「未来は。」


レオが続ける。


「結果しか映らない。」


「原因までは分からない。」



医療局はすぐに販売停止を指示した。


問題の保存肉を回収。


魔法陣も修復される。


未来映像で見た市場の混乱は訪れなかった。



帰り道。


夕暮れ。


セシリアは珍しく黙って歩いていた。


「ごめんなさい。」


ぽつりと呟く。


「感染症だと決めつけました。」


「私の分析不足です。」


ユウマは首を横へ振る。


「違う。」


「未来は当たってた。」


「倒れる人も。」


「市場が混乱することも。」


「間違えたのは。」


少し考えて笑う。


「未来じゃない。」


「未来を読む俺達。」


セシリアは立ち止まる。


ユウマは続けた。


「未来を見る魔法は便利だ。」


「でも。」


「原因まで教えてくれる魔法じゃない。」


「だから。」


「現場がある。」


「分析がある。」


「俺達がいる。」


セシリアはようやく笑った。


「ありがとうございます。」



夜。


研究院。


三人だけの部屋。


レオが机へ報告書を置いた。


「医療局から礼が来てた。」


「対応が早かったって。」


ユウマは紅茶を飲みながら笑う。


「今回はセシリアのおかげだ。」


「私ですか?」


「未来を見つけたのはセシリア。」


「原因を見つけたのは俺達。」


「一人じゃ無理だった。」


レオも頷く。


「役割分担。」


「それでいい。」


しばらく静かな時間が流れる。


セシリアはふと笑った。


「今日は少し落ち込みました。」


「珍しい。」


レオが肩を竦める。


「いや。」


「結構ある。」


「あります。」


三人は同時に笑った。


ユウマはカップを置く。


「予定通りだ。」


「失敗しない百年計画なんてない。」


「大事なのは。」


「百年後に成功していること。」


セシリアも頷く。


「第一段階。」


「順調ですね。」


「順調。」


レオが短く答える。


ユウマも静かに笑った。


「焦らず行こう。」


百年という時間は長い。


だからこそ、一つの失敗も、一つの成功も、すべてが未来へ続く経験になっていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ