選ばれる理由
「ユウマ君。」
協力魔導士本部を出ようとしたユウマへ、受付の職員が声を掛けた。
「予測局から現地調査の依頼だ。」
依頼書を受け取る。
内容は王都近郊の村。
農業用水路の水量が不安定になっているという報告だった。
現時点で被害はない。
だが、予測局が観測した未来では、小さな異変が積み重なり、農作物の収穫量へ影響する可能性が示されているという。
「分析担当は?」
「セシリアさん。」
ユウマは自然と笑った。
「最近、一緒になることが多いですね。」
「分析部からも、『前回と同じ担当で問題ない』と連絡が来ている。」
職員は依頼書を閉じた。
「現場判断が的確だったそうだ。」
「ありがたいですね。」
ユウマは静かに頷いた。
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予測局。
「よろしくお願いします。」
セシリアも同じ依頼書を受け取っていた。
主任分析官が机へ資料を並べる。
「今回も現地はユウマ君が担当する。」
「はい。」
「前回の報告書も確認した。」
主任は短く続ける。
「分析結果を現場で正しく拾い上げてくれる。」
「こちらとしても助かる。」
セシリアは少しだけ誇らしそうに笑った。
「信頼していますから。」
⸻
昼過ぎ。
王都近郊の村。
「ここ数日、水の流れが安定しなくて。」
村長が用水路を案内する。
止まるわけではない。
だが、一日のうち何度か水量が極端に落ちるらしい。
「上流を見ましょう。」
ユウマが歩き出す。
セシリアも資料を片手に後へ続いた。
⸻
山道を歩いていると、
「お。」
聞き慣れた声が響いた。
レオだった。
「また会ったな。」
「レオも仕事?」
「商会から頼まれた。」
レオは肩を竦める。
「近くの水車小屋が調子悪いらしくてな。」
「原因探してこいって。」
「結局、同じ場所ですね。」
セシリアが笑う。
「そういう日なんだろ。」
三人はそのまま上流へ向かった。
⸻
原因はすぐに見つかった。
数日前の強風で倒れた木が、水路へ半ば引っ掛かっている。
完全には塞いでいない。
だが、水流を不規則に変えていた。
「これですね。」
ユウマが木へ手を掛ける。
レオも反対側へ回る。
「せーの。」
倒木がゆっくりと外れる。
水は本来の流れを取り戻した。
セシリアは流量を確認し、小さく頷く。
「問題ありません。」
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村へ戻ると、水車は静かに回り始めていた。
「助かりました。」
村人達が何度も礼を言う。
「大したことじゃありません。」
ユウマは笑う。
「原因が分かれば、あとは皆さんでも対応できます。」
「それでも最初の一歩は難しいんですよ。」
村長は穏やかに頭を下げた。
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帰り道。
夕日が三人の影を長く伸ばしていた。
しばらく誰も話さない。
静かな時間だった。
やがてレオが口を開く。
「最近。」
「予定より評判いいな。」
ユウマは少し笑う。
「そうかな。」
「まだ始まったばかりだけど。」
「分析部でも。」
セシリアが前を向いたまま言う。
「ユウマさんの報告は信用されています。」
「現地調査も。」
「百年計画の第一段階としては十分順調です。」
ユウマは苦笑した。
「俺もまだまだだよ。」
少しだけ空を見上げる。
「でも。」
「順調ではあるな。」
レオは静かに頷いた。
「予定を書き換えるほどじゃない。」
「予定通り。」
「焦る必要もない。」
セシリアも笑う。
「百年ありますから。」
その言葉に、三人は自然と笑い合った。
百年。
それは途方もなく長い時間だった。
だからこそ、一つ一つ積み重ねる。
小さな依頼も。
小さな信頼も。
すべては、百年後に語られる一つの伝説のために。




