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休日の王都

珍しく、三人の予定が重なった。


協力魔導士本部は休み。


研究院も実験設備の点検日。


予測局も定例の儀式が終わった翌日は、分析部だけが交代で休暇を取ることになっている。


「本当に休みなんですね。」


王都の中央広場で待ち合わせたセシリアが、少し嬉しそうに言った。


「休みの日くらいある。」


レオが答える。


「なかったら困る。」


ユウマも笑った。


「研究院にも追い出された。」


「追い出された?」


「設備点検だから入るなって。」


「それは追い出されたんですね。」


三人で笑う。



広場では月に一度の市が開かれていた。


地方から来た商人。


焼き菓子の屋台。


手作りの装飾品。


子供達が走り回り、楽器の音色が通りへ流れていく。


「賑やかですね。」


セシリアが辺りを見回す。


「普段は仕事帰りしか歩かないので。」


「今日はゆっくり見ればいい。」


ユウマが言う。


「せっかく休みなんだから。」



最初に足を止めたのは古本屋だった。


「また本ですか。」


セシリアが苦笑する。


「見るだけ。」


そう言いながら、ユウマの手は迷いなく本棚を眺めている。


「見るだけって言う人ほど買いますよ。」


「今日は本当に見るだけ。」


数分後。


「買ってるじゃないですか。」


紙袋を抱えたユウマを見て、セシリアが笑った。


「予定外だった。」


「予定通りですね。」



一方。


レオは屋台の前で立ち止まっていた。


「串焼き。」


店主が声を掛ける。


「一本どうだ。」


「三本。」


即答だった。


「そんなに食べるんですか?」


セシリアが目を丸くする。


「一本じゃ足りない。」


「素直ですね。」


「腹が減ってるだけだ。」


「それ、前にも聞きました。」


レオは一本をユウマへ渡す。


もう一本をセシリアへ差し出す。


「え。」


「食べないなら返せ。」


「食べます。」


慌てて受け取る。


「ありがとうございます。」


「別に。」


レオは最後の一本を自分で頬張った。


ユウマはその様子を見て、小さく笑う。


「優しいな。」


「違う。」


「余っただけだ。」


「三本しか買ってないのに?」


「……。」


レオは何も答えなかった。



昼過ぎ。


噴水の縁へ腰を下ろす。


人通りを眺めながら、それぞれ買った物を広げる。


「研究以外では何をするんですか?」


セシリアがユウマへ尋ねる。


「本を読む。」


「研究ですね。」


「そうかもしれない。」


「じゃあレオさんは?」


「寝る。」


「それ以外。」


「食べる。」


「それ以外。」


少し考えてから答える。


「歩く。」


セシリアは思わず吹き出した。


「結局歩くんですね。」


「落ち着く。」


レオはそれだけ言って空を見上げた。



「セシリアさんは?」


今度はユウマが尋ねる。


「私は……。」


少し考える。


「お菓子作りです。」


「意外。」


レオが呟く。


「そうですか?」


「分析官ってもっと。」


「難しい本ばかり読んでそう。」


「それは仕事です。」


セシリアは笑う。


「甘い物は好きですよ。」


「今度作ります?」


「本当か?」


レオが反応した。


「食べる気満々ですね。」


「甘い物は嫌いじゃない。」


「嫌いじゃない、なんですね。」


「好きとは言ってない。」


ユウマとセシリアは顔を見合わせ、また笑った。



夕方。


王都の鐘が鳴る。


「今日は何もしてないですね。」


セシリアが伸びをする。


「それが休みだ。」


ユウマが答えた。


「何もしない日も必要。」


レオも珍しく頷く。


「明日からまた仕事だ。」


三人は立ち上がる。


「じゃあ。」


「また明日。」


短い言葉を交わし、それぞれの帰り道へ歩き出した。


休日は終わる。


けれど、その穏やかな一日は、三人にとって十分すぎるほど心地よい時間だった。

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