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分析官と協力魔導士

「また一緒ですね。」


現場へ向かう馬車の中で、セシリアが小さく笑った。


向かいにはユウマ。


窓際には数名の協力魔導士が座っている。


今回の依頼は共同調査だった。


予測局分析部。


協力魔導士。


現地で直接原因を探る。


最近では珍しくない形式になり始めていた。



「毎回、分析官も来るんですか?」


ユウマが尋ねる。


セシリアは首を横に振った。


「いいえ。」


「私は現場を見る勉強中なんです。」


「机だけでは分からないことが多いので。」


「なるほど。」


ユウマは納得したように頷く。


「研究も同じです。」


「実物を見ないと分からない。」


「ですよね。」


二人は自然と笑った。



街道へ到着すると、荷馬車が数台止まっていた。


商人達が困った顔をしている。


「最近、荷物だけが無くなるんです。」


「鍵は壊れてない。」


「箱も開いてない。」


「でも中身だけ無い。」


協力魔導士達が辺りを調べ始める。


ユウマも荷台へ近付いた。


「……。」


木箱。


荷台。


縄。


異常はない。



「こちらです。」


後ろからセシリアが声を掛ける。


地図を広げていた。


「予測映像では、この荷馬車だけ毎回映っています。」


「でも。」


「盗まれる瞬間は映らないんです。」


ユウマは地図を見る。


「映像は結果だけ。」


「はい。」


「原因は私達が探します。」


二人は顔を見合わせた。


「やることは同じですね。」


「ですね。」



結局。


犯人は盗賊ではなかった。


荷台を固定する縄が一本だけ古くなっていた。


振動で荷物が少しずつ荷台後方へずれる。


最後尾だけ隙間ができる。


そこから小さな木箱が落ちていた。


街道脇の草むらには、同じ木箱がいくつも見つかった。


商人達は頭を抱えた。


「盗まれたと思ってました……。」


ユウマは苦笑した。


「人は原因が見えないと、誰かを疑いますから。」



帰り道。


馬車の揺れは朝より穏やかだった。


「今日は勉強になりました。」


セシリアが言う。


「映像だけじゃ分からないですね。」


「現場は嘘をつきません。」


ユウマが答える。


「だから私は現場が好きです。」


「私は分析が好きです。」


「お互い足りないものを補ってますね。」


「そうですね。」



王都へ戻る頃には夕方になっていた。


「お疲れ。」


馬車の近くで声がした。


レオだった。


偶然を装って立っている。


「仕事帰りか。」


ユウマが聞く。


「ああ。」


レオは二人へ視線を向ける。


「そっちは。」


「分析官のセシリアさん。」


ユウマが紹介する。


「今日初めて一緒に依頼を受けました。」


セシリアが丁寧に頭を下げる。


「初めまして。」


「セシリアです。」


「レオ。」


短い挨拶だけだった。


「ユウマの世話、大変じゃないか?」


突然レオが言った。


「え?」


セシリアが首を傾げる。


「研究始めると周り見えなくなる。」


「飯も忘れる。」


ユウマが眉をひそめた。


「そんなことない。」


「昨日も忘れてた。」


「……。」


反論できない。


セシリアが思わず吹き出した。


「少し想像できます。」


「ほら。」


レオが笑う。


「裏切られた。」


ユウマが肩を落とした。


三人とも笑った。


ほんの短い時間だった。


それでも。


誰が見ても、ごく普通の他愛ない会話だった。



別れ際。


セシリアは二人へ軽く手を振る。


「またご一緒することがあれば、よろしくお願いします。」


「こちらこそ。」


ユウマが答える。


レオも小さく手を挙げた。


それだけだった。


王都の夕焼けの中。


三人はそれぞれ違う方向へ歩き始める。


まだ誰も知らない。


この何気ない日常こそが。


いつか世界中を欺くための、一番大切な思い出になることを。

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