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三年という時間

三年という時間は、思っていたより短かった。


毎日を振り返れば長く感じる。


だが、振り返ってしまえば一瞬だった。


ユウマは十八歳になっていた。


⸻


王都の朝は今日も騒がしい。


商人が荷を運び。


職人が店を開け。


協力魔導士達が予測局へ集まっていく。


その光景は三年前と何も変わらない。


変わったのは、その中を歩くユウマだった。


「おはようございます、ユウマさん。」


「おはよう。」


市場へ入ると、八百屋の主人が笑顔で手を振る。


「この前は助かりました。」


「また何かあったら頼みます。」


「その時は。」


ユウマも笑って答えた。


三年前なら名前を呼ばれることなどなかった。


今では王都を歩けば、誰かしらが声を掛けてくる。


英雄ではない。


だが。


“頼れる協力魔導士”


としては十分に知られる存在になっていた。


⸻


「随分と有名になったな。」


隣を歩くレオが小さく笑う。


「仕事を続けてればこうなる。」


「地道って大事だな。」


「百年計画だからな。」


「まだ言うか。」


「まだ三年だぞ。」


二人は顔を見合わせて笑った。


⸻


予測局へ着くと、受付の職員が軽く頭を下げる。


「お待ちしておりました。」


「今日の依頼ですね。」


「お願いします。」


書類を受け取る。


もう見学者ではない。


依頼を受ける側になっていた。


それだけでも、この三年が無駄ではなかったことを実感する。


⸻


依頼内容を確認したレオが口を開く。


「最近は随分と難しくなったな。」


「協力魔導士が増えたからだろ。」


「簡単な案件は新人へ回る。」


「俺達は残った方か。」


ユウマは書類を閉じた。


「少しずつ信用を積んできた結果だ。」


派手な活躍はない。


劇的な事件もない。


それでも。


一つ一つ解決を積み重ねれば、自然と任される仕事は変わっていく。


そのことを、この三年間で学んだ。


⸻


依頼を終えた帰り道。


二人は研究院へ立ち寄った。


「また来たのか。」


顔馴染みになった研究員が苦笑する。


「資料を返しに。」


「返すだけじゃないでしょう。」


「……少し借ります。」


「正直でよろしい。」


研究員は笑いながら奥の棚を指差した。


「新しい術式理論が入っているよ。」


「君なら面白がると思う。」


「ありがとうございます。」


ユウマは迷わず資料室へ向かった。


⸻


分厚い本を机へ積む。


魔法陣。


術式。


魔導具。


どれも世界中から集められた研究成果だった。


レオが本の山を見て呆れる。


「全部読む気か?」


「全部は無理。」


「じゃあなんでこんなに持ってきた。」


「どこにヒントがあるか分からない。」


ユウマは本を開いた。


世界には、まだ知らない知識が山ほどある。


それを知ることは嫌いではなかった。


いや。


むしろ好きだった。


⸻


夕方。


宿へ戻る頃には、鞄は本でいっぱいになっていた。


「重い。」


レオがぼやく。


「手伝え。」


「お前が借りたんだろ。」


「俺一人じゃ持てなかった。」


「知ってる。」


文句を言いながらも、レオは半分を持っていた。


⸻


部屋へ戻ると、ユウマは借りてきた本を机へ並べた。


百年計画の紙は、その隣に静かに置かれている。


三年前と比べれば、計画書はずっと厚くなった。


協力魔導士として得た経験。


研究院で得た知識。


王都で築いた信用。


どれも紙には書き切れない。


それでも。


確かに積み重なっていた。


ユウマは計画書を閉じ、本へ手を伸ばす。


「さて。」


「今日も続きを始めるか。」


百年という未来は、まだ遠い。


だが、その未来へ続く今日という一日は、もう始まっていた。

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