07.城跡公園物語
ももこ「僕、あの公園遊具なくて楽しく思えないんだよね」
私たちは駅から出てすぐ、線路沿いに道を歩いている。
右を向けば端に草木の生えた緑の路線。左を向けば住人によって違った、個性豊かな住宅街。
都会では見られないタイプの技術と自然の融合を感じさせる風景だ。
めめ「元々スポーツ公園だからね。遊ぶためのところじゃないんだよ」
部長「公園と言えば、春の花見が有名」
私「よくある桜並木...?」
部長「ううん。そういう種類じゃないよ」
そのような会話をしながら、線路沿いをたどっていると直角に曲がった川が見えてきた。
川の対面には山奥と勘違いしてしまいそうなほど、木々が並ぶ丘が伸びている。
部長「春限定で桜の下に売店が並ぶんだ。
並木と違ってまばらに植えられた木々もまたいい風物なんだよ」
真剣に語る部長に対して、町中に不自然に表れた川と丘に私は話を遮ってまで反応してしまった。
私「なにこの川...直角になってるし...奥に山みたいな木々が」
めめ「ただの池だよ」
部長「私の話..聞いてる..?」
私「い...け?」
今は秋、桜の話はお預けにして現在進行形で気になる話に持ちきりになってしまう。
まさしく、花より団子ってやつだ。
めめ「正しくはため池だね」
「敵陣の動きを制御するために掘られた穴なんだよ」
ももこ「僕なら泳いでちょちょいのちょいだけどな」
ことみ「汚いからやめておけよ」
池、敵陣の制御....丘。どこかで聞いたことある気が....。
部長「城跡公園だからね。不思議じゃないよ」
「お城としては原型がほぼないんだけど、昔は軍陣として使用されてたからなんだ」
「その軍人さんが何かの記念にこの地に桜を植えたことで、桜の名所の一つになったんだよ」
聞き覚えのあるものがはっきりしたのと同時に、
部長はなぜか意気揚々と歴史を交えながら桜の話に戻そうと努力していると感じた。
それどころか、おそらく歴史を語るのが本編なのだろう。
ことみ「みゆきは相変わらず歴史が好きだね。資料集買って布教するぐらいには(呆れ)」
と、幼馴染さんが隣で呟いているからだ。
そして私の部活席に毎回用意された資料集も、部長の差し金だったと実感した。
私の中の紫式部も、目の前に置かれた枕草子を思わず読み入ってしまうような仕込みだったのだ。
私「城跡だったんだすね」
めめ「部長の言った通り原型はほとんどないんだけどね」
ももこ「お城はないし、遊具もない。こんな公園に行く意味がないっ!!」
めめ「運動公園から史跡公園にシフトしたし、ももこにとっては尚更かもね...」
目を背けていたが、さっきからももこの拒否マシンガンが止まらない。
ずっと行きたくないだの魅力がないだの叫んでいる。
私「そういえばさっき、元運動公園って言ってたっけ?」
めめ「うん。既存の運動場を撤去してる最中なんだ」
ことみ「お姉が武道館なくなって、部活困ってたのが記憶に新しいな」
私「う、うん」
仕方ないことではあるけど、聞いた本人が反応に困ってしまう話題を振ってしまった。
反省しながら、公園内に足を踏み入れるのだった。
丘と丘の間に整備されたコンクリートの道を歩き中を覗くと、
ピックニック向けの草地に解体前の武道館などが見られる。
近くには水の張られていない堀と石垣を発見した。
私「また堀があるね」
めめ「この奥に本来は、本城が立ってるんだよ」
ももこ「ふふふ、僕が本城を壊したんだよ」
ことみ「お前、諦めてほら吹きにシフトしただろ...」
確かに奥にはまっさらな平野しか見受けられないかった。
それでも道に沿って歩き角を曲がった先、一本の橋があることに私は気づいた。
ことみ「でも、なにもないからこそ変な想像したくなるのは....わかるんだよなぁ(小声で考え事)」
私「お城はないんだと思ったんだけど、橋あるんだ」
めめ「その先には、お気持ち程度に城壁もあるからね」
風流を感じる細い橋の先には、白色に塗られた壁とそれを黒いの瓦が守る様にそびえ立っていた。
画面いっぱいの迫力ではないが、殺風景な場所でしか見られないインパクトというものが確かにあった。
部長「今はしょぼいけど、各地の資料をかき集めて再建を目指してるんだって」
ももこ「そして、すべての資料は僕が持っている!!再建したければ僕を倒すがいい!!」
ことみ「ふふ、やるな気様...。だが、そんな妄想は利かない!!!(迫真)」
唐突に我の世界におびき寄せる罠が張られるのを横目に、紅く染まった桜の葉を見つめる。
紅葉でも銀杏でもなくただの桜の葉が、砂利の庭に佇む岩と馴染んで美しいと感じてしまう。
部長「春もいいけど、たまには秋...」
部長はベンチに座って、どこから取り出したのか自前のお茶を楽しんでいた。
そして、となりで私たちに囁く少女もいる。
ことみ「こういう突然の行動したときのみゆきに、ツッコミ入れちゃだめだからな」
ももこ「どこから、そのお茶出したの?」
ことみ「オイッ!!」
部長「お茶を飲む前に歴史を語るしかnain....(ry」
部長に隙を与えると解説口調になるんだなと、約10分かけて理解させられた。
公園の中心を見て回り、これで終わりかと感じていたが本当のメインはこれからだった。
さっきよりも広い砂利庭に出たと思えば、
目の前には確かに石垣の上に聳え立つあたり一面の白壁が列なっていた。




