16.階段上の物語
ももこを追いかける形で数百段もの階段を登り、
木造の門の先で青い空が私たちを迎えた。
めめ「疲れた...」
私「長いこと運動してなかったのが響いたよ...」
木々が遮っているはずだった日光は、開けたことによって私を襲っている。
秋になっても今日は27度弱あるとのことだ。暑さと脱水で干からびそう...。
部長「んん....ん」
二人がヘトヘトな中、部長は元気そうに何かを回そうとしている。
めめ「部長....何してるの」
部長「3本目のスポドリ。なかなか開かなくてね...」
めめ「え...?」
「、、......あぁ」
一瞬思考停止したのだろうか。
その手があったのかと言わんばかりに納得の一声が零れている。
当の私も、飲用水を持参するという思考は一切なかった。
部長「外出の基本だろ...?」
私「引きこもりってほどじゃないけど、インドアだから....。」
めめ「選択肢すらなかったね~...」
「ももこも必要ないとか言って、選択肢になかっただろうし」
都会育ちとかそういう前に、私は運動という行為を甘く見ていたのかもしれない。
梅雨が明けて、水場に逃げ遅れたカエルのような感情で日光を浴びている。
後ろを向いて下ってしまえばまた日陰に戻れるが、ここまで登った意味もなくなる....。
自分で決めた道を諦めるか辛くても立ち向かうかの葛藤の中、部長は私の頬に何かを当てた。
私「冷たい....」
部長「本当は下山用のなんだけど、仕方ないからあげる」
そういって私に冷えたペッドボトルを渡してきた。
どこから取り出してどうして冷えてるのか、見当もつかないが今の私にとってはありがたい限り....。
感謝を込めながらふたを開けようと尽力していると、部長はめめにも上げている様子が見受けられた。
めめ「...ありがとう」
部長「さて、下山どうしよう。燃費悪いんだよな」
私(スポドリが燃料なの...?)
ちょっとした疑問はあるものの貰ったものに遠慮しないのが礼儀。
手に取ったペッドボトルを爽快に飲み、約10分の3も減った。
あれから、とある建物に向けてまた少々の階段を登っている。
度々コンクリートの道に似合わない木造建築物を通り過ぎながら、会話は途切れることを知らない。
めめ「紅葉が綺麗だね」
私「カメラ持ってくればよかったかもね」
開けたといっても、山の中。
森版盆地かと思わせるほど見渡す限り木々が生えている。
部長「紅と黄色は不思議と秋を感じられるよね~」
めめ「ね~」
私「そうかな....?」
家族はみんな忙しくて、どこに住んでいる時期でもみんなで紅葉を見るきかいなんてなかった。
見たことあっても、きっと私が3歳ぐらいなんだろうと考えてしまう。
それどころか夏は海も夏は山も不思議と同感できない。
部長「そうだよ。秋になったら家族で紅葉狩りは常識でしょ?」
めめ「紅葉狩りというように落ち葉を集めて焼き芋作っちゃうな~」
部長「なんともったいない...」
私「落ち葉を勝手に燃やすのはよくない気が...」
めめ「収穫が終わった田畑なら大丈夫」
きっと、私にはわからない常識というものがあるんだと思う。
日本の南から北、西から東を点々と引っ越してきた
私にはわからない何かがあるんだとそう思うことにした。
私「常識って難しいね」
部長「そやぁ。自由は自由に阻まれるみたいなものだもの」
ことみ「みゆきって時に変なことを言うよな...」
いつの間にかももこたちに追いついていたみたい。
私の会話に満を持してことみが割り込んできた。
ももこ「年を取ると色々と察するんだろうね」
めめ「まだ中学生なのに~?」
良くも悪くも部員全員がそろった。
騒がしくなるもののお寺参りをするなら全員そろってのほうがいい。
私はそう思うんだ。
私「せっかく登ったし、お参りしに行かない?」
部長「階段が本体みたいになってるけど、そういやお寺だったね~」
めめ「階段の印象が強すぎるからね」
最上階まで登りきるとそこには小さなお寺が一つある。
ご利益として悪縁切り・良縁祈願があるらしい。
だからこそ私がここを提案して実際登ってきたんだ。
めめ「なにを祈るぅ?」
ももこ「そろそろ中間テストだしいい点とれるようにかなぁ」
ことみ「神社でお祈りするみたいなノリだな」
私はちゃんといい縁がある様にとお祈りをしている。
ちなみに心身浄化というご利益もあるが、
1015段も登るうちに煩悩が無くなることから由来しているらしい。
とにかくいい方向に私たちを導いてくれるんだ....きっと。
私「お祈りも終わったし何しようか」
部長「ここに来たからにはあそこによらないと」
私「あそこ...?」




