14.昔話物語
あれからというもの、ももこを見つけては見失うを繰り返しながら舗装された道に合流していた。
ももこ「めめ、やっときたか」
めめ「やっともなに、ももこが早いだけだよ..」
ももこ「だとしても、歩くは遅すぎるかと」
坂上からももこたちが見下ろしている。
視線の先には、くたくたになっている私が映っているのだろう。
足場の悪い道を歩きなれていなかった私は、何度もつまづいたり転んだりしてしまって遅れている。
私「はぁはぁ...。思ったより険しかった」
ももこ「めめもあるくも大丈夫か?」
めめ「暑いし風は弱いし、呼吸は荒いし....大丈夫じゃないかも」
めめは自信と私の状況をももこに精一杯伝えている。
私も転んだときに擦りむいた傷跡を絆創膏で塞ぎながら、めめの主張に応戦する。
私「ももこも汗かいてるでしょ、一回休んだ方が」
ももこ「まだ元気なんだけどなぁ~。まっ、急がば回れて言うしそうするか」
私「ありがとう..ももこ」
通り道の邪魔にならない程度に端により、3人で休憩をとることにした。
動いている間は弱すぎた風も、留まってみると涼しいと感じる。
めめ「30分くらい休もうかな...」
私「賛成」
ももこ「え、5分じゃだめ?」
めめ「ももこはバカ体力なんだから自重しなさい」
ももこ「バカ体力の自重ってなんだよ!?」
いつものありきたりない会話をしながら腰を下ろしている。
日陰と森林の適度な湿度がマッチして心地がいい。
都会なら痛々しい日光と乾燥した風に吹かれて、早く室内に入りたくなるものだ。
そんな懐かしい想像をしていると、下の方から声が聞こえてきた。
部長「なにか裏があるんだと思うんだよね」
ことみ「なにが?」
部長「先生の謎の潔さの話だよ」
ことみ「あー、去年は歴史を読ませながら数学させられていたね...」
どういう数学か想像はできなかったが、掠れていた声がどんどん近づいているのがわかる。
部長「私の予想では、佐々木先生のご機嫌取りを私たちにやらせる気なんだと思う」
ことみ「気難しい人ではあるけど、そんな怒る人でもないような...」
部長「あの人は誰にも彼の空気は、読めないと言われるぐらいには難しい人だ」
話に夢中になっているのだろうか。
私たちの目の前を会話したまま二人は通過していこうとしている。
ただそうはさせないように、はたまたももこを弄るかのように誰かが言葉を発した。
めめ「誰かさんへの見せしめなんじゃないの?」
ももこ「冗談でも僕の前でそれを言わないでくれ...泣」
めめ「冗談だよ、冗談」
鈴木先生は私のクラスの担任。
今までの授業を振り返ってみると
基本無口で自分の担当教科の時だけマシンガンになるような人だと記憶していた。
普段はHRから放課後まで、叱るときも誉める時も黒板に文字を書いている。
そして国語の時間、ノートメモが間に合わない速度で黒板を更新し始めるのをいるも眺めていた。
動画投稿サイトでファンメイドの文字PVを見ているような感覚だ。
私「そういえば、なんでももこは鈴木先生が気になるの?」
めめ「ほお。恋バナしちゃいますか~?」
部長「...私も気になる」
通り過ぎたと思っていた部長は私の隣に座っている。
なのに、なぜかことみの姿は影一つなかった。
ももこ「えぇ....話したくない...」
めめ「そんな照れなくてもいいんだよ。私は何回も聞いてるし」
部長「そうだ。恋愛経験0の私たちを信用して」
私「事実だけど、私を巻き込まないでよ」
ももこは話すかどうか悩んでいるようだったが。
横からすべてを知っているめめが勝手に言いそうになっていたため、
ため息を付いた後言葉を並べ始めた。
ももこ「私、とあるいじめっ子と喧嘩したことがあるんだ」
部長「思ったより深いの行くね。ただの一目ぼれかと...」
めめ「部長ってプライバシーかけてるよね...」
ももこ「公園で小さな女の子をいじめる小学男子がいたんだ」
「僕が小1のときだったかな」
「いじめられてる子を庇う形で私が割り込んで喧嘩した」
私の勝手な妄想ではあるが、夕焼けの下校時間。
辺鄙な公園で小学生男子と幼稚園女児のもめごとに割り込んだももこを連想した。
そのももこがボロボロになりながらも、図太さで返り討ちにしたのまでは予想できた。
ももこ「僕が怪我するだけならよかったんだ。でもそうじゃなかったんだ」
「相手もかなり怪我しちゃって、僕は昔から悪評ばっかりだったから悪者扱いされた」
「そこにたまたま通りかがった鈴木先生に惚れちゃっただけだよ」
めめ「手持ち黒板で必死に庇ってたのは今でも記憶に新しいね」
部長「なるほど。昔からの付き合いなんだ」
気軽に聞いちゃったけれど、思った以上に深い話だった。
多分私が踏み入れる隙がないのだろうと実感するほどに。
ももこ「さて、僕は休憩終わりにする。先に登っているね」
そういうとももこは早々と階段を登って行った。




