表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカナ・ブラッド  作者: 糸音
第2章
14/52

初任務はヴォルターと共に

 

「奇跡の燃料⁈ ってことは――」

「そう。【未開の中央(セントラルアンノウン)】の動物の血液。百聞は一見に如かずだ。買ってみな」


 ローレンスが支払い機の画面を示した。

 画面には定量か満タンの選択肢の他に、【100倍希釈】、【200倍希釈】、【300倍希釈】の選択肢がある。


「200倍希釈、満タンで淹れてくれ」


 言われるがままにボタンを押すと、ローレンスが3つタンクが連なった機械から伸びる、ホースノズルを燃料口に突っ込んだ。

 容量計算中……と出た後に、40.5L補充の表記が出る。


 すると、端にあった2つのタンクが音を鳴らし、片方からは少量の紅い血液が、もう片方は薄く白濁した大量の液体が溢れ、バルブを通して真ん中のタンクに流れ込む。

 タンクに規定量の混合液が満ちた後、混合液がホースを通る前に、遠心分離の機械にかけられて、ろ過された液体がノズルの口から放出された。


「ハツデンシロコブウシっつてな。家畜化された【未開の中央】の生物がいるんだ。嬢ちゃんが躾をしていたあの牛たちだよ」

「あの牛さんたちの血液ってこと⁈」

「ああ。一頭分の血液で、1万世帯分の1日の電力が賄える。この大陸の主力のエネルギー源だ。」

「電力ってことは、EVなんだこの車!」

「燃料式のな。原液だとエネルギー効率が高すぎるから、基本は何百倍にも薄めて使うんだ」


 楽しそうに目を輝かせながら説明を聞くアルメリアに、ローレンスも気分よく解説を続けた。


「100倍希釈は業務用で、300倍希釈は家庭用。各家庭に一台血液タンクがあるんだ。家で使う電気はここみたいなスタンドで購入できる」


 見てみ。とローレンスが示した先には、親子連れが空のタンクががっちりと固定されたカートのようなものを持って、別の機械の前で燃料を補充している様子が伺えた。


「こっちでは電気を家庭で管理するんだね。私のところは発電所から送られてきたのを、後払いで使ってたよ」

「そっちの火力発電と違って、大気汚染物質も出ない。非常にエコなバイオエネルギーだ」


 解説を聞きながら車に乗り直し、「ねえ」とアルメリアが切り出した。


「どうして急に色々教えてくれるようになったの?」

「そりゃあ、お前が役に立たなきゃ死刑囚に逆戻りだ。助けた意味がなくなるだろ」


 ローレンスが少しだけ声の調子を落として忠告した。改めて突きつけられた現実にアルメリアが怯む。


「仕事で成果を残すためには、大陸の生活や未開の中央(セントラルアンノウン)のこととか、知らなきゃいけねえことが山ほどだ。保護してよかったって思われるよう、今日の仕事も死ぬ気でやれよ」

「うん、わかった。……ちなみに今日の仕事って? 動物心理学者として何をすればいい?」

「断水の解決」

「なるほど、断水ね! ……ん?」


 動物絡みのことならどんとこい、と意気込んだところで、ローレンスが発したワードに、アルメリアが固まった。


「断、水……? そういうのって、水道屋さんとかの仕事じゃないの?」 

「配管とかのトラブルならなあ。だけど今回はちょっと事情が違うんだ。とりあえず現場に行けば分かるさ」




 暫く車で走り、街を囲っている城壁のすぐそばまで来た。門を警備していた衛兵にローレンスが挨拶してから、丘の外壁をらせん状に沿うように走る道路を走り、大きな耕作地が広がる農業地帯に辿り着く。


 緑が鮮やかな小麦畑を横目に、アニマグラムの側を流れる、大きな川を上流に向かって沿って走る。


「綺麗な川……! ……だけど、なんか水位低いね」

「お、良く気付いたな」


 澄んだ空気に、透き通った川の水。気持ちの良い空間が広がっているが、少し気になるのは岩肌が露になった川岸だ。

 よくよく見れば、岩肌には干からびた水苔が張り付いている。横に線を引いたように水苔がそうになっているのを見て、あそこまで水位があったんだな、と推測した。

 川を眺めながら走っていると、川の中央に聳え立つ複数の取水塔が見えた。


「あの塔の下の方に、窓みたいな場所があるだろ。あそこから本来は水を汲んで浄化施設まで送るんだけど、水位が低くなって採水できないんだよ」


 塔の下には窓が3段階かに分けて設置されているが、最下段以外が水面より上に出てしまっている。これでは採取できる水の量にも限りがある。

 こちらも水苔と同じくらいの高さに、風化した個所とそうでない個所でくっきりと層になっている為、自然と水位が低くなったわけではなさそうだ。


「お前に頼みたいのは犯人探しさ。動物の感情読めるんだろ?」

「え⁈ 水位が低くなったのって生き物の仕業なの⁈ ……もしかして未開の中央(セントラルアンノウン)の?」


 ローレンスが頷くと、アルメリアが顔を強張らせた。


「まってまって! この前の熊みたいなのに出くわしたりしたら、私何もできることないんだけど⁈」

「安心しろ。あんなデカブツを相手にするわけじゃねえ。犯人の目星はある程度ついてんだ。それに、初任務ということで、頼れる助っ人も呼んでおいたからよ」

「助っ人?」


 上流に向かって走り続けていると、川辺に停めてある大きなキャンピングカーが目に留まった。その中から出てきたのは、


「! ヴォルター‼」

「……⁈」


 アルメリアの嬉しそうな声に、ビクッと体を震わせるヴォルター。

 そして、


「……」

「ちょっと⁈ 何で車の中に引っ込むのよ⁈」


 すぐさま車の中に戻り、カーテンを閉めてロックをかけられた。

 呆れた様子で降りてきたローレンスが、ヴォルター強引に引きずり出してから、アルメリアの初任務がスタートするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ