↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
マリベル・ノーラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/53

8 進んだ一歩

デトリス家から使者が来たのは、宿に滞在してから2週間も経過していた。

「返事を持ち帰るように言われましたので、待たせていただきます」

使者の言葉で、私は手紙を開く。

待ちに待った手紙はアーサー様からではなく、彼のお姉様からのようだ。

読み終えた私は困ってしまってルルカを見た。

「どうされました?手紙には何と?」

優しく尋ねてくれるルルカに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「ルルカさん、アーサー様はこの国にいらっしゃらないって」

アーサー様のお姉様の手紙には、謝罪が認められていた。

手紙の宛先がアーサー様だった為、昨日まで家人は誰も手紙を読んでいなかった事。

アーサー様の帰国予定が1週間過ぎた為、已む無くアーサー様宛の手紙を読んだ事、それで私の事情を知って待たせてしまって申し訳ないという事、帰国まで待つ予定なのか?などが書かれていた。

私はルルカに手紙を見せた。

その間に今後どうしようかなと考える。

アーサー様はどの国に行っているのかは、その手紙には書かれていなかった。ただ帰国と書かれているから、王国内ではない事だけは分かる。

いつ帰ってくるのか分からない人を、ずっと待ち続ける訳には行かない。そんな余裕もないし、既に滞在費をルーベンス様の好意に甘えている状態だ。

だけど、私にはアーサー様以外頼れる人がいない。そもそもアーサー様にすら頼っていいのかも分からなかったのだ。

私が物心付く前に亡くなったお母様は、他国の人だと聞いているけれど、どの国なのかすら私は知らないのだ。

(お父様、お母様⋯⋯私どうしよう)

もうハスビス子爵領にも帰れないし、帰るつもりもない。子爵家で私を可愛がってくれた子爵もあ(・)の(・)馬車事故で父と共に亡くなっているのだ。

だから子爵家も頼れなかった。

私が思い悩んでいたら、手紙を読み終えたルルカが私の背を撫でてくれた。

「マリベル様、ルーベンス様の所へ行きましょう」

「⋯⋯でも、ご迷惑を⋯」

躊躇する私にルルカは首を左右に振った。

「躊躇う必要はありませんよ。寧ろこの状態でマリベル様をこの地に置いて帰っては、私が叱られます。一度このアーサー様のお姉様にお会いして事情を話されてから、ルーベンス様の所でアーサー様からの連絡を待つのは如何ですか?そうすれば今回のようにすれ違うこともないですし、アーサー様がマリベル様の希望を叶えてくださらないなら、断りの手紙も来る事でしょう」

ルルカにそう言われて、そうだったと思い出した。

アーサー様と私は会ったことがないのだ。はじめから会えないかもしれないけれどと、思いながらこのデトリス領に向かったのだった。会ってもらえなかったり、会っても希望を叶えてもらえなかった時は、ここで仕事を見つけてお金を貯めてから、小さな土地を買ってアメルースを育てるつもりだった。

思いがけないルーベンス様との出会いで、他者の親切心を受けて、当初の覚悟を忘れてしまっていた。

その事を思い出した私はルルカに向けて首を左右に振った。

「ルルカさん、私はこのデトリス領でアーサー様を待ちます。元々希望が叶わなかった時はそうするつもりだったんです。ルーベンス様や奥様、ルルカさんにはとても親切にしてもらって感謝しかありません。でも私はこれ以降も一人で生きていかなければいけないんです。だからルーベンス様にこれ以上甘えるわけにはいきません。お父様への恩は充分に返してもらいました。だから、ルルカさんともこれでお別れです。本当にありがとうございました」

「マリベル様⋯。分かりました、マリベル様の意思を尊重いたします。ですが、アーサー様のお姉様とお会いする時、付き添わせて下さい。あなたがアーサー様を待つ間の仕事など、ちゃんと行く末が安心できるものでなければいけませんから」

「大丈夫ですよ」

「大丈夫ではありません。マリベル様はまだ成人前で、本来なら大人の保護下にいなければならない年齢なのですよ」

「でも⋯」

ルルカは、それ以上は譲ってくれなかった。

結局、私は折れた。

ルルカに付き添ってもらって、私はアーサー様のお姉様とお会い出来ないかと、手紙を書いて使者に託すと、お姉様からの了承の返事は矢のような速さで届いた。

明日、アーサー様のお姉様にお会い出来る。

止まっていた時間が、少しだけ目的に向って進められた様に感じて、安堵した私は暫くぶりに夢も見ずに寝入った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。