55 進んだ一歩
狼藉を働いた点数稼ぎの騎士達を、王都の別の騎士団が迎えに来たのは、彼等がデトリス領に来て2週間後だった。
滞りなく引き渡しは終わって、私はホッと安堵する。彼等は騎士の資格を剥奪され、帝国に送られることになったようだ。大臣のユセフ様がそのようにしたのだと私宛の伯父様からの手紙に書いてあった。
肝心のユセフ様の私宛の手紙には「然るべき、行いました」だけだった為、彼のこの言葉には色んな意味が含まれるのかと、今後の帝国の魔法に関してのアレコレが、とても不安になったのは、私の心の中で一応留めておくことにした。
それからも私の土魔法で行う土壌作りは続けられていく、そろそろいいかなと思った頃に、伯父様が帝国からロイドを連れて再びオルデイック王国にやってきた。
いよいよアメルースを育て始める日が来た。
薬師達を集めて、先ずはロイドの紹介をする。
「エーリヤ帝国から来国されたウェスガル伯爵家のロイド様です」
私の言葉でロイドも皆に自分の自己紹介をする。彼は貴族ではあるけれど、平民との距離はとても近い。
伯父様が薬師として平民達とも一緒に働いているのを、幼い頃から見てきたからかもしれない。
薬師の一人一人と握手を交わし、アメルースを育てる以外の畑を、薬草で埋め尽くしてくれた彼等を労っていった。
これからアメルースなどの魔草について彼等に話す事になる。
「皆さん、ここまでアメルース以外の薬草を各自で育ててくださってありがとうございます」
私が何を話し始めるのか、アメルースをこれからどうやって育てるのか、期待に目をキラキラとさせている薬師達。
私は5人の薬師の顔を一通り見つめてから、アメルースの秘密を話した。
アメルースが魔草である事。
大陸には魔草は数種類ある事。
そしてそれは魔力によってしか育たない事。
アメルースは“土の魔力”で満たされた土壌でしか育たない事。
私の言葉に、薬師達はなぜ魔法契約をしたのかという事を初めて理解したようだった。
そして私は土の魔力にも2種類あることも告げる。
「では、“魔力枯渇病”にも種類があるという事ですか?」
質問をしたのはユーリスだった。
私は少し首を傾げてから、首を左右に振った。
「魔力枯渇病に種類があるのではなく、原因に違いがあるのです。ただ、この研究はまだ途中で、その原因の一つを先日発表させて頂きました」
皆は薬師なので、オルデイック王国に帝国からアメルースに関しての発表を聞いている。私が、原因の一つだと発表した事も漸く理解してくれたようだった。
やはり、中途半端に発表すると弊害が出るのだなと、私の方も理解することになる。
「私は土の魔力を持っています。私の魔力は“白”と言われるものです。そしてこちらのロイドは“黒”を持っています。ここから離れてまだ手を付けていない場所に今日から魔力を流してもらいます。そして、2つの場所で育ったアメルースは決して混ぜないでください」
これから先、アメルースを使った薬の研究で2つを混ぜてみるという実験もすることになるかもしれない。だけど今の時点では、まだその研究が出来る準備は整っていない。
アメルースは収穫してから、あまり長く効力を保てない。
直ぐに薬を作らないと意味がない魔草なのだ。
これからも、沢山の研究をしなければならない植物だ。
研究で色々と解明されれば、もっと使い勝手の良い薬草になるかもしれない。
それは今後の研究次第だ。
お父様の目指していた、お金の心配をせずに“魔力枯渇病”の治療が出来るようになるには、まだまだ先は長い。
だけど今日、またその夢が一つ進んだ気がして、私はお父様に報告するように空を見上げた。




