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淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
デトリス領

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53 ヘレンの子供 ③

「先程、狼藉を犯した騎士の供述を聞いたわ」


マーガレット様はこちらに来る途中の馬車の中で、合流したデトリス領の騎士に報告を受けたらしい。


「あの人達の目的はただの点数稼ぎだったわ」

「点数稼ぎ?」


私が首を捻っていると、マーガレット様は額に手を当てながら首を振っている。王都の騎士達にとても呆れているようだった。


「公にされていなくても、一部の者は何があったか知らされているわ。でもその情報は中途半端みたい」


マーガレット様が言うには、ギカンの罪は知っていても、帝国が裁くという密約は知らない者。密約は知っているけれどギカンの罪を正確に知らない者。密約も知らないしギカンが処刑されたことしか知らない者など、あの場に来た10数名は情報が統一されていなかったらしい。しかも私が対面して話した“あの一人”だけが、帝国で裁くという密約があった事を知っていたそうだ。

だけど⋯その隣の騎士の方が上司だったらしい。


「ユーリスはともかく、乳母の話を聞いた私は、騎士団の暴走もあるかもしれないと思ったの。だから一応ユーリスにはその危険性もある事は伝えていたわ。その時は、直ぐに私に知らせるようにと執事達には周知していたのだけど。まさか、私を通さないという暴挙までは計算出来なかったの。私もまだまだ甘いわね。不安にさせて申し訳なかったわ」

「いえ、マーガレット様のせいではありません。厄介事を抱え込んで来た私の責任です」


ユーリスがマーガレット様に頭を下げているけれど、騎士の点数稼ぎの意味が分からない私は首を傾げたままだ。


「マーガレット様、点数稼ぎと今回のユーリスの捕縛をしようと試みた事は、何か関係があるのですか?」

「あぁマリベルは帝国でしか法律を学んでないし、私も領主でなければ知らなかったかもしれない事なのだけど、オルデイック王国の王都にある騎士団は、いくつかに分かれているの。そして、一番活躍している所が、オルデイック王家の側近くに召し抱えられる騎士団になるの」


つまり、沢山ある騎士団の中でも、最も多く活躍した騎士団が、王家の覚えもめでたい騎士団になり、王家の護衛などを担う花形騎士団になるのだそうだ。

その評価が点数制度らしい。


「そもそもが本来ならヘレンは連座で罰を与えられる所を、目溢しされて修道院二行ってるわ。それだけでも騎士団では不思議に思っていたらしいの。今だから分かるけれど、きっとマリベルの名を出さずに罰を下した後は、王家が引き受けたのでしょう?」


マーガレット様に聞かれた私は、その辺は大臣のユセフ様にお任せしたので、報告は「然るべき、対処をした」としか聞いていなかったのだと答えると、漸く合点がいったようだ。

ヘレンを修道院に入れたあとの事は、ユセフ様は王家に委ねた。王家はおそらく騎士団に委ねた。

本来なら罪人のヘレンの事は、修道院が主流になるはずなのに、リチャードの乳母を修道女でもない乳母に預ける事にした事自体がおかしいのだとマーガレット様は感じたそうだ。


「リチャードを乳母に世話をさせて、そのうち外に出るようにして、リチャードを罪人の孫として捕縛することで、点数を稼ぐつもりだったみたい。だけど、騎士団はまさか乳母が、そんなにも早く外にリチャードを連れ出すと思わなくて、後手に回ったらしいわ」


リチャードを捉えたところで、点数になどならない。その事に気付いていたのは一人もいなかった。

一度簡単に逃げられてしまったと考えた騎士団は、だから居場所を突き止めた時、領主を無視して突入したのだという。


「でも、一人知っている人がいましたよね」

「あの人は宰相の息子らしいわ、おそらく父親から何かしら聞いていたのでしょう。でもマリベルは直ぐに帝国に帰っていたと思っていたみたい。あの時宰相も罰せられたでしょう。だからそれ以降の情報が入らなかったんじゃないかしら」

「オルデイック王国の騎士は皆、そんなにも情報が曖昧なのですか?そしてそんな曖昧でも簡単に罪を問うのですか?」


帝国では考えられない、騎士の在り方に私はとても憤った。

点数稼ぎで子供の命を簡単に奪ったり、捉えようと画策したり、とても信じられなかった。


「私兵と王都の騎士は違うけど。この国は昔からそうだったから」


マーガレット様が、ポツリと呟く声が悲しそうで、過去にも何かがあったのかもしれないと私は思ったけれど、それよりも今は、騎士達の処遇に関して考えなければならない。


「マーガレット様、騎士達は軟禁するように言っていましたが、今はどうされてますか?」

「そのままよ、でも開放するように叫んでいるそうだけど」


相変わらず表情を出さないユーリスに私は聞いてみる。


「ユーリスはリチャードを引き取るつもりはあるのかな?」


私の問いかけにユーリスは首を振った。


「成り行きで連れてきてしまったけれど、僕にはリチャードを育てるつもりはない。ただ、どうしていいかわからないんだ」


私が死んだと聞かされて、何も感じられなくなったと話してくれたユーリスだったけど、そんなユーリスが自分の幼い頃とリチャードを重ねて、デトリス領まで連れてきてしまった。それは、何かをユーリスがリチャードに感じられたからではないのだろうか?


それが何かは、きっとユーリスにも分からないのだろう。

そんなユーリスを見つめる私に、ヨリエールがある提案をしてくれた。





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