↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
デトリス領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/55

48 約束

「ユーリス⋯おはようございます」

昨夜ベッドの中で繰り返した朝の挨拶。

それは、今日のところは無駄に終わってしまった。結局いつもの朝の挨拶になってしまって、そのあと練習した言葉も私の口からは出る機会をなくしてしまう。

イレギュラーを想定して、それ以外の言葉の練習をしなかった事を、私は昨夜の自分を後悔しながらユーリスの隣にしゃがんだ。

「おはようございます、マリベル様」

(⋯⋯⋯アレッ?)

ユーリスもいつもの挨拶だった。

言葉はそうだったのだけど、何だかいつもと違うように聞こえた気がする。これって私の受け止め方の違い?

正解が分からない。

再会したユーリスは、必要以上に口を開かず、表情筋があまり仕事をしない、ほぼ無表情な人に変わっていた。

だけど⋯。

今日の挨拶にはそこに少し温度が加わっているような気がしたのだ。


伯父様の好意で、折角話すきっかけを見つけてくれたのだからと、そこから話を広げてみよう!そう思って、ベッドの中でも、明日はいつもと違う明るい挨拶を私からしてみようと練習してみた。

思えば、昔のような明るいユーリスに会いたいと思い続けていたけれど、私の方もきっと変わってしまってると思う。

マーガレット様やお祖父様達、私の今の周りにいる人達は、お父様が亡くなったあとに出会った人たちばかりで、それ以前の私を知るのは、ヨリエールだけだ。でもそのヨリエールに至っても、私の4歳になった頃には、あの薬草園から去っていた。

だからユーリスと出会った頃の私を知るのは、私とユーリスしかいないのだ。

あの頃に⋯とばかり考えている私こそ、ユーリスにも違和感があるのかもしれない。


ユーリスにばかり昔を求めてしまっていた私に、伯父様が助け舟を出して話すきっかけの例を作ってくれたのに⋯。


だけどひょっとしてユーリスも昨日の伯父様との会話で何か変化があったの?

ユーリスの朝の挨拶に温度を感じた私は、彼の俯く横顔に、再度チャレンジしてみようと思った。


「光の魔力⋯変わらないね」

「⋯⋯でも、肝心な時に役に立たないのは相変わらずだ⋯⋯です」


私の問にユーリスの返答。

身分差から最後の“です”の付け加えが、少し悲しく思えたけれど、返答があの頃を擬えているようで、うっかり涙が溢れそうになった。

偶然かな?

でも⋯⋯。


『ゆうりすのまほうきれい!きらきら』

『でも役立たずなんだ。母様を救えなかったし、ぼくだって病気になったから』

『うーん、でもわたしのここはあったかになったよ。ふふふ』


昔転んだ私の膝にユーリスが光魔法で治癒を施してくれた時の会話だ。

治癒の光魔法が、怪我だけに有効な事を知らなかった私は、ユーリスの返す言葉の意味をその時は理解していなかった。

きれいと褒めたのに、どうしてそんな悲しい顔をするのか、分からなかったのだ。

怪我にしか効かないと、病気に効くのは薬なのだとその時私に教えてくれたユーリス。お父様のように薬師になるんだとその時夢を語ってくれた。

私はたしか、そんなユーリスを応援すると言ったはずだ。


懐かしい会話をユーリスの言葉で思い出した私は、意を決して勇気を出してみた。


「ユーリス、私あなたに聞いて欲しい事が沢山あるの。だめかな?」

「だめじゃない⋯です」


付けられる“です”にやっぱり寂しい気持ちになるけれど、それでも話す機会が得られた事は嬉しい。

大人な私達は、もうゲンマンはしない。

けれど、その日の夕食を一緒にする約束を交わして、早く今日の書類仕事を片付けてしまおうと、私は喜び勇んでデトリス家へと戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。