47 助っ人
すくすくと育つ小さな緑を、毎朝並んで眺める。会話は殆ど無く時間は毎回5分ほど。それでも、ユーリスとのその時間があるだけで、私は毎日幸せな気持ちで1日を過ごせていた。
薬師の魔力は概ね水の魔力が主流だ。
中には緑の人もいたけど、ユーリスは水と光を持っていた。
光の魔力も珍しいけれど、土よりは持っている人が圧倒的に多い。光と闇は治癒の魔法が使えるのだが、魔力量によっては教会から聖女の称号を与えられる人もいる。
光の魔力で聖女が誕生、その事からも分かるように、男性で光を持つ人は珍しいのだ。
ユーリスはどうやら自分に与えられた区画で、光と水と薬草に与える魔力を分けているようだった。
朝のユーリスとの短い時間。私の毎朝の楽しみの時間に今日はお邪魔虫が居た。
それは伯父様だった。
薬師達は、その日の業務報告を必ず行っているのだが、その日誌を見た伯父様が、ユーリスの光魔法に興味を持ったのだ。
土や闇ほどではなくても、光の魔力も充分に珍しい。しかも、ユーリスは他の人よりも魔力量が多い上に、複数の魔力の性質も持ち合わせている。
そんなユーリスが育てている薬草は、他の薬師達の区画よりも成長が早いのだ。
それに、通常植物に与える魔力は一種類だ。掛け合わせると、場合によっては枯れてしまったりもする。それなのにユーリスは、光と水の両方を掛け合わせて育てたりもしている。今の所枯れる兆候は全くない。
「君がユーリスか」
「はい、ウェスガル小伯爵様」
「カーセルでよい。ほうっ!なかなか良い育ちだな」
私の幸せな時間に、伯父様は何の兆しもなく突然介入してきた。今私の表情はどうなっているのか⋯。鏡がないから見えないけれど、あまり良いとは自分でも思えない。
ユーリスと会話ができる伯父様に、嫉妬して醜くなっているに違いない。
私はそっと伯父様から視線を外した。
伯父様から話しかけられたユーリスは、興味のある質問を投げかけられたのか、いつも私と二人でいる時とはまるで違う、饒舌なユーリスになっていた。
無口で無表情。
それが大人のユーリスの印象だった私は、それを見て唖然とした。無表情は変わらないけれど、その口から溢れる言葉が多すぎて、私は益々悔しくなってしまった。
(ずるい伯父様⋯)
貴重なユーリスとの時間を邪魔しただけでは飽き足らず、ユーリスの饒舌な話まで⋯。
それを彼から導けなかった私は、グッと拳を握りその場を後にした。
その日の夕食時、伯父様から帝国に一時帰国することを報告された。この国の薬草園に協力してもらう為に、ロイドを迎えに行くのだそうだ。
今朝の事があった私はホッとした。
(明日は邪魔されない)
なんとも浅慮な私は、今朝の事で伯父様を邪魔者認定してしまっていたから、明日はそんな事がないのだと単純に喜んだ。
「何だ、マリベル嬉しそうに。とりあえず会話の幅を広げたから、少しは話しなさい。薬草園の為に、なるたけ急いでロイドを連れてくるから、あまりゆっくりは出来ないぞ。話したいことや聞きたいことは、早めに聞いて彼との憂いを取り除いておけよ」
嬉しいとしっかり顔に出ていたようで、伯父様は私を揶揄うようにそう言った。でも後半の言葉に私は目を丸くする。
どうやら伯父様は、私とユーリスに会話ができるきっかけを作ろうとしていたようだ。
(邪魔者にしてごめんなさい)
私は心の中で伯父様に謝って、その日謝罪の意味も込めて、神官の資格を持つヨリエール様と一緒に、伯父様の道中の無事を祈って帝国へと送り出した。




