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淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
オルデイック王国

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40 会いたい

ユーリス視点

「誰が来られたって?」

ヘレンとの離婚はまだ書類提出に至ってない為、僕はあの話し合い以降も薬草園でアメルースの様子を見に行っていた。

そんな僕に屋敷で働く使用人から、先触れなしの来客の報告があったのだが、その相手は僕の全く予想しなかった人物だった。

「はぁー」

仕方無しに立ち上がる。服に付いた埃を払いながら屋敷へと戻った。

今更何なのだろう?

ヘレンと離婚してもケニトス公爵家(うち)に戻るつもりはなかった。ノーラ男爵家の籍を抜ければそのまま平民になる覚悟もしていたというのに、まさか?

嫌な考えが脳裏に浮かび、それを消すように空中を手で払った。


「ケニトス公爵(父上)こんな所まで態々足を運ぶなど、何か御用ですか?」

「ユーリス⋯⋯」

別に嫌味のつもりではなかったが、父上はそう取ったようだ。ただ父上は私に何かを言う前に、同行者を私に紹介した。

「こちらは宰相殿だ」

父上の言葉に頭が真っ白になった。

ここに来て義父の罪が重いものなのだと理解した。罪の如何によっては罰は一族郎党に及ぶ。ヘレンとの離婚の話が進んでいた事から、自分の命の刻限にまで思い至らなかったのは、僕は随分間抜けだと思える。

「お初にお目にかかります、ノーラ男爵家の婿ユーリス・ノーラにございます」

僕は直ぐに宰相に跪いた。

彼が告げるのは、僕らへの処罰の話だろう。僕はマリベルの所へ行ける可能性を想像して、体が高揚してきた。

アメルースの行く末を見届けられないと、宰相の訪いを知った時は、一瞬頭が真っ白になったが、よく考えれば天上(マリベルの所)に行くのが早くなるという事にも直ぐに思い至ったから、僕は絶望する必要はなかったのだ。

父上の訪いで、ノーラ男爵家から別の家に婿に入れと言われる可能性を考えたが、それよりもずっといい。

「今日は、ユーリス殿に話があってきたのだ」

宰相殿に言われて、僕は背筋を伸ばした。間違いなく、何か沙汰が出たのだろう。

どんな罰でも僕は粛々と受け入れよう。

椅子に座るように言われて、跪いていた僕はソファへと戻り、しっかりと受け止めようと、もう一度居住まいを正した。

「ノーラ男爵家は、その名を王家に返上された。よって、男爵家の所有していた薬草園も王家に返上されるに至った。この屋敷に関しては、元々前ノーラ男爵の所有物だが、正当な持ち主が売りに出す事を決めたので、整理せよとの陛下の言葉だ。1ケ月以内にどちらからも立ち退くように。以上だ」

宰相の言葉に僕は疑問が湧く。

「宰相殿、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」

「な、ユーリス!」

父上が慌てて僕を止めるが、僕は気に留めなかった。

本来なら陛下の言葉に対して、質問など無礼千万の行為だが、どうしても僕には宰相殿のいくつかの、言葉尻が気になってしょうがなかった。

「いい、ケニトス公爵。この通達が私の宰相としての最後の仕事だ。私が知る事は何でも答えよう。まぁ広く通達するものばかりしか、私も知らないがな」

最後?

宰相殿は引退するのか?

まだ父上と同じ位の年齢に見える宰相の引退は、少し早いのではないかと思った。

「貴殿は、既にケニトス公爵家に籍を戻されている。宰相職もなく爵位も降爵された私は、殆ど君と立場は変わらない。畏まる必要はない」

「宰相⋯」

宰相の言葉に対して父上が気の毒そうに、彼の肩に手を置いている。何があったのか分からないが、宰相も何か失態を犯したらしいことは分かった。

何だろう?

疑問も湧いたが、僕が既に公爵家に籍が戻されていることも詳しく聞きたい。だが、それよりも先の疑問に僕は触れた。

「ノーラ男爵位の返上と先程お聞きしましたが、剥奪ではないのですか?」

義父が何かの罪を犯して捕縛されたのなら、爵位は返上ではなく剥奪のはずだ。ただ単に表現の違いというには天と地の差だ、違いすぎる。

僕の質問に答えたのは、宰相ではなく父上だった。

「ノーラ男爵家の正当な後継ぎより、爵位の返上がされたのだ」

「⋯⋯⋯?」

父上の言葉が、僕の頭にしっかりと入っていかない。正当な後継ぎとは誰だ?

「⋯⋯どういう事ですか?」

「逮捕されたギカンという男の罪は、戸籍詐称による爵位の乗っ取り。しかも彼は当時平民だった。よって平民が貴族の爵位を得る為に行ったその行為は、貴族を害したものだ。よって彼は陛下より死罪の沙汰がおり、捕縛されたその日に確定して執行されている」

「は?執行⋯?」

早すぎる処刑にも驚いたが、それが何一つこちらに聞かされぬままというのも驚いた。

2人が来訪されてから、僕は驚きの連続なのだが、ここに来て頭に浮かんだのは突拍子もない考えで、体が震え始めた。

まさか?

まさか?

⋯⋯⋯まさか!

「もしかして⋯マリベルは生きているのですか?」

絞り出す僕の言葉に、父上が苦しそうに頷く。

マリベルが生きていた。

体が震えるほどの喜びと共に浮かぶ数々の疑問。

僕は⋯。

僕は⋯。


マリベル⋯僕は君に会いたい。




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