34 魔力鑑定書
応接室では、ウェスガル家の皆がお母様とお父様との出会いや、仲睦まじい姿、その末に私が生まれた時の模様。それらをヨリエール様が聞かせてくれる度に、安堵しているようだった。
お祖父様や伯父様は勿論のこと、この屋敷で働く使用人の半分は、お祖父様達がスーデン王国を出る際に付いてきてくれた人達で、王国の時から引き続き仕えている人たちだった。当然お母様のことも幼少の頃から知っている者もいて、侍女頭のエーリアは先程からハンカチで涙を押さえていた。
執事のスルトも目頭を摘んでいる。
みんなお母様をとても心配してくれていたから、国外追放になっていてもお母様が決して不幸だったわけではない事を知ってもらえて良かったと私は思った。
お母様の事を話していたヨリエール様だったけど、一通り話し終えたようで、彼女は胸元から丁寧に折られた書面を2枚テーブルの上に置いた。
「ラスティ様とアスベル様は、オルデイック王国の戸籍上では正式な夫婦ではありませんでしたが、私の立ち会いのもとに教会で誓われました。こちらが宣誓書です。アスベル様のお名前はきちんと旧姓でサインされています。
そしてこちらが、マリベル様の魔力鑑定の結果です。こちらは複写になります。水、火、土の複数魔力の持ち主であると私の方で教会に提出しています」
ヨリエール様は書面の説明をしてくれる。
そこで私はずっと疑問だった事を尋ねた。
「私の土の魔力は、大陸でも珍しい魔力だと聞かされていました。お父様たちが秘匿していたことも。でもオルデイック王国や教会の方では、問題にならなかったのでしょうか?」
私の質問にヨリエール様はニッコリと笑って答えてくれた。
「マリベル様、教会は大陸全土に広がっていますので、必ずしも鑑定した場所に提出する必要はないのです。アスベル様の魔力の事があったので、マリベル様の魔力の鑑定は、教会ではなくハスビス子爵家で行いました。領主様には何かの折に気にかけてもらう為、知っていてもらわないといけなかったのです。その時はアスベル様が儚くなった後でしたから。ハスビス子爵には全てをお話した上で、子爵家の一室をお借りして鑑定致しました。そして、私はその後、アスベル様が安らかに眠っていただけるように、ハスビス子爵領を出て巡礼の旅に出ました。その途中で大聖堂の方に直接鑑定書は提出いたしましたので、オルデイック王国は、未だに知らない事でしょう」
堂々と隠蔽工作をした事を告げるヨリエール様の笑顔は、とてもそんな大それた事をしたようには見えないほど、清々しく私には見えた。
彼女が本当にお母様を慕ってくれていたことが伝わる。
その時私は、今わの際に私の頬を撫でて、健やかに育って欲しいと願ってくれたお母様の言葉が不意に思い出された。
「こちらの鑑定書とその場で魔力の性質を鑑定すれば、マリベル様が、マリベル・ノーラ様であったことは明白です」
きっぱりと述べるヨリエール様の言葉に、私は心から感謝した。
いつも読んでいただき感謝です!
ありがとうございます( ᴗ͈ˬᴗ͈)
次話からは再びユーリス視点になります。
よろしくお願いします




