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淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
オルデイック王国

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35/50

33 両親の出会い

「今日は、もう一人一緒に来てくれたんだけど、そちらは皇城に先に行ってるよ」

「神官様ですね」

私の問にアーサー様は深く頷いた。

私は、エーリヤ帝国(こちら)に来てからずっと、夢に向かって邁進するのと並行して、私がマリベル・ノーラであるという証明とオルデイック王国で15歳間近まで生きていた事を明らかにする為に、お祖父様達に協力してもらって動いていた。

その為にアーサー様にはハスビス子爵領を走り回ってもらっていたのだが、先日私が5歳の時に、魔力鑑定をしてくれた神官様を見つけたと手紙をもらっていたのだ。

これで、土の魔力を持つ私が、オルデイック王国にいたという証明が出来る。

一緒に働いていた薬師の人は、ギカン側の人だから証人になるには信用度が低い。証言すると言っても、掌を返されるのがオチだ。

「俺も、証言するよ。平民の俺の言葉が陛下に届くかわからないけど⋯」

「ゼス⋯ありがとう」

私がマリベル・ノーラが14歳まであのハスビス子爵領にいたという証明が出来れば、ギカンの男爵継承が不当な物だと訴えられる。

私はノーラ男爵という爵位を返してほしいわけじゃない。

ただ、お父様とハスビス子爵を手にかけたかもしれないギカンに渡したくないのだ。

そして死んだことになっているマリベル・ノーラを生き返らせたい。

だってあの場所で、私は14年間生きていたんだもの!

それをなかった事にはしたくない。

そして願わくばあの薬草園の土を一握りでもいいから、返して欲しい。あそこにはお母様の土の魔力が僅かだけど眠っているから。

今の私なら、お母様の魔力を僅かでも感じられるはず。



神官様が、皇帝エンリストとの謁見を終えて、ウェスガル家に来訪されたのは、夕刻になってからだった。

応接室で対面した神官様は、私の記憶に残る人だった。

「ヨリエール様?」

「はいそうですよ、マリベル様」

まさか彼女が神官様だとは思っても見なかった。私は神官は男性だと思い込んでいた。

銀髪の長い髪を胸元まで伸ばしている彼女は、私の知る頃は肩くらいの髪の長さだった。

「ヨリエール・グランドスだったか」

彼女の登場に驚いたのは私だけではなかった。お祖父様も伯父様も驚いていた。その事に私も驚かされる。

「まさか⋯アスベルがオルデイック王国に行ったのは⋯」

口元を手で隠すお祖父様はかなりショックを受けているようだった。

そして、彼女の口から私達はお母様がお父様と出会った経緯を聞かされる。

アーサー様もお母様の出自は聞いていたけれど、2人の出会いに関しては照れ屋のお父様は“偶然”としか言っていなかったそうだ。

「あの運命の日、アスベル様は帝国とスーデンの国境で馬車を下ろされるはずでした。私は小公爵夫人からそう聞いていて、その付近で待っていたのです」

昔語りをするヨリエール様は、涙を堪えるように話し始めた。

私にとっての彼女は、私が幼い頃に薬草園で働いていた人だ。

いつの間にか姿が見えなくなって、お父様に聞いた時、彼女は辞めて旅に出たのだと聞かされていた。

まさか神官様だとは思っていなかった。

「私は幼い頃にアスベル様に命を助けて頂きました。教会に預けられ神官となってもその御恩は決して忘れることなどできません。しかも冤罪と分かっているのに、手を拱いていていいわけありません。ですから何処までもお供をしようと思っていました。ハーザー公爵も小公爵様もご不在の中、身重でありながらも小公爵夫人が手を貸して下さいましたので、何とか国境で待ち伏せは出来たのです」

淡々と語る中にロイドのお母様の事に触れられた時、伯父様の顔には悲しみが浮かんで見えた。

お母様が婚約破棄をされた時、お祖父様と伯父様は当時のスーデン国王とともに、国外の王国の慶事に招待されて、スーデン王国内に居なかったそうだ。

お祖母様と当時ロイドを身に宿していた伯父様の奥様は、国内に残っていたけれど、2人の知らない間に冤罪は確定してしまっていたそうだ。

知ったときには国外追放は王太子の名の元に決定して執行された後だった。

お祖父様達は帰国後、お母様の冤罪を晴らしたのだけど、その冤罪に当時の王妃も加担していたのに、それを罰しない国王に愛想が尽きて、国を出る決断をしたそうだ。ただ、伯父様の奥様でありロイドのお母様は、王妃様の生家の血筋でもあって、彼女はスーデン王国に残る決断をされて、2人はその時離縁したそうだ。

「帝国内に潜伏すれば、きっと公爵様が助けてくださるはずだと、2人でそうするつもりでした。ですがあの王太子は、アスベル様に刺客を放っていたのです。私達は襲われ逃げ延びるには、私の魔力を放出するしかありませんでした。その時辿り着いたのが、ハスビス子爵領だったのです。私が以前訪れていたから、あの場所に飛(・)ん(・)だ(・)の(・)は(・)本当に偶然だったのでしょう」

神官の修行の際に、ヨリエール様は転移の魔法が使えるまでになっていたらしく、その時お母様と逃げる為にその力を使ってくれたらしい。

だけど転移の魔法は、大陸でも数人しか使いこなす人はいないと聞いている。それほどまぼろしの魔法で、私も実際に転移の魔法を使える人に会ったのは初めてだった。

何とかハスビス領に着いた2人だったけど、魔力を放出してしまったヨリエール様は、その時昏睡状態に陥ってしまったそうだ。意識が戻った時ヨリエール様はお父様の家で寝かされていたそうだ。

その時お母様に聞かされた経緯は、意識不明のヨリエール様を抱えたお母様を助けてくれたのがお父様だったそうだ。

薬師だったお父様は、2人を自分の家に連れて帰って、衣食住を提供してくれたみたい。

「私が回復した頃には、もうお二人は既に惹かれ合っておいででした」

私の顔を見つめて、ヨリエール様は懐かしそうな顔をして、優しく微笑んでくれた。






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