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淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
研究者マリベル

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23 夢へ向かって

居住まいを正し、隣に座るマーガレット様を、私は真剣な目で見つめる。

私のその様子から、真剣さと何かを話す事を感じてくれたのか、マーガレット様の顔から表情が消えた。

これはマーガレット様が女神様ではなく、領主様になったときの顔だ。

それはこの1年近くで私が知ったことだ。

マーガレット様の顔を見て、私はその場で立ち上がった。

そして胸に手を当て深々と頭を下げる。それからその場に跪いた。

「マーガレット様、私は今からとても図々しいお願いをします。腹立たしく思うかもしれませんが、是非とも最後まで聞いて頂きたく思います」

本当はこのお願いはアーサー様にするつもりだった。

でも私の教育のことまで考えてくださるマーガレット様なら、叶わなくても決して無碍にはしないと思えた。

だから私はマーガレット様に話す。

「マーガレット様、私は私の父である前ノーラ男爵と同じ道を進みたいと思っています。私は薬師になりたいのです。そして、特に魔力枯渇病に苦しむ人が、お金を気にすることなく治療できるように尽力したいのです。それが私の夢なのです。先程マーガレット様は、私に学校を薦めてくださると仰いました。私は学問も学びたいですが、魔法も学びたいと思っています」

マーガレット様と私は、弟の友人の娘というだけの関係。本当に縁もゆかりもない他人。そしてそれが本当かどうかもまだ確証を得ていない人物。しかも名乗った名前は既に死亡していると判明したばかり。

怪しさ満点の私の図々しい願い。

なんとか言いたいことは言えたけれど、私の声も手も震えている。

マーガレット様は、どう思ったかな?

ここまで面倒みてやっただけありがたいと思えと追い出すかな?

言い終えた私は、マーガレット様の言葉が怖くて、伏せた顔を上げられなかった。

「マリベル、顔を上げなさい」

マーガレット様の言葉で、恐る恐る私が顔を上げると、私の両脇にマーガレット様の腕が入り込んできた。そしてそのまま私を立ち上がらせて、ソファに座らせる。

「跪かれていたら、話辛いわ」

そう言ったマーガレット様の表情はまだ領主様だった。

「マリベル、うちの領地の学校は領民が通う為に作ったものなの。だからここに住む者は誰もが無償で学べるの。あなたが学びたいならそこに通って学ぶといいわ。ただ魔法についてはあまり期待しないでほしいの。あくまで平民の通う学校だから基礎しか教えていないわ。あなただけを特別扱いはできない。それでもいいかしら?」

「はい!マーガレット様ありがとうございます」

私の魔法は独学だから、基礎を教えてもらえるならとても有り難い。

マーガレット様の計らいで、私は春になったら領内の学校に通える事になった。

午前中は仕事をして昼から通うのだ。

お屋敷で賄いを食べてから行けるので、お弁当の心配もしないで済む。

マインがいつも昼からいなかったのは、学校に通っていたのだと私は知った。

それを言ったらマインが驚いていた。

べつに隠しているつもりはなかったらしい。

一緒に薬草園で働いていた人に貰った、擦り切れるまで読んだ本達は、薬師小屋に置いてきた。本当は持って行きたかったけど、あまりにもボロボロだったから、持ち出せなかったのだ。

学校の話になったからだろう。

その日の夕食後、マインが自分の使っていたものだと言って、一年生用の教科書を持ってきてくれた。

中には沢山の書き込みがしてあった。

マインが真剣に学んでいたのがすごくよくわかる。

「これはマインの宝物じゃないの?」

「そうよ、だから入学したら返してね。それまでの予習用よ!マーガレット様が与えてくれたものは、メモ用紙だってあげられないわ!」

マインの言葉に苦笑しながら、私はその教科書でありがたく予習することにした。



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