↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
研究者マリベル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/47

22 あの日の目的

「結局事件性はあっても、犯人は見つからなかった、そしてそのまま有耶無耶なままで終結しているのよ」

「事件性⋯⋯」

私は、あの事故の時まだ7歳だった。

そして気がついた私には、事件の前後の記憶が数日分ごっそり抜け落ちていた。

馬車の事故にあって入院していたことも、その時診てくれたお医者様に聞いた事だった。

私にその前後の記憶が戻ったのはその事故の2年後。なんの前触れもなく、ある日突然思い出したのだ。

「あの時は、子爵様の薦めでお父様と一緒に陛下に謁見を申し込みに行ったんです」

ずっと黙っていたことをマーガレット様に聞いてほしくて、私は話し始めた。

幼い頃の私の記憶。

それは3人だけの話だから、あの事故が事件だったとしても、きっと私の話だけでは証拠にもならないだろう。それでもあの時、どうして王都に向かったのか、ちゃんと聞いてもらいたかった。


あの日の前夜、お父様が私に言った。

「マリベル、お城に行こうか」

「おしろ?」

「あぁ王様と王妃様がいるところだよ」

「おうじさまとおひめさまもいる?」

「王子様はいたはずだが、お姫様はいたかな?」

「ゆーりすは?」

「ユーリスは⋯お城にはいないな。王都にはいるかもしれない。公爵家だからタウンハウスを持っているだろう」

「ゆーりすにあいたい!だっておてがみこないの⋯」

そんな会話をして、王都に出かけることが決まった。子爵様が馬車で迎えに来てくれて、私達が乗り込むと、子爵様はハスビスの名誉とかラスティに濡れ衣だとか、息子がすまないとか言っていた。

そして、馬車の中で子爵様が私に謝罪した。

「ゴメンな、マリベル。これから窮屈な生活になってしまうだろう」

そう言って頭を下げたあと、私の手を握って自分の額につけていた。


「子爵様というのは前ハスビス子爵の事かしら?」

マーガレット様の問に私は頷いた。

「はい、そうです。本当に何度も謝っていました」

「それは⋯なぜだか分かる?」

「はい分かります」

私はそれから自分の魔力のことをマーガレット様に話した。

自分の魔力は複数の属性があること。

そのうちの一つが母から受け継いだもので、この大陸では珍しい“土”の属性であること。

それを父と子爵は秘匿してくれていたこと。

「あの時、王都に向かったのは、私の土属性の魔力を陛下に話して、私を保護してもらうためでした」

私の告白に、マーガレット様も2人の事務官、そしてレント、皆が息を呑む。

「土属性、まさか土魔法?」

「はいそうです。アメルースを育てるのに必要な魔力です」

皆が私を固唾を飲んで見つめる。

「私の力は、ハスビス子爵領にある薬草園では使われていません。あそこの土壌は母の魔力によるものです。ですが、その効力はいつか無くなってしまいます。今後も魔力を与え続けられるのは私しかいませんでした。でも⋯アメルースの薬が子爵様やお父様の知らぬところで高騰してしまって⋯」

あのときのことを思い出す。

馬車の中では、お父様が幼い私にもわかるように説明してくれていた。

アメルースの販売をお願いしたギカンが(馬車の中では親戚だと父は言っていた)子爵の息子と結託して、薬を高値で売っていた。

販売権をその親戚から取り上げても、あの薬草園は子爵領にある。

子爵の息子が背後にいるならば、販売元を変えても同じことが起こる。

だったら王家にアメルースを作ってもらった方がいいと子爵とお父様は考えたのだ。

お父様が爵位を授かった時はまだお母様が生きていた。あの時は子爵領も豊かではなかった。

だからあの場所が最適だとお父様は思って、土魔法を使う事を陛下に黙っていたのだ。その説明を幼い私にわかるように話してくれた。


「王家にアメルースを作ってもらうなら、土魔法の使える私の事を陛下に話さなければいけませんし、その話が何処から漏れるかわかりません。だから私をそのまま保護してもらうつもりだったんです。その向かう途中で事故は起きました」


全てを話した私をマーガレット様は再び抱きしめてくれた。

背中を擦ってくれて「大丈夫、大丈夫」と何度も言ってくれる。

話している途中から涙が滲んで来ていた私は、堪えきれず声を上げて泣いた。

お父様や子爵様の顔が頭に浮かぶ。

2人は、私を守るために王都に行くことになって、それで亡くなったように思っていた。ずっと申し訳なかったのに、それが仕組まれていたことかもしれないなんて⋯。


「間違いなく、現男爵と現子爵は関係しているわね。実の父親を殺めるなんて!」

「マーガレット様、憶測で言ってはなりません」

レントがマーガレット様を諌めるけれど、マーガレット様は首を左右にフルフルと振った。

「状況証拠は真っ黒じゃない!」

憤るマーガレット様は、そう言いながら私を抱きしめる。

「マリベル、よく話してくれたわね」

「マーガレット様⋯」

私は涙を手で拭って、続きを話さなければと居住まいを正した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。