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淡い恋は弾けて消えた  作者: maruko
ユーリス・ケニスト

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15/50

15 全ての始まりは⋯。

アズランは僕に宣言したとおり、歩きながらここについて話してくれた。

「ここはオルデイック王国の王都から北の方に位置する寄宿学校だ。別名北の修道院。メルキューラ学園にようこそユーリス!」

そう言って僕の顔を覗き込んで、アズランはニカッと笑った。

「修道院⋯」

「あぁ、別名な。まぁ生活していけばわかって行くと思うけど、外から見たら修道院でも、中はなかなか快適だぜ。外(・)で(・)差別の目の中で生きて行くよりもずっと自由だ」

明るい声で話すアズラン。僕は差別という言葉に引っかかった。

「差別?」

「ここに入る者は、みんな訳ありなんだ。それぞれが何らかの事情を抱えてる。お前の事情は俺は聞かされているけれど、本人が言わない限り普通はお互いにどういう境遇なのかは知らないんだ。まぁ10歳でもお前は聡いと聞いているから分かるだろうけど、俺も訳ありなんだよ」

アズランは、そうして大きな建物の中の一つに僕を連れて入っていった。

建物の中に入ると入り口に詰め所のような場所があった。その中にいる軍服に似たような物を着ている人と、アズランがいくつか受け答えをしてから鍵を渡されていた。

「おい、これはお前の部屋の鍵だ。マスターキーはこの詰め所にあるから、部屋にイタズラされたりなんかしないから安心していいぞ。それと、この人にちゃんと挨拶しておけ、寮長のダンさんだ」

ダンさんと言われた人は、僕を見て少し頭を下げた。

僕も慌てて頭を下げて、自己紹介をした。

「ダンだ、何か不便を感じたら教えてくれ」

少し低い声で、ダンさんは僕にそう言ってくれた。

詰め所の横には2枚扉があって、そこをアズランが開けると、中は白く大きな箱のようになっていて、1か所だけ赤い。

「その鍵をそれに差し込んでみろ」

言われたとおりに赤く点滅している場所に鍵を差し込むと、一瞬クラリと目眩がして僕は目を瞑った。

「ほら着いたぞ」

目を開けると先程まではなかった扉がそこに現れた。

扉を開くと長い廊下が続いている。

アズランと手を繋いだまま歩いて数歩。

705と書かれた扉の前に着いた。

「ここがお前の部屋だ、鍵に数字が書かれているだろう」

言われてよく見ると確かに705と書かれていた。

「公爵は奮発したな、お前の部屋最上階だ。裕福な家じゃなければ与えられないんだ」

アズランの言葉に僕は驚いた。

ケニスト公爵家は、オルデイック王国の4家しかない公爵家ではあるけれど、末席の公爵家で、決して裕福ではなかった。

それなのに、こんなに魔法を駆使した建物の最上階に住むほどの財力なんてあるはずがないのだ。何かの間違いかと思ったけれど、それは中に入ってアズランからこれまでの説明を受けて理解する事になった。

僕の部屋は、ハスビス子爵家の客室よりも広く、しかも続きで2部屋もあった。

もう一つの部屋は寝室になっていた。

アズランの話によると、彼の部屋は一部屋で寝室が別にはなっていないと言っていた。

そして、彼から僕のこれまでの境遇を聞かされる。

「ユーリス、お前の罹った“魔力枯渇病”には途轍もなくお金がかかるって知ってるか?」

名呼びの許可を僕に取ったあと、アズランはそう言って話し始めた。

「ソフィア様が亡くなった時、ケニスト公爵家は破産寸前だった。それに慌てたのが王家だ。歴史が浅いと言っても嘗ては王女が降嫁して成り上がった公爵家だったしソフィア様の事もある。王家は王国に4つしかない公爵家を破産で没落させるわけにはいかなかった。しかもお前はその時まだ完治もしていない。これからもお金はかかる。そこで王家は王命を出した。ケニスト公爵に再婚を命じたんだよ。王国一の商会を持つ家との再婚をね」

父上が再婚した経緯を聞いた僕は、とんでもなく驚いた。そして同時に、父上を少しばかり恨んでいた僕は申し訳ない気持ちになる。何もかも僕の病気のせいじゃないか!

父上に捨てられただなんて思い違いも甚だしい。

僕は自分がいかに甘やかされていたのかを知ることになる。


王命で婚姻を命じられた父上は、苦渋の決断でそれに従った。

そして再婚相手の貴族も、お金を出す代わりにいくつかの条件を父上に提示したのだ。

一つ、家督が継承されるまでは前妻の名残を公爵家に残さない事。

一つ、腹に宿っている子供を黙認する事(驚いた事に義母のスザンヌはその時身篭っていたそうだ)

一つ、スザンヌと白い結婚は許さない事

一つ、公爵家を僕が継いだ後もエーベン侯爵家を親戚として遇する事(エーベン侯爵家はスザンヌの実家)

父上に提示した条件は、ケニスト公爵家を乗っ取るつもりはないが、スザンヌを冷遇しないでほしいというエーベン侯爵家の意思だったようだ。

全てを聞かされたぼくは大きく息を吐いた。

「だからお前は、ここに送られた。スザンヌがいる間は、お前は公爵家に帰れない。前妻の名残の一番手が、ユーリスお前だからだ。だからといってソフィア様の忘れ形見を捨て置くなんて公爵様はしたくなかったんだ。だけど今の公爵家は乗っ取らないと言ってた割には、ほぼエーベン侯爵家の手の者で埋め尽くされている。公爵に相談された父上がここを紹介したんだよ。ここならお前を外界から守る事が出来る。ハスビス子爵領ではいつスザンヌの刺客が現れるか気が気じゃなかったからな。病を克服した事もしばらくは隠してたんだけど、子爵の息子は口が軽いらしい」

それから、アズランは寮の決まり事を説明してくれた。

ここにいる間は成人するまで、基本外部との連絡は一切できないが、1年に7日だけ外泊が許可される。纏めて取っても小分けで取っても構わないらしい。

手紙も親族以外には出せないと言われて、僕はマリベルに手紙が出せないことを知った。

「マリベルに連絡を取る事はできないのか?」

全ての説明を聞いたあと、真っ先に口に出したのは、僕の希望が立たれた現実だった。




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