おしゃべり(5)
ただいま〜。
「こんな夜遅くまでどこほっつき歩いてたんだか」
家に帰って部屋の掃除してたんだよ。たまには綺麗にしないとね。
「そうじゃなくて。首についてるじゃない、その……」
ついてる?ああ、これ?
これね。ハンカチで擦ればこんなのすぐだよ。ごしごしごしごし……よし、取れた。
「またそんなのつけて……」
いやあ。ちょっと色々あってね。聞きたい?
「知りたくもないわ、そんなどうでもいい話」
でも聞いたからには少しは興味があるんだろう?
「ない」
素直じゃないなあ。
いや、ね。掃除の後に部屋で友達の女悪魔達とわいわいしてたらさ。うっかりつけられちゃって。キスマーク。
「首元なんてすぐ気づきそうなもんだけど」
それが……楽しむのに夢中でよく分かんなかったんだよ。
「何してたのよ、ほんと」
ベッドでみんなに囲まれてわいわいしてただけだよ。
「うわ、やっぱり。女侍らせて酒盛りしてたのね。気持ち悪い」
やっぱり、って知ってたの?
「前も何回か女の香水の匂いつけて帰ってきたじゃない、そりゃ分かるわよ。それと、酒臭いから近寄らないで」
えええ!酷いなあ。そんなに臭いかなあ……
「本人には分からないわよ、ふん。で?楽しかった?」
ああ、とっても。新しい子が加わってね……
「新しい?アンタの部屋、キャバクラかなんかなの?ますます気持ち悪い」
ああ、いや。そうじゃなくて。
悪魔みんな、魔力に飢えてるからね。それでたまに助けを求めて僕のところに集まってくるんだよ。新しく来た子もヘロヘロで今にも倒れそうで可哀想だから助けてあげたのさ。
僕の魔力をちょこっと分けてあげる代わりに……
「『そういう』事をしてた、と」
うん。
「アンタ、好きねそういうの」
うん!可愛い子大好き!綺麗な人も好き!
何人来てもウェルカムだよ僕は!ヘイヘイ!いらっしゃ〜い!
「はあ。ここまでくるともう何も言えないわ……」
お互い悪魔だから生殖能力は無い。だからうっかり……なんて事もない。
向こうは魔力を分けてもらえる、僕は楽しめる。うまくできてるだろう?
「どうせ、いつもソファーに寝そべってる下品な格好のあの連中でしょ?」
よく知ってるね。そうそう、その子達だよ。いつものメンバーなんだよ。
「せめてまともな服を着なさいって言いたいわ」
え〜?みんな可愛いだろう?
「ノーコメント。それより、そんなにモテたいなら魔界に戻ればいいじゃない。ここより女悪魔多いでしょ、よりどりみどりじゃないの」
確かに大勢いるけど、そうじゃないんだよ。別に口説き落としたいとか駆け引きを楽しみたいとかそういう訳じゃないんだよ。今の子達もたまたまこの世界で出会って仲良くなっただけで……
それに……ええと、なんていうか。
その……
「何よ。もったいぶって」
そろそろね、終わりにしようと思っているんだ。
こんな生活を。
「あら珍しい、まともな事言うなんて。まあでも、それが健全ね」
そうだろ?それに、実は大切な人がいてね。
「えっ、まさか彼女とかいるの?いるんならとっととやめなさいよ、こんなの。相手が可哀想でしょうが」
う〜ん。まだそういう段階じゃないんだ。
実はまだその人に気持ちを伝えていないんだよ。
「変に消極的ね。らしくない。なら、今から伝えに行けばいいじゃない」
う〜ん……どうしようかな。
「はあ?行きなさいよ、さっさと」
だってさ。だって、怖くない?
「アンタもしかして本気の恋愛すんのにビビってる?」
ぎくっ。
「……」
…………
「あはははっ、なによそれ……散々遊んどいていざ本気になるとただの臆病者。まるでドラマとか漫画のお話じゃない。なにそれ、笑っちゃうわ」
き、嫌われたくないんだよ。ほんとに、ほんと。
本気なんだよ……
「ともかく、まずは今の女悪魔達とさっさと別れなさい」
そ、そうだよね。
寂しくなるから彼女達とは別れたくなかったけど……ここで話してみて吹っ切れた。
ちょっとこれから身辺整理するよ。
「まあ頑張って。駄目だったら思いっきり笑ってやるわよ」
うん。ありがとう。
頑張ってこの気持ちを伝えよう、その時になったら。
と言っても、そもそもその人はまだ世界に現れていないから……ずっとずっと先の話だけど。
「ん?なんか言った?」
ううん、なんでもない。ただの独り言さ。




