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Σ(゜д゜lll)  最終兵器は進化する(その四)

 アヤトは顔から血のが引いていく。


 今の言葉で完全に理解した。


 この最終兵器がなぜ、「新型」の名を冠しているのかを。


 過去の敗北をかてにして、《役者勢やくしゃぜい》は最終兵器を進化させてきた。


 以前の戦いで、あぶり出された数々の弱点。


 その中には、メモリに関するものもあったに違いない。


 前に《空中戦艦》と戦った時、彼女は「回廊エアホッケー」を使った。エアホッケーのプラスチック円盤パックのように、回廊内の壁をね返りまくり、《役者勢》を叩いて回る攻撃だ。


 あの戦いの反省を踏まえて、《役者勢》は考えたのだろう。


 最終兵器を進化させる上で、メモリ対策は必須となる。彼女が「回廊エアホッケー」を使ってくる以上、地上から突破しようとするのは、無謀むぼうでしかない。


 活路があるとすれば、「空中」だ。


 かつての《空中戦艦》は、前衛を飛び越えるだけに留まっていたが、この新型は違う。


 前衛を飛び越えたあとで、「中継拠点となる発射台」を新たに設置。それを使って、後衛も飛び越えることを意図している。


 いかに《爆轢ばくれきの無法少女》といえど、空中を飛んでいく役者たちに、地上からのハリセンは届かない。


 この戦法なら、中継発射台の構成員が「回廊エアホッケー」で全滅することになろうとも、空へと逃れた者たちは助かる。そのまま後衛メモリを飛び越えてしまえば、回廊を突破できるのだ。


 そんな風に、《役者勢》は考えたのだろう。


(本気でまずいな)


 アヤトは危機感をつのらせた。


 この新型《空中戦艦》とまともにやり合うためには、「対空」攻撃がどうしても必要になる。


 でも、それが可能な《劇番衆げきばんしゅう》は・・・・・・。


 さっと思い浮かんだ人数は、非常に少なかった。多くの《劇番衆》にとって、この最終兵器は、絶望のかたまりになる。


 外周を形成している役者たちは、新型《空中戦艦》の強みを、完全に理解しているようだ。彼らの役割は、《劇番衆》の前衛を引きつけておくこと。その間に、どれだけの人数を空中に送り出せるか、それが重要なのだ。前衛を突破した人数が多ければ多いほど・・・・・・。


「こっちにもつくるぞ! 中継発射台用意!」


 追い討ちをかけるように、後方から聞こえてくる声。


 アヤトは戦慄せんりつした。ふり向かなくても、自分の背後で何が行われているのか、はっきりとイメージできる。


 過去の戦いで目にした《矢倉やぐら戦法》。あれを《役者勢》はやろうとしているに違いない。役者たち四人が輪になって、その中央で両腕を組み合わせる。そこに別の役者を乗せて、空中へと発射するのだ。


 旧型《空中戦艦》のことを、アヤトは回想する。あれは、地上と空中との同時突破方式だった。


 一方、この新型は、極端にかたよっている。地上を完全に捨てたわけではないだろうが、「空中」での突破に、異常なほど特化している。


(これ以上、中継発射台をつくられたら・・・・・・)


 アヤトの脳裏のうりに広がる絶望感。


 しかも悪いことに、メモリが現在使っているのは、ハリセンではなく、バズーカ砲だ。あれだと、「回廊エアホッケー」は使えない。


 代わりに、空中の相手を迎撃げいげきできるが、装填そうてんできるペイント弾は八発のみ。さすがに数が少なすぎる。


 その上、メモリがペイント弾を補給している間は、空中は完全に無防備ノーガードだ。赤の回廊に配属されている《劇番衆》で、専用武器を持っているのは、彼女一人。それ以外の者は、全員がハリセンを使っているので、交替要員に誰が出てきたとしても、「対空」攻撃は使えない。


 アヤトは迷った。今すぐにでも、中継発射台をつぶしにいくべきか。


 しかし、新型《空中戦艦》内部にある発射台、そっちを潰さない限り、新たな人員が続々と送り込まれてくる。彼らによって、せっかく潰した中継発射台が、簡単に「復活」してしまうだろう。


 相手が「弾切れ」におちいる展開、それは当分、期待できそうになかった。


 すでに《役者勢》は、新型《空中戦艦》の後ろ側、こちらからは見えない部分を、切り崩しているようだ。「弾」となる人員を、そこから調達しているとすれば、この猛攻はまだまだ続く。


 どう考えても、戦況は極めて不利だ。有効な対抗策も思いつかない。アヤトの頭に浮かんでくるのは、悪い予想ばかり。ある程度の人数に回廊を突破されるのは、もはや避けられない気がした。


 とはいえ、なんとか大量突破だけは阻止そししようと、正面にいる役者たちを、緑色のハリセンで叩きまくった。


 わき目もふらずに戦っていると、『奥館おくかん』の方から、《役者勢》らしき声が聞こえてくる。


 ついに回廊を突破されたか。


 そう一瞬思いかけたが、どこか違和感があった。


 今の声、歓喜の雄叫おたけびというよりも、悲鳴に近かったような・・・・・・。


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