Σ(゜д゜lll) 最終兵器は進化する(その五)
数秒後、アヤトが戦っている地点の両側を、十人以上の役者たちが撤退していく。
彼らの背中には、緑色の飛沫が、はっきりと付着していた。後衛にいる《劇番衆》が、やったものらしい。
アヤトは不思議がる。役者たちに付着している飛沫、ハリセンで叩いたあとには見えなかった。
どうやったら、ああなるんだろう? 一人や二人ならともかく、あれだけの人数だ。
メモリのバズーカ砲なら可能かもしれないが、それだと飛沫は、役者たちの背中ではなく、正面につきそうなものだけど・・・・・・。
そんなことを考えながら、アヤトがハリセンを振り回していると、
「こっちは任せてもらって大丈夫! 前をお願い!」
後方から飛んできたのは、メモリの声ではなかった。
どこかで聞き覚えがあるものの、誰の声なのか、瞬時には思い出せない。
だが、撤退していく役者たちの一人から、その答えを見つける。
猫の足あとによく似たマークが、背中についていたのだ。
それでわかった。後衛にいるのが誰なのか。
でも、別の疑問が浮かんでくる。だって、「彼女」は・・・・・・。
いや、今は余計なことを考えるな。それよりも、目の前にいる《役者勢》を、一人でも多く叩きまくらないと。
さらなる猛攻を加えていると、待ちに待った瞬間が訪れた。
真正面の人間防壁が崩れ、ついにアヤトは目撃する。新型《空中戦艦》内部にある、複数の発射台を。
今度は役者たちが焦る番だった。残っている外周部分に動揺が走る。
予想していたよりも早く、新型《空中戦艦》の心臓部をむき出しにされたのだ。さすが、《狂王》。その強さは、恐怖と敬意に値する。
かくなる上は!
この時、誰かが号令を発したわけでもないのに、《役者勢》の意識は統一されていた。
新型《空中戦艦》が、外観を大きく変えていく。
一つの集合体から、大勢の個へと。
最終兵器を緊急解体しての、地上からの一斉突撃だ。本体から離れた役者たちが、『奥館』目がけて走り出す。
彼らが抱く思いは一つ。
赤の回廊を突破せよ!
それを阻止すべく、アヤトは立ちはだかる。
ハリセンが超スピードを纏って、緑色の線へと化けた。まるで鞭でも振るっているかのような軌道で、《役者勢》をがんがん仕留めていく。
地上を来るだけなら怖くない。手数の多さで撃退できる。
しかし、役者たちも馬鹿ではない。自分たちの不利を悟った瞬間、最後の手段に出た。
ほとんど同時に、数人が叫ぶ。
「今すぐ発射台を用意!」
すべての役者たちが応じたわけではなかったが、大部分は応じた。
このまま全員で地上を走っても、《狂王》を抜くことは難しい。突破できるとしても、せいぜい数人。それどころか、全滅もあり得る。
ならば、別の場所に活路を求めるのだ。
そう、空中を進めば、ハリセンは届かない。
役者たちは必死の形相で、発射台を組み始める。通常の《矢倉戦法》なら四人で築くが、今回は非常事態だ。二人や三人で賄う。
とにかく、スピードを重視した。この状況、そこまで高く飛ばす必要はない。《狂王》を越えることさえできれば・・・・・・。
これに対して、アヤトもハリセンを加速させた。緊急の発射台を、片っ端から潰していく。一方的な蹂躙になった。
けれども、《役者勢》の執念が、全滅を回避する。
十人の射出に成功した。空中に逃れた仲間たちに、回廊突破の希望を託す!




