Σ(゜д゜lll) 代表支配人、大変です!
「そのロッカーには、《アンゴール会》のメモ以外に、何か入っていませんでしたか?」
「何もなかったよ」
「では、ロッカーの近くで、怪しい人物を目撃したりは?」
「見ていないと思う」
さらに一回目の暗号についても、ウソはないか、隠していることはないか、海箱ユユは質問を重ねた。
その結果、どうやらアノン監督は、二回目の暗号、あれの解読内容でウソをつき、注意書き以降の部分を隠していただけのようだ。彼女はただ、『禁忌のお宝』が欲しかっただけ。
念のため、遊園地にはもう一度、電話をかけておくことにする。
お宝が入っていたロッカーの周辺には、何台かの監視カメラがあるはず。当日の映像を徹底的に調べてもらうのだ。アコンプリスに関する新たな手がかりを、見つけることができるかもしれない。
あと、《アンゴール会》がロッカーから持ち去ったお宝、それが何なのかも、できれば把握しておきたかった。
まさかとは思うが、白い紐の『海箱』という可能性もある。
あれは、『海箱座』の至宝だ。『志歌島』の海中から発見され、『海箱座』の創設以来、ご本尊であり続けたもの。
全部で八つ存在していたが、その一つは現在、行方不明になっている。表向きは、三年前の大火災で焼失したことになっているが、実際には、アコンプリスの手中にあったらしい。
あの『海箱』なら、アコンプリスが『禁忌のお宝』と呼んでいても、おかしくないように思う。
それに、《アンゴール会》はもともと、大道具係や衣装係が趣味で始めた「ミステリー同好会」だ。今でも『海箱座』の裏方業務に携わっているので、『海箱』の価値は熟知している。彼らがアコンプリスに味方するには、十分すぎるお宝だろう。
海箱ユユは頭が痛くなってくる。
二回目の暗号解読を依頼した時点で、自分とアコンプリスは、二者択一のギャンブルをしていたも同然だった。
元天才数学者で、特に暗号の分野に強い、アノン監督か。
暗号研究の専門集団、《アンゴール会》か。
そのどちらか、先に暗号を解いた方が、『禁忌のお宝』を手に入れ、アコンプリスの内通者になる。
そうして軍配が上がったのは、《アンゴール会》の方だった。
海箱ユユは心の中で、少しだけ愚痴る。
(どちらもお宝につられず、正直に話してくれていれば・・・・・・)
でも、済んだことだし、仕方がない。
とりあえず、アノン監督は拘束しなくてもいいだろう。当初の予定通り、彼女には本日の《無無劇》を任せるとして・・・・・・。
「代表支配人、大変です!」
真横に近い位置から、お世話係の女の子が叫んでくる。
アノン監督に聞き取り調査をしている間、彼女には静かにしているよう、海箱ユユは前もって頼んでいた。
と同時に、別の仕事も頼んでいた。代表支配人室の窓際でずっと、《関所回廊》の見張りをしてもらっていたのだ。
「赤の回廊に、大きな動きが!」
とっさに海箱ユユも、窓の外に目を向ける。赤の回廊の『役者連館』側だ。
そこにある衝立の奥から、大勢の役者たちが飛び出してきている。その数は二百人以上・・・・・・。
海箱ユユはつぶやく。
「早くも使ってきますか」
彼らの最終兵器、《空中戦艦》だ。
しかし、恐れることはない。
現在は他の《劇番衆》と交替しているけれど、赤の回廊にはアヤトとメモリがいるのだ。彼らが出れば、《空中戦艦》を防ぎきれるはず。
だけど、この違和感は何だろう。
海箱ユユは他の回廊に視線を走らせる。
どの回廊を見ても、そこにいる役者たちの数は、さほど多くない。二百人以上いるのは、赤の回廊だけだ。
脳裏によぎる疑問。なぜ《役者勢》は真っ先に、赤の回廊で《空中戦艦》を使ってきたのか。
アヤトとメモリ、あの二人に《空中戦艦》が通用しないのは、重々承知だろうに・・・・・・。
嫌な予感がする。
そして、このあと海箱ユユは、自分の目を通して、疑問の答え合わせをすることになる。
新型《空中戦艦》、いよいよ発進。
最終兵器は進化する。




