Σ(゜д゜lll) お宝!
アノン監督の話は、次のようなものだった。
数日前にモノレールの柱で見つかった封筒には、暗号化された文章が入っていた。あれの解読はすでに済んでおり、どんな内容なのか、海箱ユユはアノン監督から、報告を受けている。
ところが、あの暗号の終盤には、こんな注意書きがあったらしい。
――暗号を解読している者に告ぐ。この先を『海箱座』代表支配人に教えてはいけない。
そのあとに続いていたのが、
――『志歌島』南側の遊園地に来ること。
なんでも、暗号を解読したご褒美に、『禁忌のお宝』をくれるのだとか。
(お宝!)
注意書き以降の部分を解読しながら、目を輝かせるアノン監督。
もともと、ここ『志歌島』周辺の海には、異なる時代の軍船・商船・海賊船が沈んでおり、古来より無数の財宝伝説が語り継がれてきたのだ。この暗号もひょっとして・・・・・・。
お宝は前もって、遊園地内のコインロッカーに入れてあるそうで、
(怪しい気もするけど、かえって本物かも)
指定している場所が「営業中の遊園地」なのも、アノン監督の好奇心を後押しする。「深夜の墓場」とか「海中の沈没船」とか、人のいない場所じゃないのだ。
しかも、ロッカーを開けるだけで、お宝が手に入る。誰かのお墓を掘り起こしたり、潜水装備をつけて海の中を探索したりなど、そんな面倒なことはしなくていいのだ。
鍵はロッカーの上に隠してあるそうで、
(やばいことになりそうなら、その時点で逃げればいいか)
もしかしたら、この暗号をつくった人間は、「宝探しごっこ」をしているつもりなのかも。
今風にアレンジされてはいるものの、わざわざ『禁忌のお宝』と言っているくらいだ。この暗号解読の難易度とかも考えると、過去に海中から引き上げた「本物のお宝」をくれるのかもしれない。
こうして遊園地を訪れたアノン監督。お宝があるというロッカーの上には、ちゃんと鍵が用意されていた。
期待に胸をふくらませながら、いざロッカーを開けてみる。
ところが、お宝は入っていなかった。
かといって、空っぽだったわけでもない。
代わりに置いてあったのが、『お宝はお先にいただいた。ハッピー、ミステリー!』というメモだった。
誰の仕業なのかは、考えるまでもなかった。こんなことをするのは、《アンゴール会》の連中以外に思いつかない。
そこで気づいた。今回の暗号解読、自分一人に任されていたのではないと。
(《アンゴール会》にも依頼していたんだね)
おそらくは前回の暗号も、そうしていたに違いない。
で、《アンゴール会》の方は、すでにこちらの存在に気づいていたからこそ、こんなふざけたメモを残していったのだろう。
その場でメモを破り捨てると、頭を抱えるアノン監督。
困ったことになった。暗号の解読結果は、すでに報告済みなのだ。
注意書き以降の部分は、ユユさんにまったく伝えていない。つまりは、ウソの報告をしたことになる。
(今からでも、ごめんなさいしてきた方がいいのかな)
しかし、それはそれで面倒なことになりそうな気がする。
だったら、黙っていよう。都合の悪いことは全部。
(《アンゴール会》も、本当のことは話さないだろうし・・・・・・)
というのが、あの暗号解読の真相なんだとか。




