Σ(゜д゜lll) 強硬手段
緊急の呼び出しで、アヤトは代表支配人室にいた。
部屋の中には、メモリとマユハが先に来ていた。
呼び出しの理由はまだ聞いていないけれど、代表支配人室の空気が、妙に重たい気がする。
良い知らせがある、という感じではなかった。その逆だろう。
「モトナちゃんが誘拐されました」
海箱ユユが厳しい顔で告げてくる。
アヤトは耳を疑った。
(モトナが誘拐・・・・・・)
思考がほとんど停止する。一切の言葉が口から出なかった。
「大変じゃないですかっ!」
メモリが本気で叫んでいる。その顔には、大きな不安がにじみ出ていた。
彼女の隣では、マユハも険しい表情をしていた。固く握った左右の拳からは、強い感情が伝わってくる。
三者三様の反応だったが、モトナのことを心配しているのは、アヤトたち三人に共通していた。
「誘拐犯が誰かは、わかっています」
海箱ユユがため息をつく。
モトナが泊まっていたホテル、彼女の部屋には、「お姉ちゃんに誘拐されました」と書かれた便箋が残っていたという。
それを聞いて、アヤトは少し安心した。先輩が犯人なら、モトナに危害を加えたりはしないだろう。
ただ、先輩の性格やモトナの性格を考えれば、こうなることは、事前に予想できたはずだった。
未然に防げなかったことに、思わず反省してしまう。前もって海箱ユユに強く忠告しておくなど、できる対策はあったのに・・・・・・。
「なお、デススちゃんも一緒に誘拐されたようです」
別の便箋には、「デススも誘拐されるです」と書いてあったのだとか。
そして、モトナ同様、彼女も行方不明だ。
海箱ユユの話に、アヤトは沈黙した。メモリとマユハも同じ反応だ。代表支配人室が静まり返る。
一気に二人。
これはアヤトにも予想外だった。
しかも、明日は『赤曜日』で、黒幕との対決を控えている。よりにもよって、こんなタイミングに誘拐なんて・・・・・・。
いや、こんなタイミングだからこそ、黒幕は強硬手段に出たのだろう。
「それなりの数の見張りを置いていたのですが」
ホテル正面、フロント前、一階のエレベーター前、モトナやメモリたちが宿泊しているフロア、さらにはホテルの裏口など。
配置していた全員が、何者かによって無力化されていたらしい。一瞬で気絶させられたので、相手が誰かはわからない。
他にも、ホテルのスタッフや宿泊客など十人以上が、失神させられていたそうだ。侵入・誘拐・逃走の邪魔になりそうな人間を、片っ端から排除していったものだと考えられる。
事件発覚後に警察が調査したところ、ホテルへの侵入者は、おそらく二人。
モトナに接触した者(たぶん先輩)と、邪魔者を片っ端から排除していった者。
特に後者の存在が問題で、
「黒幕サイドには、かなりの手練れがいるようです」




