Σ(゜д゜lll) 再会と誘拐
さらに、モトナともう一人、ある人物しか知らないはずのことを、小声でつぶやいてきた。
それで、この宅配ピザの人物、その正体がわかった。
(お姉ちゃんだ!)
「早く部屋に入って」
急いで中に匿う。
ドアを閉めてから振り返ると、宅配ピザの制服は、白いセーラー服へと変わっていた。
そして、ふんわりしたポニーテール。
その懐かしい姿に、モトナは思わず飛びついた。
「お姉ちゃんだ、お姉ちゃんだ」
抱きついてから、嬉し涙がポロポロとこぼれてくる。
ようやく再会することができたんだ。
話したいことがいっぱいあるけれど、どれにしようか決めきれずに、口をパクパクさせていると、
「大事な用があってきたの。時間がないから、よく聞いてね」
お姉ちゃんに頭をなでられて、モトナはコクコクうなずいた。
そういえば、ユユさんに言われていたっけ。お姉ちゃんの方から会えにくることがあったら、うまく説得して、黒幕の情報を聞き出すとか何とか。
ところが、こっちが説得するよりも先に、
「私ね、モトナを誘拐しに来たんだよ」
「え?」
「はい、モトナは今から、私の人質です」
今度はお姉ちゃんの方から、優しく抱き締めてくる。
こういうことをしてくるのだから、誘拐という単語は冗談かな、そう思ってみるものの、
「『誘拐された』って、これに書いてくれる?」
持ってきたピザの箱を、勢い良く開けるお姉ちゃん。
その中にピザはなく、便箋と筆記用具が入っていた。
お姉ちゃんの目はにこにこしているけれど、どうやら本気のようだ。
モトナはわけがわからず、聞いてみる。
「お姉ちゃんは、悪い人たちの仲間なの?」
「それは、物事をどこから見るかで、大きく変わってくるよ。何が良いことなのか、悪いことなのかなんて、結果論でしか決まらないもんだし」
こっちの目をじっと見つめてくるお姉ちゃん。
「無理強いはしない。モトナがここに残りたいのなら、その意志を尊重する。誘拐はあきらめて帰るよ。じゃあ、またね」
「ま、待って」
モトナは頭が混乱してきた。
お姉ちゃんは何を考えているんだろう。
でも、はっきりしていることが一つ。
このまま誘拐されちゃえば、お姉ちゃんと一緒にいられる。
だったら、答えは決まっていた。
「私、誘拐される」
ピザの箱に入っていた便箋に、「お姉ちゃんに誘拐されました」と書いた。こうしておけば、ユユさんやアヤトさんも、わかってくれるはず。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
モトナがうなずいた直後だった。
この部屋のドアを、誰かがノックしてくる。
(やばい。お姉ちゃんがいるのに)
最悪のタイミングだ。モトナは焦った。
お姉ちゃんの方を見ると、すでに変身を済ませている。この部屋に入る前の姿にだ。
今は早朝だから、寝てるふりをしてやり過ごす。
そんなことも考えてみたけれど、ノックの音は続いていた。だんだんと強くなっている気がする。
(このままだと、他の人まで来ちゃうかも)
それを防ぐには、今ここで対応するしかなかった。
モトナは慎重に、ドアへと近づく。のぞき窓からこっそりと、向こう側を探ってみた。
そこにいたのは、おかっぱ頭の女の子だった。その赤い髪は、見間違えようがない。
(デスちゃん!)
ドアを挟んで、彼女の声が聞こえてくる。
「さっきピザが届いたの、たまたま見ちゃったです。朝ごはんまで我慢しようと思って、一旦は部屋に戻ろうとしたけど、やっぱり無理でした。おなかがすいているから、少し分けて欲しいです」




