Σ(゜д゜lll) 海王丸邸の騒ぎから五日目(決戦前日)
海王丸邸の騒ぎから五日目。
早朝に目が覚めたモトナは、ホテルの部屋で一人、考えごとをしていた。
お姉ちゃんはまだ、確保できていない。
でも、ユユさんもがんばって探してくれている。
それに加えて、こちらには、《役者勢》のみなさんという、心強い味方がいるのだ。ユユさんにとって苦手な、『役者連館』内部の捜索は、彼らに任せておけばいい。
ただし、自分が《役者勢》のスパイであることは、極秘事項だ。ユユさんには絶対、ばれるわけにはいかない。
そうでなかったら、昨日のプールで、「お邪魔ユハ」の復帰には、何が何でも反対している。あんな奴に頼らなくても、《役者勢》のみなさんに任せておけばいいのに・・・・・・。
だいたい、あの女を味方と思ってはいけない。
もともと、己のザコザコな実力をわきまえずに、お姉ちゃんの役を奪おうと狙っている邪魔者。それだけでも、万死に値する。
しかも先日、あの女は暴挙に出た。ぶっとい模擬刀で、アヤトさんをしばき倒したのだ。
一億回謝っても許さない!
百兆回死んでこい!
そのすべてを、「私がいいと思う死に方」限定で!
そこでモトナは冷静になる。
(いけない、いけない。あの女のせいで、私、悪い性格になりかけている)
尖っていく気持ちを、どうにか抑えよう。そう思ってモトナは、ゆっくりめの深呼吸を繰り返してみた。
それにしても、お姉ちゃんとアヤトさんは、本当にすごいと思う。あれだけ嫌なことをされているのに、あの女が身近にまとわりついてくるのを、広い心で許している。
自分には無理だ。お邪魔ユハのことを考えると、怒りと殺意、その二つくらいしかわいてこない。
このまま考え続けても、精神衛生上よろしくないので、気分転換をすることにした。
(そういえば、この前のアヤトさんの水着姿、本当に良かったなぁ~)
回想するなり、顔がにやけてくる。
(しかも、私の水着を褒めてくれたし・・・・・・)
そこで突然、誰かが部屋のドアをノックしてきた。
モトナは一瞬、びくっとする。直前までしていた回想を、素早く中断した。
(こんな朝早くに、誰だろう?)
朝ごはんは毎日、デスちゃんやメモリさんと一緒だけど、その時間には早すぎる。
でも、ドアをノックしてくる相手には、複数の心当たりがあった。
一番に思いつくのは、ユユさんからの使いだ。ついに、お姉ちゃんを発見できたのだろうか。
または、『役者連館』からの使いかもしれない。そっちの場合も、お姉ちゃん発見の可能性がある。
さっそくドアの前に立って、一センチに満たないのぞき窓から、向こう側を探ってみた。
そこにいたのは、宅配ピザの制服を着た人物だ。手にはピザの箱を持っている。
ということは、『役者連館』からの使者だ。
スパイ用の合言葉を、頭の中で確認してから、モトナはそっとドアを開ける。
「裏切り者には」
これで相手は、「鉄槌オフ」と返してくるはず。
ところが、宅配ピザの人物は、別の言葉を囁いてきた。
「部屋の中に入れてくれる?」




