Σ(゜д゜lll) 宝を見つけた末裔たち
海箱ユユが一通りの説明を終えると、
「なるほどな」
一達の顔は、険しいものへと変わっていた。
「相手は『海箱座』に、勝負を挑んできています」
新たな暗号は、挑戦状だった。
「それを私は、受けて立とうと思います」
相手が指定してきた勝負の日時は、次の『赤曜日』だ。残る日数は限られている。
とはいえ、今回の件、『海箱座』の代表支配人が有する権限の範囲を、大きく越えていた。
対処しようと思ったら、代表支配人の権限を、一時的に拡大してもらう必要がある。
だから、招集するしかない。『八人座会』を。
かつて、『志歌島』の海中から財宝が発見され、それが『海箱座』の始まりとなった。
当時、一緒になって宝を見つけたのは、八人の男女だ。この街には、彼らの末裔たちがいる。
その代表者によって行われるのが、『海箱座』の最高意思決定機関、『八人座会』だ。『海箱座』に著しい影響を及ぼしかねない、そんな事案についてのみ、八人だけで話し合う。
あの会議、話し合いのあとには、多数決を用いて最終判断を下すのだが、参加者が八人と偶数なので、票が均等に割れることがあった。その場合は、「否決」と同じ扱いになる。議案を通すためには、過半数の票を抑えなければならない。
「そんなわけで、明日にでも『八人座会』を招集するので、私に協力してください」
海箱ユユは訴えた。
それこそが、ここに来た目的の一つでもある。
「そうきたか」
一達が苦笑している。
一方で、海箱ユユは真剣な顔を続けていた。相手の言質を取るまでは、決して安心しない。
現在の参加者たちには、保守的な者、様子見な者がいる。何の事前準備もせずに、いざ『八人座会』を招集したところで、「否決」されるかもしれない。
そうなれば、黒幕との対決では、圧倒的に不利になる。今の代表支配人の権限では、やれることに限界があるのだ。
「すでに、『猫巫女』家を味方につけています。今回の『八人座会』から、あそこの代表は、ユスズですから」
「あの家は、やる気がないな。『千座』家も、それに倣って、後進に道を譲るとするか」
一達の言葉を冗談として聞き流し、海箱ユユは話を進める。
「あなたが加われば、私の実家、『北灯』家も含めて、三票が確保できます」
「あと一票だか二票だかは、勝手に付いてくるだろうな。歓楽街の嬢ちゃんや、旅館組合の嬢ちゃん、それに警備の小僧、この辺りはお前さんに味方するものと、予想するが」
「どうでしょう。歓楽街の彼女は気まぐれですし、警備の彼は立場上、反対に回る可能性もあります。この件に失敗したら、私はもちろん、彼にも迷惑をかけることになりますし」
だから、あの三人で期待できるとしたら、旅館組合を仕切る『姪浜』家の一票。すでに面会の約束をしていて、このあとお願いをしに行くつもりだ。
それで四票を抑えることができる。『北灯』家、『千座』家、『猫巫女』家、『姪浜』家の四票だ。
そして残る四票の内、どれか一票を「賛成」か「棄権」かにすることができれば、今回の議案を通すことができる。
その鍵になりそうなのが、一達だった。八人の参加者たちの中で、最も発言力のある人物。
「なるほどな。わかった。『八人座会』は任せておけ。お前さんの望む結果に導いてやろう」
その言葉に、海箱ユユは安心した。
この人が積極的に味方してくれるのなら、五人目の票も計算して良いだろう。『八人座会』の方は、うまくいきそうだ。
あと、言っておくべきことは・・・・・・。
海箱ユユは大きく息を吸うと、静かに切り出した。
「もしもの時には、私の次の代表支配人に就任してくださるよう、お願いしておきます」
一達の顔が一瞬で、ぎょっとしたものに変わる。
「代表支配人をやめるのか」




