Σ(゜д゜lll) 犯人はお前かー!
お世話係の女の子が再び、こちらを向く。
その顔は薄い笑みを含んでいた。
そして、床にへたり込んだアヤトを、威圧感たっぷりに見下ろしてくる。
「随分と面白い物を、お持ちですね」
「あの、それは・・・・・・」
うまい言い訳が、とっさに思いつかなかったので、やむを得ずアヤトは、頭を垂れてみる。
「出来心だったんで、見逃してください!」
それに対する、女の子の返事はあっさりしていた。
「いいですよ。ただし」
簡潔な条件をつけてくる。
「あれ、ください」
お世話係の女の子が、『おパンツお茶わん』を指差した。
アヤトにとっては、意外な条件だった。
「へ? 三つとも?」
「いえ、あの真ん中のお茶わんだけで、結構です」
それは、アヤトが一番気に入ってるやつでもある。
(これって、カツアゲ?)
とはいえ、悪い提案とも思えない。
割るか捨てるかで、あれほど悩んでいたのだ。それよりは、欲しい人にあげた方がいいのかも。
ただ、彼女の真意がわからない。
(下手に渡すと、ゆすりの道具に使われるのでは)
そんな疑念も浮かんでくる。
が、一人でいくら考えても、答えは出そうにない。ここは危険を承知で、彼女を信じてみることにした。
「どうぞ。ですから、このことは内密に」
アヤトが告げた瞬間、目の前から彼女の姿が消えた。
すでに『おパンツお茶わん』に駆け寄っている。
真ん中の一つを、両手で大事そうに抱えると、
「ありがとうございます。これ、欲しかったんですよ」
その言葉には、ウソが一ミリグラムも感じられない。
それでアヤトは気づいた。彼女は、もしかして・・・・・・。
「ひょっとして、そのシリーズを集めてるの?」
「もちろん!」
やはり、そうか。このお世話係の女の子、『おパンツお茶わん』のコレクターだ。
となると、アヤトは同好の士。そんな相手からもらったお茶わんを、ゆすりの道具に使うなど、もってのほか。悪しき目的に使うことは、絶対にないだろう。
あの喜びようを見ていれば、それが確信できる。
「最後の一個が売れていた時には、どうしようかと思っちゃって」
「最後の一個?」
「あれ、知りませんでした? これ、三百個の限定品なんですよ。先着販売の」
手に持っていたお茶わんを、彼女がゆっくりと裏返していく。
その直後に、いきなり叫び出した。
「あー! これ、最後の一個だ! 私が買おうとしていたやつー! 犯人はお前かー!」
お茶わんの底には、メダルが埋め込まれていた。メダルには、「300」という数字が刻まれている。
どうやら、アヤトがわずかの差で、先に買ってしまったらしい。
騒ぐ彼女をなだめつつ、
「そのお茶わんを差し上げたので、このことは内密に」
しっかりと念押ししておく。
「もちろんですよ。でも、こんな逸品を無料でもらっちゃって、なんか悪いですね」
たしかに、そのお茶わんの値段を考えると、そうかもしれない。
「じゃあ、こうしましょう」
彼女が新たな提案をしてくる。
「私の見たところ、あなたはまだ、交際している相手がいないみたいですし、もしも好きな女の子がいるなら、陰ながら支援しますよ」
そして彼女は、自分の本名を教えてくれる。『海箱座』で仕事中に使っているのは、芸名のようなものだそうで、
「本当の名前は、〈アプリー〉です。プライベートの時は、こちらの名前で。今後とも、よろしくお願いしますね」




