Σ(゜д゜lll) 《劇番衆》処刑計画
「おはよーございます」
お世話係の女の子が着ているのは、私服のようだった。
といっても、そのデザインは、どこかメイド服っぽい。
その上、うさぎ耳がデザインされた頭飾りをつけているので、いつもの印象と大して変わらなかった。
「代表支配人からの伝言です」
その言葉に、アヤトは反応する。
(伝言?)
じゃあ、海箱ユユは無事なんだろうか。爆発に巻き込まれていたら、伝言どころではないだろうし・・・・・・。
「どうしました?」
「いや、『奥館』で爆発が・・・・・・」
その先を言いかけた途端、テレビで見た映像を鮮明に思い出してしまい、アヤトは即座に口ごもる。
それに対して、きょとんとしている女の子。
「爆発? 何の話です? あ、昨日の夢の話とかだったら、私はちょっと遠慮しておきますんで・・・・・・」
「いや、夢とかじゃなくて、今テレビで」
アヤトは女の子を、部屋の中へと引っ張った。実際にテレビを見てもらった方が早いだろう。
「とにかく、これを見て!」
テレビの前に戻ると、画面の中は朝になっていた。
やはり『奥館』には、痛々しい爆発のあとがある。
劇場の外では、インタビューが行われていて、街の人たちが答えていた。爆発があったのは、代表支配人室で間違いないようだ。
「ほら」
アヤトが言うと、お世話係の女の子は無言で、じいっとテレビを見つめた。
が、すぐに小さく吹き出すと、
「これ、連続ドラマの再放送ですよ」
「へ?」
「以前、私も見ていましたから、わかります。『《劇番衆》処刑計画』というドラマです。まず、代表支配人が狙われるんですよ。このあとすぐに、犯人の一味が出てきてですね」
自信満々にネタバレをしている途中で、パッと画面が切り替わった。
どこか暗い部屋の中で、怪しげな連中が話し合いをしている。
と同時に、映像に重なるように、スタッフロールが流れ始めた。
主題歌っぽい曲に合わせて、お世話係の女の子が歌い始める。歌詞を熟知している歌い方だった。
画面に「つづく」の文字が現れると、
「ね? ドラマでしょ?」
現実の出来事ではないと知り、その安堵感から、アヤトは全身、特に下半身の力が抜けていく。へなへなと床に座り込んだ。
このドラマ、初出は一年前だが、未だに高い人気があり、繰り返し再放送されているらしい。
続編として、映画の製作も決まっていて、『《劇番衆》最終計画』という題名が、すでに発表されているのだとか。
「じゃあ、昨日の夜、『奥館』で爆発なんてなかったんだね?」
アヤトは今一度、確認してみる。
「さっきまで私、そこにいましたけど、いつも通りでしたよ。で、代表支配人から、連絡があるのですが」
床にへたり込んだままのアヤトを、正面から見下ろしてくる女の子。
(代表支配人から連絡?)
アヤトは推測する。こうして彼女が来たということは、今回も「あれ」だろうか。
「また、プールに集合?」
「いいえ、今回は連絡のみです」
そう言うと、お世話係の女の子は急に、険しい顔になった。
「代表支配人が今、それどころではないので・・・・・・」
「何かあったの?」
「あ、いえ、大したことではないです、たぶん・・・・・・」




