表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/389

Σ(゜д゜lll)  タイムリミットが迫って来ている

 海箱ユユは『奥館おくかん』の代表支配人室にいた。


 横長の高級机に向かって、お菓子を片手に、思考をめぐらせていた。


 海王丸邸のある島では現在も、港の封鎖、小型艇による包囲網を続けている。


 しかしながら、島内の捜索では、隠れ家から逃げた人物を、未だ発見できていなかった。現場から届くのは、お決まりの定時連絡のみだ。


 海箱ユユは視線を飛ばす。机の上には、お菓子のお皿やティーセット一式の他に、電話や置き時計があった。


 普段なら時間を知るのに、『役者連館やくしゃれんかん』壁面の巨大時計を見ることが多いのだが、今は夜だ。外は暗い。だから、置き時計の方を頼った。


 間もなく夜の一時だ。タイムリミットが刻々と迫って来ている。


 海王丸邸のある島は、半分が別荘地だ。島内には大勢の観光客がいる。島の出入りを制限する措置を、長くは続けられない。


 そのため、すでに関係各所へ通達していた。朝の六時になったら、港の封鎖、及び、小型艇による包囲網を解除する、と。


 したがって、残り五時間。


 島内の捜索だけは、規模を落としてでも続けるつもりだ。でも、あまり期待できそうにない。


(最善の手を尽くしたつもりだったんですが・・・・・・)


 海箱ユユはため息を吐こうとして、その途中で自制した。


 モトナの姿が、視界に入ったのだ。


 模擬戦のあとで彼女には、ホテルへ戻るよう勧めたのだが、


 ――お姉ちゃんが見つかった時、すぐに知りたいんです。


 ほんの少し前まで、かなりがんばって起きていたけれど、さすがに疲れたのだろう。モトナはソファーベッドの上で、ぐっすりと眠っていた。


 彼女の『異世界転生者』としての能力、『あれ』のおかげで、模擬戦は最高に楽しめた。


 ただし、あの能力には反動がある。朝になる頃には、おそらく・・・・・・。そっちの方のタイムリミットも迫って来ている。


(点滴スタンドが一つだけだと、たぶん足りないですね。石化少女たちとの勝負は、余計だったかもしれません)


 あの戦いも楽しかったが、能力による反動を考えると、


(自重しておくべきだったかも)


 ほんの少しだけ後悔する。


 とはいえ、《劇番衆げきばんしゅう》を統括する身としては、本当に実りある結果だった。


 アヤト、ケイリィ、鈴木一億、石化少女たち、そして・・・・・・。


 彼らは強くなっている。


 さらなる成長も期待できる。


 実に、頼もしい後輩たちだ。


 机の引き出しの一つに、海箱ユユは視線を移動させた。


 そこには、入っている。《劇番衆》時代に使っていた、自分の武器・・・・・・。


 この部屋から《ゲキバン》を見ていて、たまに思うことがある。「また戦ってみたいな」と。《劇番衆》としてのブランクは長いけれど、モトナの能力を使えば、それを補えるはず。『風陣ふうじん八式はっしき』の技だって使い放題だ。


 迫り来る役者たちを迎撃げいげきする。そんな自分の姿を想像して、にこにこしていると、卓上の電話が鳴り出した。


 慌てて受話器を取る。


 と同時に、モトナの方をちらりと見た。


 彼女はよく眠っている。起こさなかったことに安心して、海箱ユユは電話の声に耳をかたむけた。


「代表支配人、夜分やぶん失礼します」


 きりっとした声。警備チームの隊長からだ。


 あの大火災の翌日、劇場の焼け跡で大怪盗のカードを見つけた時、彼も一緒にいたので、今回の件でも、色々と事情を話してある。黒幕のこと、峰谷マノのこと・・・・・・。


 現在は『奥館』の警備から外れてもらい、五十人の隊員たちを指揮。警察と連携して、『志歌しかしま』内をパトロールしてもらっている。


 隠れ家を失った黒幕サイドが、騒ぎを起こすとしたら、ここ『志歌しかしま』を狙ってくる可能性が高い。その予防策だ。


 受話器を握ったまま、海箱ユユは横目で置き時計を見る。定時連絡の時間ではない。


(ひょっとして、何かあったんでしょうか)


 そうだとしたら、この電話、良い知らせなのか、悪い知らせなのか。


「北の港湾エリアで、先ほど不審人物を発見しまして」


 海箱ユユは思わず、身を乗り出した。


(それって、もしかして・・・・・・)


 峰谷マノという可能性もゼロではない。今夜、黒幕サイドが行動を起こすとしたら、変身能力を持つ彼女は打ってつけだ。


 それでパトロールに見つかったのかも。たとえ姿を変えていても、あやしげな行動をしていれば、職務質問の対象になる。


 海箱ユユは期待しながら尋ねる。


「その不審人物、捕まえましたか!」


「もちろんです!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ