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のんびり魔法使いは楽しく生きていきたい  作者: らんたろう
第九章 ハムシンカム教国
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198話 怪しく動く者たち

前回のお話:ランドルフ達はまだまだお子様だった。


誤字報告感謝です。


 貧民街のとあるボロ小屋の地下室でフーテンがカンテラの光を頼りに手紙を読んでいた。


 「やはりメロファクトの奴が窓口になっていたか。しかもガエターノと通じているだと? 組織ぐるみで何をしているのかと思えば……。あいつめ、本気で四百年前の兵器が動くと思っているのか? もはや王国はないというのに」


 虚しい顔をしたフーテンが手紙の最後にある滅んだはずのカルーウィン貴族の捺印を見て呟いた。


 「まずは隣街のガエターノの所に忍び込むか」


 フーテンがマスクやフードを深く被って顔を隠す。

 上の部屋に上がると数名の男が居てフーテンの姿を見ると近づいて来た。


 「親分、何かわかりましたか?」

 「どうやら奴らはガエターノと協力して四百年前の兵器を海から釣りあげようとしているらしい」

 「それはそれは、どでかい獲物を狙ってますね。本国の奴らに自慢(脅迫)するつもりですかね?」

 「どうやらその様だな。釣り上げたとしてもまともに動くとは思えないが……吾輩はちょっとガエターノの所に忍び込んで調べてくる」

 「わかりました。我々も羽振りのいいやつにそれとなく聞いてみます」

 「あまり無茶はするなよ」

 「わかってます。それと、気になる事が一つ」

 「なんだ?」

 「話に関係することだと思いますが、教団暗部の赤頭巾の奴らが数名この貧民街に紛れ込んでいたようです」

 「何? 吾輩の事がばれたのか?」


 赤頭巾と聞いてフーテンの表情が険しくなる。


 「いえ、どうも連中、近くで難破してた船を調べているみたいでした」

 「でした? 今はもういないのか?」

 「恐らくは。船が居なくなって奴らもそちらを追いかけたようです」

 「何の船かわかるか?」

 「どうも他国の商船のようで、どこの商会だとか国の旗かは学の無い俺たちにはさっぱりだったんですけど……すみません」


 他国の商船をこんな貧民街までやってきて態々国の暗部が監視する? 何か重要な物資か人物がいたのか……?


 そこまで考えたフーテンの頭には昨日捕らえられてしまった相手の姿を思い返した。


 あのお兄さんたちが乗っていたと見て間違いないな。

 しかし、確かに力関係では強い人物だが貴族という風には見えなかった。どちらかと言えば狩人に近い。頭は良さそうだが、もし貴族ならなぜわざわざ商船に乗ってくる? お忍びで来る理由は? 或いはどこか大きい商会の息子か何かか? 監視されている理由はなんだ? 難破したように見せかけてガエターノと繋がっているのか? だとしたら監視されても仕方がないが……。


 いくら考えても答えは出てこなかった。


 「まあいい、今は考えても仕方ない。ちょっと出かけてくる」

 「親分、赤頭巾の連中にはお気をつけて。業を煮やして出てきてもおかしくないですから」

 「そうだな。今回奴らがここに来たのが吾輩の事でなくてよかった」


 赤頭巾に関しては少しヒヤリとしたが、謎の観光客の行動には気になる部分がある。

 だが―――。

 

 向こうが関わるなと言ってるんだ。吾輩が下手に探って昨日の二の舞になるのは此方から勘弁願い所だよ。


 ボロ小屋を出たフーテンが壁を乗り越えて隣の貧民街へと駆け出した。









 「港だけでなく朝から街の方も凄い賑わいだね」


 ランドルフ達は早速朝から魔道具店に向かおうとウィステリアが辺りを警戒する中、ペティーロン宮殿前の大通りを歩いている。


 「セルリア(王都)に負けないくらいの人の多さですね」

 「あちらこちらから食べ物の良い匂いが漂ってくる。これではカレンの奴、まともに仕事ができないのではないか?」

 「それは困るけど、ありえそう」


 三人がそう言って笑いあう中、カレンの方はというと……。


 「クイーロ(ランクイロ)様、あれ美味しそうですっ!」

 「ちょっと、さっきからあれもこれもって、全然足が進まないんだけど」

 「でも確かに美味しそうです。あなた、私も食べてみたくなっちゃった」

 「ちょ、ちょっと買ってきます!」

 「あ、おぃ!」


 妻役のスゥープレティが興味を示すと、ランクイロの制止も虚しくカレンが素早く屋台の列に並びに行ってしまった。

 偽名でランクイロの事を呼ぶことは忘れていないが、仕事中であるという事は忘れているようだ。


 「これではなかなか先に進めませんね。すみませんが、私は別行動で情報集めに行ってもよろしいでしょうか?」

 「はぁ……。仕方ない、お願いできますか?」

 「お任せください旦那様」

 「ハーディさんにそう言われるのもなかなか慣れないなぁ」

 「早く慣れてくださいね。では失礼」


 ハーディも静かに人混みの中に消えていった。


 「実に纏まりがない。所詮、僕の統率力ってこんなもんだよな~」

 「まぁまぁ、観光に来てるんですから、らしくていいじゃないですか」

 「はぁ……」


 ランクイロ一行の行動はカナンカの予想通りであった。






 「ふ~ん、一応冷蔵庫らしいものはあるじゃん。暑さ対策に送風機まであるとは、暑い国だからこれは必須アイテムだな」

 「技術的にはレスタイト王国の方が上とはいえ、それほど差がないように思えますが……」

 「結構種類が豊富ですね。見たところ値段も高いとはいえ、手が出ないほどではないですけど」

 「それは俺たちの基準で言えばの話だ。この国の一般人の給料がどれくらいかにもよる」

 「確かにそうですね」

 「じゃが、酒の値段を考えると左程変わりはなさそうじゃがの」

 「酒の値段で考えるとはカナンカらしいな」

 「そうじゃろう、そうじゃろう」


 褒めてるわけじゃないんだけどね。本人がそれでいいなら何も言うまい。


 ランドルフ達は魔道具店を訪れて物色していた。

 置いてある商品の種類も多少の違いはあれど、生活用品はレスタイト王国とあまり違いはない。


 となると魔石関係が高いのかな?


 「すみません!」


 ランドルフが店員を尋ねると、金持ちを予感させる従者を連れた若い夫婦とでも思ったのかニコニコ笑顔で近寄ってきた。


 「小さめの送風機が欲しいんですけど、一番小さいのはこれですか?」


 本気で買おうとは思わないが、情報を引き出すために購買意欲を見せる。


 「当店にある物の中ではこれが最小ですね」

 「もう少し小さい物があればと思ったんですけど」

 「確かに部屋に置くのでしたら少し場所をとるかもしれませんが、この送風機は部屋全体に風を送るのと一か所だけに集中して風を送るのを分けられますので便利ですよ?」

 「なるほど。魔石はどれくらいの大きさのものを置けばいいんですか?」


 魔石の話になると店員が若干困ったような顔を見せたが、すぐにまた笑顔になって答えた。


 「砂漠大サソリの魔石一つで一日はつけっぱなしにしてもらっても十分動きますよ。大きさはこれくらいでしょうか」


 店員が握り拳を作ってみせた。


 「う~ん、夜寝る時につけっぱなしにするにはちょっと魔力の消費が気になりますね」

 「そうですか~。巨大な砂漠ミミズが数体現れてから狩人の方々もあまり砂漠には乗り込まないようですからね。砂漠の迷宮も遠いですし。それにもうすぐ新しい教皇選定の時期ですから、教団へ討伐を要請しても腰が重いですし、怪盗フーテンの騒ぎもありますから……。海の魔物の魔石はそもそも倒すのが陸地に比べて一苦労ですし、大きさも小さいですからね。最近では新しい魔石を買うのなら自分で魔力の補充をする人が多いようです」

 「でも時間を取られますし、あまり魔力を消費しちゃうと力が抜けて仕事ができないですね」

 「おかげで我々も商品が売れにくくなって困ったものです」

 「魔石に魔力を込める仕事なんて今なら儲かりそうですけど」

 「恐らく一時の事だと思いますけどね」


 などと適当な話をして何も買わずに店を後にした。


 「魔力の供給が足りてないからだったんですね」

 「巨大な砂漠のミミズか。あと迷宮も気になるところだが」

 「迷宮にはそのうち挑戦してみたいところではありますけど」

 「冷えた酒が飲めぬのか、困ったものじゃ。どれ、我が」

 「倒すなよ。余計なことはするな」

 「む~……」


 倒してしまったら絶対に目立つじゃないか。


 「ってか自分で冷やしたらいいじゃん」

 「馬鹿者! 急に冷やしたものじゃと味わいが変わってしまうではないか」

 「確かにそうかもしれないけど、完全に密閉してやれば味が抜けるとかそういうのはないと思うんだけどなぁ……。密閉する技術がないか。そもそも既にコップに出されたものを冷やすんだったらあまり変わらないと思うんだけど……」

 「はぁ~、やれやれ、ランドルフは酒の事をわかっておらぬな」

 「なんかむかつく言い方。そもそも俺はお酒はまだ飲まん」

 「勿体ない、人生を無駄にしておる」


 カナンカの拘りは深いようだ。


 「まあいい、他にも鍛冶屋とか見て回って帰るぞ」

 「旦那様、ついでにお土産の下見をしましょうよ」

 「そうだな、みんなにお土産買って帰るか」


 静かに後ろを歩くウィステリアは、こちらの事を探られているかもしれないのに呑気なものだと思いながらも警戒を緩めなかった。







 フーテンはガエターノが支配する貧民街に入り込み組織の支配下にある港へと侵入していた。

 港の事務所に忍び込むと、ガエターノらしきリーダー風の男が急ぎ足で出ていくのを見て後を付けた。

 後を付けると倉庫がたくさん並ぶ中の一つに入り、フーテンも倉庫の窓から中へと侵入して高い場所から様子を眺めていた。


 「何だと! 契約と違うではないか! ちゃんと契約を守れガエターノ!」

 「はっ! 契約を守っていないのはそっちだろう。前金で金貨千枚。見つけたら金貨三千枚と諸経費を払うって内容だったはずだが? 諸経費の金貨千枚が足りねぇ。持ってくるまでこれは渡せねぇな」


 どうやら教団側とガエターノ側で揉め事が起こっているようだ。

 ガエターノが近くにあるワンボックスカー程の大きさの汚れた金属の塊をペシペシと叩いて挑発する。


 「あっ、手が汚れちまったぜ」

 「親分、どうぞ」

 「千枚だと!? ふざけるなっ! どうやったらそんなに経費がかかる!」

 「船の手配、引き揚げ作業中に魔物に襲われた部下の治療、慰労のために酒や女の手配、他もろもろだな」


 目の前で怒鳴っている教団側の男達に興味なさそうにして部下からもらった布で手を拭くガエターノ。


 「はぁ……。これでもありがたいハムシンカム教の皆さまを思って値引きしてるんだぜ? なのにだ、何故最初から諸経費が含まれた金額を持ってこないんだ?」

 「普通はそんなにかかると思わないだろう!」

 「お前ら馬鹿か。これだけ大掛かりな引き上げ作業をやればそれだけ人手がいるのは当たり前だろう。ちょっとは考えろよ」

 「だとしても金貨千枚は多すぎる!」

 「ともかく、金を持ってこない事にはこれは渡さん。どうせ国中の信者から金をせしめてんだからけち臭いことを言うなよ」

 「ぐぬぬ~」

 「あ~、そう言えば怪盗フーテンだっけ? あいつに盗まれて金がないとか、そんな事は言わないよな~?」


 ギロリと鋭く相手を睨みつけるガエターノ。


 「……チッ、わかった、明日には用意して持ってくる」

 「メロファクト様、よろしいのですか!?」

 「仕方ないだろう!」


 ここでいがみ合っても仕方がないと思ったのか、メロファクトと呼ばれた男が悔しそうに怒鳴る。


 「そうだ、それでいい」


 ガエターノがそう言うと、後ろにいる部下たちが思い通りに事が運んで嬉しいのか下劣に笑う。


 「金貨千枚だな! 後で増やされても適わん、ちゃんと紙に書いてもらうぞ」

 「信用の無い事で。おい、紙を用意しろ」


 しばらくして部下が持ってきた紙に金額を記入してサインする。


 「無くすなよ」


 ガエターノが紙を手渡すと、内容を確認したメロファクトが怒ったまま倉庫から出て船に乗って島から去っていった。


 「へっ、ちょろいもんだ。おいお前ら、商品をしっかり見張れ、ついでに掃除しろ、乾いたら臭うぞ」


 そう言ってガエターノも倉庫から出ていった。


 「これはいいことを聞いてしまったニャ、またメロファクトの屋敷に忍び込んで残ってる金を奪えば奴らに荷物が渡されることはないニャ」


 悪巧みを思いついたからか、小声で呟くフーテンの語尾が変わってしまっていた。


 しかしあれはなんだ? 見たところ金属でできた筒だが……。ここで壊してしまうのは無理だな。


 壊してしまうには一苦労しそうな金属の塊である。音を立てて壊そうとすればあっという間にばれて囲まれるだろう。


 流石に三回目ともなればメロファクトも油断はしていないだろうし、取引がかかっているから警備も厳重……。金を持ち出したところを襲うか?


 今夜に忍び込むかはたまた明日まで待つか、フーテンは一旦アジトに戻って部下と相談することにした。

お読みくださいましてありがとうございます!

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