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フグに変身しなくて良かった!適当な噂が新たな伝説を生む時

やがて雷の煙が夜の闇の中へと消えていくと、静寂の中に新たな気配――どこか人を欺くような存在感が、影を切り裂くように現れた。

音もなく、均等な足取りが屋上の縁を踏んだ。姿を現したのは一人のエルフの少女だった。頬を包むように垂れた黒く短い髪、そして洒落た眼鏡の奥で鋭く冷静な知性を湛える紫の瞳。

「サティリア……」僕は仮面の奥で、彼女の名を囁いた。

サティリア……僕がひそかに「囁きの淑女」と呼んでいる彼女は、噂のネットワークを統率する頭脳であり、僕の嘘を広め、人々の心にそれを植え付ける真の原動力だった。レイラと同様、サティリアもまた、この世界に元から存在していたわけではない。以前僕がとっさに口にした「情報網を統率する僕の秘密組織」という嘘から生まれた存在だった。彼女は、その完全な思考、存在感、そして過去とともに実体化し、僕が口にするあらゆる作り話を、疑いようのない神聖な真実だと絶対的な確信をもって信じ込んでいた!

サティリアは軽く眼鏡の位置を直すと、均整の取れた仕草で深く、敬意と威厳に満ちた礼をした。

「我が君……見えざる支配者。」

僕は姿勢を正し、仮面の奥から籠った低い声を発した。

「サティリア……お前に、新しく重要な任務がある。」

彼女はゆっくりと顔を上げた。紫の瞳には強い集中の色が宿っていた。

「仰せのままに、我が君……任務の詳細をお聞かせください。」

僕は両手を背中で組み、冷たく告げた。

「首都の隅々に、新たな噂を流してほしい……民衆にも貴族にも、『見えざる支配者』が独自の、恐ろしい魔法の力を持っているという話を広めるのだ……」

そこで僕は、不意に言葉を止めた。数秒間、沈黙が流れた。

サティリアは優しく首を傾げ、いつもの落ち着いた口調で尋ねた。

「具体的には、どのような力でしょうか、我が君? 人々に、あなたの猛威をどのように想像させたいのですか?」

その瞬間……僕の頭の中では、滑稽な内心の独白が壮絶な戦いを繰り広げていた!

(くそ……くそっ! まだ力の種類を考えてなかった! 何を選べばいい!? 風を操って敵を切り裂く力にするか? それとも絶対零度の氷で、劇的な悪役感を出すか?……それとも……それとも魚に変身する力とか!? はぁ? いや待て……空気中で呼吸するフグに変身した自分の姿って、一体どんなことになるんだ!? ああ神様、それじゃ世紀の笑いものになってしまう!)

僕はそんな馬鹿げた考えを即座に頭から振り払った。

(しっかりしろ、オリオン! 今は無駄話や魚の冗談を言っている場合じゃない! 聞いた瞬間に息を呑むような、恐ろしく、暗い力が必要なんだ!)

最後の閃きが頭に浮かんだ瞬間、仮面の下で僕の口角が持ち上がった。

僕は伝説の冷徹さを取り戻し、夜の月を見上げてから、サティリアのほうに向き直り、伝説の重みを帯びた声で言った。

「見つけたぞ……サティリア、噂を流せ。」

「『見えざる支配者は、この世界に属さぬ炎を操ると言われている……肉体より先に、魂そのものを喰らう炎を。』」

僕は芝居がかった威厳ある口調で言葉を締めくくった。サティリアは口角をわずかに、しかし知的に上げて微笑み、指先で眼鏡の位置を優雅に整えながら、恭しく頭を下げた。

「仰せのままに、我が君……この噂は、日の出を待たずして、誰もが口にする話題となりましょう。」

サティリアは、まるで最初からそこにいなかったかのように、夜の闇の中へと姿を消した。こうして、企みの糸が網の中で動き始めた。

王国の中心部、杯の音と焼き肉の匂い、そして古い木材の湿った香りが漂う、客で賑わう酒場の中――

一人の男が、隣の席の友人に身を寄せ、目を見開きながら用心深い声で囁いた。

「なあ……見えざる支配者の最新の噂を聞いたか?」

友人は杯を手の中で回しながら、興味なさげに尋ねた。「また何だ? 今度は空でも飛んだのか?」

最初の男はさらに顔を近づけ、頭がテーブルに触れそうなほどになった。

「奴は剣なんて一切使わないらしい……敵をぞっとするような炎で焼き尽くすんだと! この世界に属さない炎でな!」

もう一人は顔をしかめ、大声で嘲るように笑った。

「あり得ないな! 炎の色は紫か赤に決まってる、貴族どものたわ言だ!」

だが、不意に――隣の席に座っていた見知らぬ男が口を挟んできた。質素なコートを身に纏い、市井の人々の中に紛れ込むような格好をした男――サティリアの緻密なネットワークの一員だった。彼は真剣な表情で二人のほうに顔を向け、誠実で動揺したような声で囁いた。

「たわ言なんかじゃないぞ……俺の従兄弟が東地区で見張りをしてるんだが、あいつがきつく誓って言うには、焼け焦げた瓦礫をこの目で見たそうだ! 傭兵たちの死体が転がっていて、それを灰さえ残さないほど眩い炎が喰らい尽くしたらしい!」

嘲っていた男の血の気が引いた。彼は苦しげに唾を飲み込み、怯えた様子で周囲を見回した。

そしてその瞬間……隣の席の耳がその言葉を捉えていた。囁きはそのテーブルから酒場全体へ、酒場から扉の前の物売りへと忍び込み、やがて首都の通りへと飛び出し、人々の口から口へと、野火のように広がっていった!

物語が語り直されるたびに、それぞれの人間が、自らの恐怖に満ちた想像から、より恐ろしい細部を付け加えていった!

こうして……何もないところから……新たな伝説が生まれたのだった。

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