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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第二章 counter Player Killer Council
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#036 After the Killing

 あかん、順調にやばい展開になってきてる。おわびをしようなどとはまったく考えていないのですが、3月11日に人の死を笑ったのはさすがに不謹慎だったかな、と思っています。


 原発に近いところに住む私なので地震が来たら一発で住む土地を追われる立場。そんな立場のこんなクズが生きていけるとは……。単に偶然なのか、地層も平和に暮らしたい皆さんに優しくしていただいてその恩恵をあずかっているだけであるのか。震災被害者に形だけでも冥福をお祈りします。


 さてそんなことは関係なく、今日も私はキーボードを叩いているわけで。


 尊い皆さんに比べるとゴミのような自分の命に感謝しつつ、お届けします。

 おはよ、と言った美沙がいつもの顔をしていたので俺は安心した。


「なあ、結局あのあとどうなったんだよ」

「気絶してたんだっけ……。あのあと装備成長したの、それから結局負けちゃった」


 負けちゃった、と素直に言えるあたりはちゃんとした精神状態に戻ってるんだろうな、と思いはするのだが、諦めがにじむ声は前とは違う。


「レシピがもらえたから結果オーライなんだけどな、投げ武器が全部ダメになってるんだよ。今日はインしても素材買ってやらなんやら生産し通しだろうな」


 まあ、それはそれで楽しいんだけどなと付け加えるとならいいよねと言われてしまった。我が妹よ、そこはねぎらってくれるところだと思います。


「ふう……。なんかもう、終わったって感じだよな」

「あんまり終わってないよ」


 まあ、これからが始まり的なものもあるけど。普通のネトゲなら転職してちょっとだったり、そもそもレベルが100以上まであったりしてスタート地点からどれくらい離れただろうってくらいだ。まだまだ推奨レベルの高いダンジョンやら装備やらはあるわけだし、ストーリーモードもぜんぜん進んでいない。


「ミサ、ストーリーモードってあれからなんかあったか?」

「ううん、なかったけど」


 名もなき者を倒して、それで終わりだったらクソゲーだろう。たったそれだけでこの世界の背景は説明終了、魔物はいるけど何にも脅かされていませんは答えにならない。魔王なりがいるのは名もなき者の発言で明らかだし、あれは相当の下っ端らしい。


 もっと上の立場のやつがしていることがあるとすれば、何だろう?


「いや、まさかなあ」

「どうしたのお兄ちゃん」


 エイルン以外の街は「未発見」だ。それが名もなき者の仕業だったら、どうだろう。街を見つけ出すこと、というより元に戻すことがクエストになるんじゃないだろうか。


「うーん…… それってさ、参加人数が限られてこない? ストーリー1を終わらせられた人ってたくさんいるけど、集められるのかなあ」


「そ、そこんとこは運営が、さ。デウス・エクスマキナってやつだよ」


 すべてを解決してくれる便利な存在…… というわけでもないだろうが、実際ネトゲにおける運営というのはそれに近い。


「現実的な方面に戻るけど」

「お、おう」


 なんか言い方が俺っぽくなってないか。


「お母さんが服を買いに行くの、着いて行っていいんだって」

「おう。そいじゃ俺もなんか買うかな」


 適当に言ってみたが、悪くない提案だ。まともな服を持っていないわけじゃないが、外に着ていってちゃんとしていそうな服は少なめに思える。リア充くさい服でも買うか。


「って、なんでいきなり急展開してんだよ!」

「ん、着いてきてたよね?」


 着いて行ってたけども。


「服とか買うんだからけっこうお金いるよね……」

「そうか? まあそうかもしれねえけど」


 アクセサリーやら買うつもりか、と思って俺はゲーム脳を嫌になった。あかん、あかんで。服とか、ゆうても装備品ゆう意味やないんやで。


 まあ、いつものように父さんが車を運転して一般とは言えないが住宅街を抜け、さほど高い建物があるわけではない街並みを抜けてデパートに向かう。普通の量販店でもいいだろうと父さんが言った途端にすんごいにらまれている。正直俺もびびった。


「今日はミサの気分転換に来たの。普通のお店なら歩いても行けるでしょう?」

「あ、ああ、そうだな。普通は行けない場所にいくべきだな、そうだ」


 街にはけっこういろいろある。美沙が友達とよく行くカラオケの店とか、あまり行かないものの飲食店やらを買い食いするには最適の商店街やら、もちろんこれから行くデパートもある。そんな中に俺がアルバイトに行っていた個人経営の喫茶店もあるのだ。


「トシが言ってた喫茶店って、あそこで合ってるの?」

「うん、あれ。雰囲気もいいんだ」


 母さん辺りにはよく似合いそうだよな。


「またアルバイトしようかな」

「おいおい、申請とか大丈夫なんだろうな?」


「だいじょぶだいじょぶ、適当だからあの学校」

「そうだよね」


 美沙も一緒にアルバイトしていた。いつでも歓迎だよと言っていたように思うので、またアルバイトしていいっすかーと適当に尋ねても怒られなさそうだ。


「学校に電話入れてオッケーだからさ、大丈夫だよ」

「うわあ、そりゃまた。すごい学校だな、入れてよかったよ」


 優しいおじさんだからと言って何かのラスボスというわけではなく、旗山さんはいいひとだ。まかないもおいしいし…… いやあれ目当てじゃない、神に誓う!


「お兄ちゃん、あそこのまかない美味しいよね」

「ああすごくうまい」


「即答するんだな……」

「私の料理より?」


 それは答えるのが難しい。


 母の味というのはいつになっても思い出すものだし、なんなら小説なんかで「老人になってから手間暇かけて作ったのは母の味だったぜ」的な展開もある。


「あれはさ、レストランとかの「うまい」だよ。家庭の味じゃないけど、時々食べたくなるような味。母さんのはいつも食べる、絶対忘れない味」


「あらほめてる?」

「俺も母さんの味が好きだぞ!」


 みんながにこにこしている、いつもの俺たちだった。




 大理石でできたデパートの壁面に俺が写るのを見て、いつもと何も変わらない俺がそこにいるのを確認した。美沙も写っているが、危険そうな兆候はない。


 週末というわけでもないが、客はそこまで多くなかった。デパートにいつも何かを買いに来るような人ばかりがこの町に住んでいるわけじゃないんだろう。何でもそろう店じゃないが、いつもそこそこにぎわっている。


「俺、本屋さんに先に行こうかな」

「おう、いいぞ」


 父さんの了承を得て俺は三階に向かう。三階の本屋は品ぞろえが良くて、若者受けするものだけじゃなくて専門書や一般小説もたくさん置いてある。


(男性しぐさ辞典、デート基礎論、逆レの作法…… 失敗しない女性の服選び、これだ!)


 どうせまた美沙は俺にも選んでと言いだすに決まっている。微妙な顔をされたことは一度もないが、美沙が俺に気を遣っていない保証はどこにもない。対処療法では意味がないということは、先回りしておいて損はないということでもあるだろう。


 立ち読みしていて店に怒られるような不寛容な店ではない。


(季節に合わせたものを…… ふむ、色は必ずしも揃えなくていい)


 そう思っていたら背中にむにゅっと何かぶつかった。


「す、すいませんっ」


 すごい高い声で叫んで逃げていった。おおかた俺がラッキースケベなことになっているうちに女の子が恥ずかしがって逃げたっておちだろう。胸でも当たったか。周りの目が冷たいが、残念なことに楽しむ余裕はなかった。たっぷり楽しんだあとで怒られたなら一時間の説教でも耐えるが、これは理不尽だ。


 そう思いながら、基本から統合して考えてみた。


 とは言ってもけっこう矛盾したりしていて分からん。シチュエーションによっても選ぶ服は違うわけで、しかもこれよく見たら女向けの本じゃねえか。


 ということは今のシチュエーションが何なのかということを考える必要があるわけだ。明らかにお出かけ…… いや美沙のことだからデート扱いするかもしれん。めちゃくちゃ楽しそうだったしいたずら心満載な表情だったからだ。


 何か仕掛けてくるつもりか。半ば冗談めいた思考でそう思った。


 そろそろ周りの目が痛すぎると思ったら女性誌と女性の体に関する本のコーナーにいたわけか。やけに表紙にピンク色が多いと思ったぜ…… とモノローグのようにあほらしい思考を巡らせつつ退散し、漫画やら青年誌の多そうな所に向かう。あんだけ人いるってじゃあ少年どもはどれだけいるんだよ…… と思ったらそうでもなかった。


 怪物と人間が争う話とか異能の話とかが大体の「躍動(ジャンプ)」の風潮で、昔から連綿と続くバトルものだとか最近増え始めたクリエイターの物語だとかもある。アニメ化された作品も当然たくさんあるし、ここに乗るというのは少年マンガ家の第一目標みたいなものだ。


 というのは画面の方のネトゲ仲間の受け売りで俺自体は少年誌をあんまり読まないのだが、話題になってる作品やらアニメ化された作品くらいは見る。王道というのは王道でさして面白いわけでもないし、俺自体はそんなにアニメを見慣れているわけでもなければテンプレに飽きているわけでもないので王道より邪道が好きだ。


 ざっと見渡したが、とくに興味を引くものはない。まだグラビアやらに興味が出てくるような感じじゃないし、エロ本には大いに興味があるが読んでいるところを見られたら間違いなく首がもげる以上に恐ろしいことが起こるだろう。


 漫画のコーナーに移動したが、やっぱり特にそそるものはない。というかエロ本と大差ないものの場所だった。裏側を見ても読んだら後悔しそうなタイトルのものしかない。じゃあ何がいいんだよと自分でも腹が立ってきたが、アニメの原作やらをやたら押している作品も信用ならないし、あんましマイナーなやつはここでしか扱っていないなんて恐ろしいことが起きたりもする。


 大昔の小説投稿サイトで流行ったVRMMOものは、この時代の到来を予感して書かれたものなのだろう。ということは当時の「VRMMOとは何か、存在意義はあるのか」という感性を垣間見ることができるわけだ。


 漫画で見ても大して面白くなさそうだが、まあいい。試すつもりで買おう。






 とか言いながら五タイトルほど買ってしまった。部屋に本が増えるのは分かっているし漫画本だから小説よりスペースを取る。


 超有名作品は世界が広がりすぎていてどれから手を付ければいいのかわからなかったので、必然的にマイナー作品になってしまう。とは言っても外伝が出ていない好評の作品というのもあるにはあったので買った。どれもいちおう面白そうだ。


(はすに構えても面白くない、か……)


 物事に対して斜に構えて見るのはよくない、と父さんも言っていた。そうは言うけど、小説投稿サイトなんていう自分を出せる場所で、やっぱり他人と同じように振舞うなんてもったいないように感じる。自分を謳歌すればいいのに。


 衣料品のフロアは二階と四階だ。そのうちのどっちに行ったのかは分からないが、母さんが父さんを付き合わせて買い物に行った辺りは婦人服のフロア、上側にいるとみるべきだろうか。


 婦人服のフロアは、エスカレータに一番近いところがコートを売っていた。コートの中を突っ切るのも悪いが、どこにいるんだろう……


「少年、女装に興味があるのかい」

「ないっす」


 凛とした声で言われたがノータイムで否定する。


「さっきは女性の服の本、そして今婦人服のフロアをのぞいている……。導き出される結論として悪くないと思うが」


「違いますよ、家族で買い物に来たんすよ。本を買い終わったんで母さんと妹を探しに」


 ふむふむ、と言っている声には何だか聞き覚えがあった。


「あれ、女の子を前面に押し出すあたりどっかに見覚えが……」


「ああ、アウルムオンラインを知っているだろう? 君の妹は今私の店にいるよ。君とは何回か一緒に戦ったことがある。なすこだ」


 え、なすこさん。


「なすこさん! そうなんですか!」

「大きな声を出さなくていい。案内しよう」


 つけられていたらしい。


 コートの次には靴が待っていた。その次はバッグだ。


「君の妹さんはいい子だ。素直だし可愛らしい。女の子として申し分ない。最近は顔もよく見ていなかったから不安だったが、性格を矯正されたと笑っていたよ」


「そうっすか……。今日はいつもみたいにおとなしい感じじゃないんですね? いつもはなんか三つ編みとかで子供っぽい感じに見えるんすけど」


 いやいや、私が子供っぽく見えるかいとなすこさんのリアルらしい女性は笑う。全然そうは見えない、ってか大人の女性って感じっすねというとその通りさ、と彼女は言った。


「コンプレックスなどではないんだが、スタイルが良いだの美人だの囃し立てられるのは嬉しい。だがどうしても裏を見ようとする癖が抜けなくてね……。ま、考えすぎだってことはよく分かっている。だが裏のない発言の方が珍しいものだ」


「きついっすね」


 横合いにはスラックスやらブラウスが下がっている。


「ま、ちょっとした逃避願望、このあたりだろうさ。ほら着いた」

「あ、はい。総合っすか」


 ずいぶん向こうに水着っぽい感じのマネキンが見えた。さすがに冬に水着を着てるわけじゃないだろうから下着だろう。マネキンは目の前にもあって、マネキンじゃなければなかなか決まった感じだった。


「総合だとも。上着から普通の服、肌着まで全部あるよ。変装用の品も扱っている」

「そこまで……。あ、ところで妹はどのあたりに?」


 いちおう知り合いではあるが、ミサのリアルネームが美沙だということを知っているかどうかは分からない。伏せておいた方がいいだろう。


「ああ、奥にいるかな。ワンピースなんかの試着をしていたはずだ」


 入り込む勇気はあるものの、なんだかやなことが起きそうな予感がして俺はここで待つことにした。買ってきた本を読む時間もじゅうぶんあるだろう。


「その本は何だ、トシ」

「あ、父さん」


 母さんは試着を何回するつもりか分からないからな、と父さんは冗談めかして言った。


「店員さんが泣きそうだったよ」

「それって具体的に何回くらいなのさ」


 うん、と適当な答えに口をつぐんだ父さんを見た俺は、父さんが何か言おうとしているのを悟って黙る。


「あのな、トシ。俺たちの家族構成は覚えてるな」

「うん」


 赤の他人同士が結婚して、子供もぜんぜん違うところの子供を二人もらってきた。全員が全員、まったくの他人ということだ。


「母さんがな、やめると言いだした」


 俺は重力の方向が変わりでもしたかのように立ち上がった。


「な、なにを?」

「治療をだ」


 父さんは沈痛な面持ちのまま、目を閉じた。

 フィクションにおける不幸ってのはどういう立ち位置なんですかね。ということを誰かが悩んでいたような気がします。悩む必要もないじゃないか世界一不幸でもオッケー! とは言えませんねえ。


 まあ他の人に読まれるまでは頭の中の映像なり文字列であるわけですから実質ほかの記憶やらなんやらとちっとも変らないわけで、特別な意味はないんですかね。設定という意味では毎度その場で思いついたことを書き散らしているスキルノートやらと同じということになりますが。


 自己満足としてリアルにしようとしているだけであって、真摯に向き合っているわけではない、ということをここに明記しておこうと思います。誰がどんな不幸を抱えていようが、知ったことじゃありません。立ち入れる問題じゃないですからね。デリケートでもあるかもしれないけど、実在しないんだから。


 という感じで、私は他人の不幸を捉えている。


 スキルノート

「クリティカルアップ」


 戦闘での「クリティカルヒット」(運に左右され出現する、通常の一撃よりも強力になった一撃)発生確率が上がるというスキル。


 というと超強力なのではないかと疑ってしまうが、通常のクリティカルヒットは扱っている武器に関係するステータス(弓でいうDEXや魔法でいうINTなど)を上げると出現しやすくなるものであり、ステータス抜きでピンポイントに「クリティカル率」が上がっても仕方がない。


 またクリティカルに頼っていると通常の一撃の威力が落ちるという意見もあったり、そうそう納刀できないのに「初撃クリティカル」という進化が望めるなど人を虚仮にしているとしか思えないようなスキルである。派生機能の一つにはもちろん「LUK+10」も含まれているが、それだけのためにスキルホルダーをひとつ占有してしまうのもいかがなものかという意見が多い。


 大量の同じ武器を一回だけ斬撃に使ってすぐインベントリにしまう、一本一本を完全に使い捨てるなどというバカバカしい戦闘が行えるようなら取るといいかもしれない。例の投げナイフさんが使っているらしいが、実用的な使い方が見つかっていないいま、教えてくれないからと言ってイケズとか言わないようにしよう。

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