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Aurum Online [Shooter]  作者: 亜空間会話(以下略)
第二章 counter Player Killer Council
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#021 Sorcerer(seven point eight)

 そういえば名乗ってなかったひと多いですねえ。考えてないわけじゃなくて手が自動的に書いているシーンだと設定が軽視されやすいということだと思いますが、気を付けないと。


 どうぞ。

「そうです。収穫量を上げる、そんな地味な効果ひとつでエイルンに出回る回復アイテムの質が倍以上に伸びました。この魔法はもっと大きな大変革を起こせる、そう思ってもっと強化しようと思いまして。明後日のトーナメントにも出る予定なんですよ」


 俺はこの男がネタ集団に入っているのだろうと思いはしたが、それを口に出すことはしなかった。


「すごいんですね」


「そうですよ。そもそも量と質は釣り合わないものとして見なされていますが、回復アイテム、例えば「ポーション」を作るのに必要な素材を二倍の量に増やすと名前は同じでも効果が三倍ほどのアイテムになるのです。戦いに出るには力が足りませんが、私は裏側からこのゲームを変革してきました」


 今の流れを作った人、ということなのか。偉人レベルですごい。


「俺は戦いしかできないっす」

「もしや、例の投げナイフさんですか?」


 知れ渡ってるのかよ。


「もう一度夢を見させてくれる人、というところではすごいかもしれませんよ。これまではどうしようもなかったものが強くなる、それだけでもはた目には面白いものです。そういえばお聞きしたいんですが…… 私はいくつくらいに見えますか」


 どういうことですか、と聞くと老け顔なんですよ私、と言われた。


「この間もおっさんと言われてしまってずいぶんショックだったんです。実際に三十代くらいに見えるんですか、私の顔は」


「そ、そうっすね、父さんと同世代くらいには」


 三十代くらいだ。どう見ても三十代なのだが、老け顔ということはそうじゃないのだろうか。


「まだ大学生なんですよね……。あなたは学生さんですよね?」

「はい、まだ」


 正確な年齢は伏せるのがセオリーだ。


「同年代のはずなのに……」

「だ、大丈夫っすよ。風格があるってことじゃないかって思いますよ」


「そうですよね」


 暗い声からは感情が好転したような感じを受けられない。


「……そうですね、親切な方にはお礼をしないと。MP丸薬の噂は知っていますか」

「あっ、はい。回復速度が倍以上になるとか」


「あれよりすごいものができたんです。有名人がいい人だと分かったのでその記念に、お披露目しましょう」


 さあどうぞ、と近くの小屋に案内された。


 小屋は小屋で、それ以外の何かではなかった。ただまあ錬金術師の小屋だろうなと思うような異臭を漂わせるガラス容器がいくつもあったのは普通ではないだろうが、それ以外は至って普通で、農具小屋と間違えても不思議ではない。


「クエストをクリアしたらこんな場所をもらえたんです。ここに付随するストレージもあるし、なかなか便利なものですよ…… おっと、薬でしたね」


 男が手に何かを掲げる。見ると錠剤のようなものがいくつかビンに入っていた。勧められた席に座り、同じく席に座った男が身振りを交えて説明を始める。


「これがMP丸薬です。何も行動していないときに起きるMP回復の速度を二倍に向上させる超強力なアイテム、そういう触れ込みでごく一部にのみ流通していました」


「それ、買えるものなんですか」


 鑑定による値段は安めですが、と男は付け加えた。


「失礼、名乗っていませんでしたね。私のキャラクターネームは硬度7.8です。市場の原理は学校で習いましたか?」


「あ、父さんが言ってたんでちょっと知ってます。数が少ないと高くなるとか」


 そうです、そうですと硬度7.8というらしい渋い男はにこりと笑う。


「価値が高くなる、金に糸目を付けない人が増えると言うことですね。金額で糸目を付けない人がたかるのは分かっているので、タイヨウ君にお願いしてメールで送ったものを売りさばいてもらっているんですよ。世間は彼が作っていると思っているはずですが」


「そもそも噂レベルなんで聞かないですよ」


 それはまた、と彼は顔をしかめる。


「彼は慎重を期するタイプでしたが…… ここまでとはね。まあ見当がつきますが」

「どんな風に売ってんでしょうね」


「ふらっと立ち寄ったふうを装って運営のオークションに出すんですよ。一瞬で売れるので誰が出したか匿名じゃなくても分かりにくいですし、そもそも人間が運営するわけじゃありませんから顔も確認されないんです。他の場合はちょっと、彼を殴りに行かないといけないんですが」


 まあ、他というのは身内だけで消費、もしくは独占ってところだろうか。


「じゃあ匿名で商売がしたいときはオークションハウスに出せばいいんですかね?」


「毎回のようにあの場所に出入りしていたらそのうち特定されますよ。立ち入り禁止ゾーンを設定してそこでログアウトするようになれば話は違いますが…… メニューからもいちおうできないわけじゃないので、それで正解でしょうね」


 メニューからのオークションはかなり制限があるらしい。買い取るに不便はないが、売るのにはあまりよくない、と言うので実際に見てみた。


 値段の設定、あとは何割を手間賃として渡すかということくらいしか書かれていない。


「落札者が分からないのでね。毎回同じ人が出張って取っている場合も分からないんですよ。もともと頒布しようと思って作ったわけではありませんが、独占されるのもね」


「すいません、本題ってなんすか」


 あ、しまったと硬度7.8さんは頭を抱えた。


「すいません、学者タイプだとは言われるんですが脱線型で。これです、これ」

「水薬ですか」


 見たところ適当にビンに入れた青い水だ。水を見た…… ダジャレみたいだ。


「MPを一瞬で三割回復する薬です」

「そ」


 そんなものがもうできていたんですか。


 と俺は言おうとしたのだが顎が外れたような気がする。


「少なくとも今の「消費MP高いスキルはゴミ」という風潮を完全に打破できるだろうと私は思っています。つまり魔眼系スキルやかずかずの魔法スキルが日の目を見るときが来るのです…… が」


 問題でもあるんですかというと大ありも大あり、最大級にありますとノられてしまった。


「スキルをいくつも高水準で習得しないとレシピの条件を満たせず、作成できないのです。固体を操る魔法と錬金スキルの複合で「丸薬」つまり錠剤ができ、錬金の派生機能をいくつも使ってようやく液体の薬を作り出すことに成功したんですよ。他の皆さんに今から修業していただいたのでは一般へ送り出すことがかなり難しくなってしまうのです」


「送り出せないわけがあるんですか?」


「いえ、そうではないんですが…… 波風を立てすぎる存在がいくつも出たところでついでにもっと大きな波風を、となるとそこで一気に変わるのでいいんですよ。ところがそれらを小出しにすると皆さんが困惑してしまう。いちおうP.K.Cにこの件を問い合わせてみて、それじゃあ賞品にしましょうかと言われてビンを五つほど作ったところなんですね」


 あいつらに連絡したんですか、というとタイヨウ君に取り次いでもらいましたとそっぽを向いて言った。誰かJ以外の知り合いでもいるのかもしれない。


「この大会はゲームを大きく変えるチャンスです。まずは私がパフォーマンスとして使うのです。わざとMPを出し切った後にこれを使用し、大会運営スタッフに賞品はこれですと言わせる。すでに作れる人物がいることを表明しなくてはなりません」


 渦中の人物に自らなるのか。


「あなただって同じでしょう? 一つのビルドを完成させた。だが錬成スキルも修行は大変じゃないですか。上がる速度自体は遅くないものの、食らいついていかないといっこうにレシピは増えない。スキルの複合効果でこそ希望はあるが単体で運用するのはほとんど無理だ。あなたのビルドだって改造人間まがいの反応スピードがないと扱いきれたものじゃあない」


「そうっすね…… いい意味で諦めないといけないんで」


 できないことはできないのだ。


 状態異常を与える魔法だからだいたい禍々しい。


 あくまでサブウェポンなのでメインほどエフェクトに力が入っていない。


 なんて、そんなこと言っても仕方なかった。ないものはないから諦めたほうがいい。派手な戦いなんて真っ先に諦めたものだし、ミサの剣のように美しい装備も鍛冶スキルで作れることには作れるが装備はできない。鎧を作っても上げたステータスの都合で装備できないことの方が多いのだ。


 というマイナス面をなぎ倒して余りあるものが、いくらでもある。


 作って装備できないものは売れる。材料費より鑑定価格の方が高いに決まっているし、目利きを気取る連中が値段を勝手に吊り上げてくれた。


 戦いも地味だからこそ周りのモンスターを引き寄せにくい。風切り音以外はほとんど目に見えるエフェクトだけで、効果音が少ないためだ。


「硬度7.8さんは…… 戦うんですか」

「戦いますよ、もちろん。相手が何であろうが目的のためにはなぎ倒します」


 みんな覚悟を決めている。


「……俺も、覚悟しないとダメですかね」


「そうですね。小学生が中学生になり、中学生が高校生になるようなものですよ。なる瞬間はすごく緊張するしもうダメかなと思うけれど、大学生が社会人になるときでさえ、その瞬間に失敗しても何も終わることはないんです」


 そうですか、と薬瓶を眺めながら言うと、そうです、と彼は同じ方を向いて言った。


「エスカレーター式で高校から大学に入りましてね。なんだこんなものかと思った。それじゃあ大学から社会に出るときはいったいどんなものなのかってね…… アルバイトをしてみたんですよ。近くの飲食チェーン店でしたよ、急募アルバイト、だったものですぐに雇っていただけることになりました。ところが初日に調理中のフライパンに、お客さんにお持ちする水をぶっかけてしまった」


 うげえとは思うが、ありそうだ。


「お客様も激怒してコックさんに即刻くびを言い渡されるかと思ってくびを縮めたんですが、肩をぽんとやって「初日だものな」って言われました。フライパンはいちから加熱し直しでガラスの破片が入っているし、もう一回水を汲み直さないといけないと言うのに」


 はあ、というと、まあ私の体験談ですからね、と諦めたように言った。


「案外重く考える必要はないものなんですよ。ところでログアウトする時間じゃありませんか、学生はそろそろいけないでしょう」


「あ、わざわざすいません」


 大学生って言ってませんでしたか、というといえ私もログアウトするんですよ、と言われてしまう。それもまあそうだった。


「明日は戦いの日ですよ。良く寝ておかないと」

「あ、はい。硬度7.8さんもやっぱり出るんですね」


「何度も言ってるじゃないですか。一回戦は誰か知りませんが」

「お互い、頑張りましょう」


 負かす気でやりますよ、と獰猛な微笑みを見て、俺はログアウトした。

 外国語を書くときはスペルがあっているかどうかかなり気になるほうですが、唯一ソーサラーという単語はそれなりに書いてきたので心配しなくてもよさそうですね。


 新作出すとか言ったけど無理そうです。そもそも余裕なかったです。


 この間でかけたときに「そういえばもう18になったんだった」と思って成人向けのゲームコーナーに入ってみたんですが、好みのやつがありませんでした。ついでに言うとお金もないっていう厳しい状況。


 現実って厳しいな、と思いました。

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