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3 いやそれって本当に図書館?

授業も終わって放課後になり、さっさと帰ろうとした。宿題は今日はない。クラブ活動はもともとやっていない。とっても普通で静かな一日の終わり方なのに、なぜか一瞬寒気を覚える。

「なぁ、タツ、なんかお前のこと、あいつがじっと見てるんだけど」

吉川がそういって俺の背後に指を刺す。振り向かなくたってわかる。ああ、そうだそういえば・・・。


―図書館の仕事と違う気がするんですがー


俺は図書委員にさせられるなんておもってもいなかったし、そもそもなる気がなかったので図書館から抜けた後の昼休みはクラスで昼寝していた。まぁ、今更図書委員になるなんてばかばかしい。っていうかどうかんがえたって俺のキャラじゃない。

しかしなんでこう、昼寝しているヒトを神様は起こしたがるのか。肩をたたかれると同時に起きろと一言。

「!・・・なんですか木田先生。俺何もやってませんぜ・・・。」

眼鏡の奥から見える目は・・・いや、かなり普通です。普通すぎて描写がめんどくさいです。スーツは着ています。灰色のスーツは着ています。

昔こそは先生の厄介になっていたが、今じゃすっかり冷めちまって面倒ごとは起こしていなかった。とはいったって未だに先生から声をかけられるのはなれない。たいていろくなことにならないってのは誰だって知ってるだろう。

「・・・お前正気か、図書委員になりたいだなんて。」

「・・・は?」

さっき図書館での出来事を思い出す。あの時はいって本によだれたらしたから本棚とか本とかに死刑執行されそうになったけど下僕で許すとかっていわれたあの出来事。うわー夢みてぇ。

「いや、現在図書委員のトップにいる白城美咲が直々に、おまえが図書委員になりたくてなりたくて仕方がないといってるんだ。いやまぁ、別にそれが本当なら構いはしないが・・・」

「・・・俺のキャラじゃないって?でしょうねぇ。正直俺だってやりたく・・・てやりたくて仕方がないこの気持ちどう表現するべきか迷ったあげくストレートにあの方に」

さっさと断っちまおうかと思ったがその時一瞬赤い光がクラスの端の扉から見えた。幻覚と決め付けたらたぶんその幻覚にやられる。ほんのすこし口もみえたがあきらかに笑っていた。

「・・・そうか・・・まぁいい。ならまず今日が当番だから放課後行くように。」

さきほどほんの少し開いていた扉は今はしまっており、そこにやつがいたことを証明できるようなものはない。


・・・これがあの後起きたことで、今から図書館に行くわけなのですが・・・。

「図書委員?お前が?」

「・・・ああ・・・」

「合わねー」

「るせぇ」


図書館に向かうか、と思って振り向くが、しかしもうそこに白城はいなかった。

「しっかし、あいつ綺麗だよなぁ。」

「ん?誰が?」

「ほらさっきお前を見つめてたやつ。確かあいつが図書委員の一人だろ、いつも図書館にいるし。あ、お前まさかそれ狙って?」

見つめてたなどというかわいらしい表現を使う吉川を訂正したかった。あいつは見つめていない。あの目は言っていた。来なきゃあの手で『グシャ』するってことを。ああ、こいつにも気づかせてやりたい、あいつの恐怖を。でも公言しないといった手前だし、言ったって信じてくれないだろうから信じさせるのもめんどくさい。

吉川の冗談はほおっておくことにしてかばんを持って図書館に向かった。本日は晴天気温22℃。クラブ活動にはちょうどいい。放課後、おのおのの準備などでまだまだ活気のある学校内の中、俺は図書館に向かった。二階の吹き抜けどおりをもう少し先に進んでようやく図書館の入り口に入るのだが、なぜか図書館の方向に向かうごとに人が少なくなる。気のせいなんだろうか・・・。

「遅い。1600時に来いといったはずだが?」

自動ドアをくぐってまもなく白城は横から話してきた。こういう風に話してくるやつは、現実じゃめったにいないというか、狙わないとこんな状況は出来ないのである。

「なんだよ、今三時四十分じゃねぇかよ、四時ですらねぇだろ。」

「長官の命令で時間が言われているなら、三十分前に来るのが心得というものだ。」

「・・・んだこら調子に乗りやがって。ごめんなさい。」

目は光らせないで。その怖いオーラ出さないで。今なんか変な物体が見えた。目と耳が合体したような変な物体が見えた。

「さて、仕事といきたいところだが、まぁ見ての通り図書館はいつも静かだ。」

あらためて俺は図書館を見渡す。窓からの光。適度に調整された部屋の温度。椅子の配置。満点が付きそうな完璧さだ。日差しは今机の上をてらしており、人が座るところには一切の日差しがかかっていない。本を読むやつにとってはうってつけの時間だろう。長時間椅子に座っていても日差しが照りつけるようなことはないから、疲れなくてすむかもしれない。まぁ、俺にとっちゃどんだけ居心地がよくたって本を読みはしないんだけど。

「そこでだ、まずは作戦会議を開く必要がある。」

「作戦会議?」

「ここだけの話し、この図書館、実は利用している人が少ない。」

それは初めて入ったときから気づいていましたから。

「原因は何なのか、これだけ静かに快適に本を読める場所を提供しているにもかかわらず、誰一人としてこないのはおかしいではないか!例えるならばケーキを野原の上においているにもかかわらず蟻がよってこないくらいの不可思議さだ。」

不可思議って、お前のあの変な能力が不可思議だもん。

「それってさ、お前のあの能力のせいじゃないの?いつも無駄におどしてるとか」

「ん?これか?」

いや、ごめん目は光らせないで。目とか口とか髑髏とか出さないで。

「Stop,Stop,Stop。たのむ、やめてくれ」

「実はこの能力、この学校でしっているのはお前を含めて三人だけだ。」

「・・・あれ、わりといるんだな。」

あのやばい能力、俺はともかくあと二人他に知っているやつがいるならすぐに噂になりそうなもんだが・・・。

「私とお前を含めて三人だ。」

・・・ややこしい。

「じゃもう一人は・・・。」

「今は関係がない。まぁいずれわかる。それよりもこの状況どうしたらいいとおもう?」

「この状況・・・」

擬音があるなら間違いなくシーンという音が、コマ一つ分を埋めているであろうこの図書館。聞こえる音は蛍光灯の音と秒針の動き。・・・いやだなやっぱこういう空間。

「俺はそもそも図書館って言うか、こういう静かな場所が嫌いなんだよ。」

「ほう?」

「空気が、こう、何もないくせに緊迫してるっていうか、誰もいないのにへんに神経とがらせなきゃいけないもんだからよ。」

「ふむ・・・。」

「・・・ここを利用する奴は少ないっていうけど、本借りる奴はいねぇのか?」

いないはずはねぇんだ。しばしばレポートなどを書く必要がある際に図書館の資料は結構役に立つ。俺も宿題をするさいに友達と一緒に来たが、すぐにこれという本が見つけられたのを覚えている。

「それは当然いる。だが私が納得いかないのは、なぜこの図書館には人がひしめき合うほどの読者であふれないのかということなのだ。それこそ椅子がたりなくてしかたがないから立ち読みをする人とか図書館に入れないから列を作って待つとかそういうのが足りないのだ。行列を呼んでいないのだこの図書館は」

足りなくていいだろそれは。なんだよ行列を呼ぶ図書館って。

「それ図書館として間違ってないか?」

「そこで、ここは私のような白城流図書管理術を持たぬ、凡人蚤虫の意見をきいてみようとおもったのだ。」

「おまえ見下す言葉の語彙、物凄く富んでるよな」

「はっは、上官を褒めるとはかわいいやつめ」

こいつの世界が掴めねぇよ!



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