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その【聖女】転生者につき。  作者: お餅憑き
六章:

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77/131

頁:42 その【半魔】確信犯につき。◆挿絵有り

※注意喚起

一部濃厚接触に見える部分がございますが、あくまで医療行為です。(※本人談)

苦手な方はブラウザバックをして頂けますと幸いです。



早朝の爽やかな空気を纏い、眩しい陽光が窓から射し込む清々しい時間帯――

ニヴェイシア邸の静寂を破るように、勇者たちは広間に続々と集まっていた。


ノアとパルテオンの二人は椅子に腰を掛け、何気ない会話を交わす。

すぐ側にはルル、彼女の頭の上には――謎毛玉生物(キュー)が鎮座。


挨拶を交わし、もう一人の仲間である【聖女】の起床を待っていた。


「今日もよく眠れたね! ここのお屋敷のお布団さん……!

 とってもやわらかくって、寝心地が最高だよねっ!」


「アメトさん、最初見たときは怪しい人って思ってたけど――

 すっごく綺麗な身体(と筋肉)してるし! 優しいひとだよねっ!」


「ノア、違ェぞ……ありゃ俺たちを利用しようとしてる感じだ。

 流されちゃいけねぇ……というか……綺麗な、身体……??」


それとなく会話を交わし、ゆるりとした時間が過ぎていく。

しかし一向に聖女は姿を現さず『おや?』と三人が顔を見合わせた。


「セラ、起きてこないね……? おかしいよね、いつもなら――

 もう、とっくに起きてきてもおかしくない……よね……?」


生真面目な彼女のことだ――普段であれば確実に起きてきている時間帯。


「ちょっとセラの様子を見てくるねっ!」


と椅子から立ち上がったノアが、扉まで歩んでいた――そんな時だった。


開けようとしていた扉が開かれ、屋敷の主(アメトリクス)が広間に姿を現すが……。

その腕に抱かれているのは、今まさに議題に上がっていた聖女の姿――


「ヤッホー。 皆サマお揃いでー。 急にゴメンネ?

 気持ちの良い朝だネー? オッハヨー、勇者サマ方ー」


軽薄な声色とともに扉が開かれ、颯爽と広間に入室した彼。

『何事か?』と一同が目を見開き、腕に抱かれている聖女へ視線を向ける。


「え……??な…… ど、どゆこと?」


なぜか若干楽しそうなルルの声――彼女の瞳は興味の色に染まっていた。

一方で男性陣二人はというと、怪訝な目を屋敷の主(アメトリクス)へ向ける。


全員の視線は彼へと向かい、やがて視線は下に落とされるが――

聖女の顔色は妙に赤く、体調が悪いのか呼吸も荒く、体温が高そうな様子。


「アメトさん、とりあえずは……説明をしていただいても、かまいませんか?

 いったい、何が起こったのでしょうか……? まさかとは思いますが――」


ノアの声には心配や不安、若干の怒りにもにた感情が滲む。


「その『まさか』ってのがボクには『ナニ』かよく分からないネー。

 ま、とりあえずはボクが彼女に害をなしたとかではないヨ。」


「今日の陽も上がってない深夜に、ボクの書斎にうっかり来てしまってネ。

 しばらくボクの仕事する姿を見てたんだケド――……」


「どうやら途中でそのまま寝ちゃったみたいでネ。

 ボクが気がついた時にはこのザマ。 正直ボクも驚いてるヨ。」


自身の腕に抱かれて眠るセラに、これでもかと顔を近づけるアメトリクス。

思わず赤面するノアに、なにか言いたげなパルテオン。


ルルだけは興味の色を隠せないのか『おおっ』と声を洩らす。


三者三様のリアクション――


「ウン……体温が高いから恐らくは軽い風邪の症状。 もしくは……。

 慣れない環境からの気疲れ……とかだろうネェー」


「ボクという存在がいるから、それが負担になったのかもしれないし。

 それじゃ、ボクは調剤してくるヨ。 後は勇者サマたちがおねがーい。」


聖女を腕に抱えたまま、広間の外へと歩み――ふと立ち止まるアメト。


「ほらほらー、彼女を寝室に運ぶから、キミたちもついてきてネ?」


彼はセラを抱きかかえたまま広間を抜け、彼女の借りている部屋へと向かう。

彼の後ろには、鴨の親子のように列をなし、付いて歩く勇者たちの三人。


彼女を部屋までつれ、寝台へと身体を横たえ、額に手を添える屋敷の主(アメトリクス)。

体温を確認した後にため息をひとつ零すと、胡散臭い微笑を浮かべ振り返る。


勇者たち三人に対し『任せたヨー』と伝えると――

彼の姿は黒紫の霧を残して一瞬で消え去ってしまった。


唐突に姿を消した屋敷の主(アメトリクス)に、ぎょっとする三人。


しかしルルがそれどころではないとセラに駆け寄り、顔を寄せた。

「ほんまに風邪か?」とセラの顔を不安そうに覗き込む。


が――そんな彼女をよそに、どこかよそよそしい男ども。


「お……俺はちょいッ!! セラの身体に触れるのは気が引けるッ!!

 かわりにルルが体温を確認してやってくれッ……!」


「僕もセラに触るのは、ちょっと……ね? 風邪が怖いんじゃないよっ!?」


頼りない男どもにジト目を流し、セラの額に手を当てて体温を確認。

次に首すじに指を当て、鼓動の早さを確かめるルル。


「鼓動が早いし体温も高い……疲れ熱――もしくは風邪……。」


「熱が出るときってよー……他にも魔力に当てられた時とか――

 たまーに体温が上がったりするんじゃけど、症状が違うけぇね。

 ――うん。 子爵ちゃんの読み通り、風邪で間違いないと思う。」


「なら、僕たちのできることをしようっ! 看病するしかないねっ!」

 

ノアの言葉に二人は無言で頷き、聖女の看病のため、行動を開始。

パルテオンが使用人から水桶とタオルをもらい、ノアは応援係――


彼の用意した水桶に魔法で作り上げた水を溜め込むルル。

水の温度を調節し、ノアがタオルを濡らしてセラの額へ。


心配だったが、彼らにそれ以上出来ることはなかった。


「こゆときってさ、首とか脇辺りを冷ましてあげたらええんよ。

 でもなー……ノアちゃんとパルちゃんがおる手前なぁー……。」


「セラちゃんの柔肌を男ども二人の前で晒すわけにもなー……。

 でもセラちゃん苦しそうじゃしー……?あたし一人じゃーなー……。」


「うひっ……セラちゃんを脱がせんし……どうしたもんじゃろうかー?

 うへっへ……。 しゃーねぇー……よなぁー?? うひっひ……。」


「おいルル……なんでおめぇ……そんな嬉しそうなんだ……? 怖ェぞ?」


ルルの言葉にノアは何の想像をしたのだろうか。

彼は赤面してしまい、そっぽを向いてしまった。


結局のところ――三人に出来ることといえば、セラの看病のみ。

寝台に椅子を並べ、ぱっと見では怪しい儀式的な様子でセラを見守った。



どのくらい儀式的な様子で見守っていたか分からなかったが――

「コツコツ」と廊下から靴音が響き、次いで扉が打ち鳴らされた。


『入るヨー』と軽薄な声が届けられると、小瓶を片手に入室してきたアメト。


「はーい、ドーモ。 ニヴェイシア印の特性おくすりー。

 ボクが直々に作ってもってきてあげたヨー? ボクってば優しいネー。」


彼の片手には小瓶が数本ほど握られており、中には淡く濁った白色の液体。

ノアが訝しむ様子で『それは……?』と小瓶を見つめ、質問を投げた。


「……ハァ。 見て分からなぁい? 普通にお薬だケド。」


「お(・)く(・)す(・)り(・)。 効果は解熱と鎮痛で、あとはコレ飲ませたらいいヨ。

 身体の熱を外に逃がして、多少は苦しさも紛れるからサー?」


伝え終えた彼は面倒そうにノアへ薬瓶を投げ渡し、退室の構え。

薬瓶を受け取ったノアだっがた――なんとも言えない薬液の色……。


「なぁ……子爵ちゃん。 ちょっとええ? これ、ほんまにくすり?

 なーんか怪しい毒とかなんじゃないんね。 色もほら――」


「なんか……うん。 ちょいヤバい色しとらん?」


大きなため息をひとつ吐き出し、大股で部屋の扉付近まで歩むアメト。

壁に掛けられてあったベルを鳴らし、程なくして女中(メイド)が到着。


無表情一辺倒の女中(メイド)に対し、何やら説明をするアメト。


「――ってワケだから、試飲をお願いネ、アイリス。」


主人に促され、表情を変えることなく淡々と薬瓶の一つを受け取った。

女中(メイド)は躊躇うことなく一気に薬瓶を空にし、小さなため息を零し――


「たまに口にさせていただくお薬にございます。 いつもと同じ味……。

 とてつもなく、とんでもなく苦いだけのお薬にございます。」


「毒ではありませんし、仮に毒であれば、今頃私はここにいません。

 死んでますので。 では、失礼させていただきます。」


なかなかにキツめの物言い――女中(メイド)は一礼した後、颯爽と部屋から去った。


「わ……わざわざありがとうございます、アメトさん。 ルルもごめんね?

 僕が言い出しにくそうにしてたから、代わりに言ってくれたんだよね?」


「ほら、セラ! アメトさんが調合したお薬を持ってきてくれたよっ!」


セラの肩を抱き起こし、彼女の唇に瓶の飲み口を押し当てるが――

が、彼女は飲み込む気配はなく、ノアの腕の中で小さく唸った。


拒絶の意を示し、手で瓶を払いのけ『うぅ……。』と苦しそうな声を洩らす。

固く閉ざされた瞳と唇からは、あまりにも嫌悪が顕になっていた。


「ええ……ちょ……。 これ、どうしたらいいのぉ……?」


片腕にはセラ――片手には薬の小瓶。

狼狽えるノアの瞳には焦燥が滲み、あちこちに視線を移す彼。


「んなのサァ~~……。 普通に口移しであげたら、よくなぁい?

 一番手っ取り早いし、一番効率的……デショー?」


アメトリクスが何気なく放った爆弾のような言葉――

部屋の空気は一瞬で氷点下まで急転直下。


『だ、誰がするんそれ!?』と目を剥いたルルが辺りをキョロキョロ。

――が『苦ぇんだよなっ?あたしは一抜け!』と、あっさり拒絶。


セラから視線を逸らしたルルは、ぎろりとノアへ視線を注いだが……。


「えっ!? 僕!? む、無理だよっ! 無理だからっ!」


と顔を真っ赤にさせて拒否――パルテオンに至っては、だ。

彼は無言で首を横に振り、腕で必死に『バツ印』を作り、完全拒否。


かくして――全員に拒まれることとなった、悲しき聖女のセラフィーナ。


ノアの腕からも離され、寝台の上で苦しそうな呼吸を繰り返す聖女(セラ)。


あまりにも頼りない勇者たちの様子にしびれを切らした屋敷の主(アメトリクス)。


彼は幾度目かのため息を吐き出すと、小瓶を一つ手に取り――

とろりと揺れる液体を自身の口へ流し込み、口に含んだ。


ゆっくりとセラが横たえる寝台へ歩み、銀白金(アルゲント・アルビナ)の髪を流し彼女の側へ。

顔を寄せ彼女の口を開き、なんの迷いも躊躇いもなく、真っ直ぐに唇を重ねた。


瞳をうっすらと閉じ、彼女の様子を確認しながら薬液を注ぎ込む彼。


唐突の事態に固まる一同だったが、やがて事の重大さに気が付き顔色が変化。


渦中の聖女は熱に浮かされているのか、抵抗する様子はない。

「こくり、こくり」と――薬液が緩やかに喉を通り抜け、喉を鳴らすだけ。


アメトリクス……この男はわざとらしく時間をかけ、ねっとりと、丁寧に――

口に含んだ薬液を作為的なほど、じわじわと流し込んでいた……確信犯である。


冷たい薬液が彼(アメト)の体温をわずかに帯び――唾液が溶け合った薬(ソレ)。

彼女の喉が動きを見せ、薬液が流されているが……皆はそれどころではない。


「ちょ、ちょちょっ……!!うっそでしょぉ……!? なっ……!!

 ええ……っ……!!! そ、そんなぁぁぁ……めのまえでっ……!?」


顔を手で覆ってはいるが、指の隙間からその光景をまじまじと見つめるノア。

パルテオンは顔を伏せ、バツの悪そうな顔で二人から視線を逸らしていた。


「まじかよ!超苦えー薬なんじゃろ!? ためらいがねぇ! すげぇ!

 さすがじゃ! あたし……あたし、感動してしもうた……!」


別方向に心を動かされているルル……違う、そうじゃない。


全員の視線を知ってか知らずか……否。完全に認知していたアメトリクス。


彼は唇を離す直前、あまりに白々しく、名残惜しげに――

舌先を彼女の唇に這わせ、胡散臭い微笑を彼女に向けていた。


挿絵(By みてみん)


薬液を一滴残らず逃さぬように送り込まれ、セラは身じろぎをひとつ。


「んぅっ……んっ――」


顔を紅潮させて小さく喘ぐように喉を震わせ、嫌がるように手を動かすセラ。

恐らくは相当薬が苦かったのだろうが……火に油を注ぐような行動だった。


あまりにも平然とした様子で彼女から離れ、何事もなかったように口を拭う彼。


「ッハァ~~~~……。 ったくもー……。 キミたちがヤんないからサ。

 ボクが代わりをつとめてあげたヨー? ハイ、コレでいいデショ?」


両手で顔を覆い隠し、耳まで赤く染め上げたノアは謝罪の言葉を繰り返す。

パルテオンは無言だったが……ルルは相変わらずだった。


「いや……だってあたし、苦いのはちょい。」


とあっけらかんと言いのけ、罪悪感の『ざ』の字すら感じられない。


「まったくもー……。 世話が焼ける勇者一行だコト。 大切なお仲間デショ?

 次からはちゃぁんと、キミたちが『口移し』ヤってあげるんだヨー?」


彼はそれだけ伝えると、踵を返し――涼しい顔でその場からいなくなった。


後に残された面々は、先ほどの濃厚がすぎる『口移し』の光景――

目に焼き付いてしまって離れず、しばらく脳裏に留まる結果となった。


未だに熱に浮かされて目を覚まさないセラ。


彼女に先ほどの出来事を伝えるべきか否か……。

一同は頭を抱え静かに――だが確かに、悩みの種となってしまったのだった。





8/15 大幅加筆修正。主にPCブラウザで見やすいよう、調整致しました。

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